ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり

2020-01-18 23:42:52 | あ行

「博士と彼女のセオリー」(15年)コンビが再タッグ!

 

「イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり」70点★★★★

 

********************************

 

1862年、イギリス。

当時、各国は気球での高度到達記録を争っていた。

 

その日、気球操縦士のアメリア(フェリシティ・ジョーンズ)は

「フランスの7000メートルの記録を超えましょう!」と

派手なアクションで、集まった観客を沸かし、

気球で大空へと飛び立つ。

 

そして、その隣には、迷惑そうな顔をした

気象学者ジェームズ(エディ・レッドメイン)が乗っていた・・・・・・。

 

ジェームズは気象研究のため、気球に乗りたいと

冒険を目的とするアメリアと一緒に乗り込んでいたのだ。

 

だが、初っぱなから二人の息は合わず、

さらにトラブルが起き――?!

 

********************************

 

フェリシティ・ジョーンズ×エディ・レッドメインのコンビが再タッグ。

実話をもとにしているそうなんですが

「あり得ない!」というほどのアドベンチャーにかなりビビります(笑)

 

さしたる防寒装備もなく、いわば布切れ一枚で

高度1万2000メートル、エベレスト山頂より高い

成層圏まで到達?! ってレベルまでいっちゃうんですから

もう、時間が永遠に感じるったらない。

 

しかもほぼすべてが、四畳半くらいのゴンドラ内での二人芝居。

さすがにそれだけではもたないので、

過去シーンをはさんで、物語は進んでいく、と。

 

正直なところ、この二人じゃなかったら

ちょっともたなかったな、と思うのですが

ここは、この相性の良いコンビを観る楽しみに、★ひとつですね。

 

神経質で気弱な気象学者ジェームズ(エディ・レッドメイン)と

豪傑、といってもいいほどの冒険女子アメリア(フェリシティ・ジョーンズ)。

 

何につけても心配性なレッドメインに

終始「ああ!もうイライラするわね!」って感じのフェリシティが

なんともおかしかった。

ちょっとシンジとアスカのコンビみたいか?(byエヴァ。笑)

 

そして

この二人の相性がいいのは、顔の相がよく似ているからなんだ、と改めて感じた。

どちらも整ってるけど、中性的というか、

少年性を持っているというのかしらん。

 

そこに性差を超越したような「同志愛」を感じるから

コンビの共闘がうまく成り立つんではないか。

そんな推察に至った次第です。

 

★1/17(金)から全国で公開。

「イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり」公式サイト

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ジョジョ・ラビット

2020-01-15 23:47:54 | さ行

つい昨日発表された

2020年アカデミー賞作品賞ノミネート作!

 

「ジョジョ・ラビット」71点★★★★

 

**********************************

 

第二次世界大戦下のドイツ。

10歳のジョジョ(ローマン・グリフィン・デイビス)は

アドルフ・ヒトラー(タイカ・ワイティティ)を空想上の友達にし、

ナチスに傾倒する少年。

 

が、青少年集団ヒトラーユーゲントの合宿に参加したジョジョは

「このウサギを殺せ!」という先輩の命令を聞けず

弱虫=「ジョジョ・ラビット」というあだ名をつけられ、

さらに、大けがを負ってしまう。

 

帰ってきたジョジョを

勇敢で美しい母ロージー(スカーレット・ヨハンソン)は

やさしく迎えてくれた。

 

しかし、ジョジョは、

自宅の屋根裏部屋に、ある秘密を見つけてしまい――?!

 

**********************************

 

想像より小粒ではあったけれど、なかなかに魅せる作品でした。

 

ナチスに傾倒する少年と、

その屋根裏部屋に

こっそりかくまわれていたユダヤ人少女の邂逅。

 

定番かつシリアスな題材を、

ひょうひょうとしたコミカルと明るいユーモアで生き生きと描き、

セリフのセンスもよく

 

ユーモアや画の風合いに

ちょっとウェス・アンダーソンに通じる感じもありました。

 

ヒトラーを想像の友だちにする主人公ジョジョ少年の

ちょっとズレていて、とぼけたキャラがよく、

 

そんなジョジョに見つかってしまう屋根裏のユダヤ少女も

決してか弱い存在ではなく、

「通報すれば? あんたもお母さんも死刑よ」と

堂々とジョジョを脅す、いいキャラ(笑)。

 

そんな少女とだんだん心を通わせるジョジョが

少女のために、手紙のねつ造するくだりも

姑息で実にかわいらしかった(笑)。

 

それに

スカーレット・ヨハンソンが演じる

ジョジョの母親が、とても魅力的なんですね。

快活で、「正しい行いとは何か?」を自分で判断できる、凜とした女性。

「マリッジ・ストーリー」といい、

最近のスカヨハ、等身大のママ役がいい感じです。

 

監督で、ヒトラー役を演じるタイカ・ワイティティは

マオリ系ユダヤ人で

祖父が第二次世界大戦中、ナチスと戦った歴史があるそう。

 

悲劇を直接に見せず、笑いでくるみ、

次をになう若い世代にも、

大事なことを伝えようとしてるんだと思います。

 

★1/17(金)から全国で公開。

「ジョジョ・ラビット」公式サイト

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

リチャード・ジュエル

2020-01-13 00:57:58 | ら行

クリント・イーストウッド監督は、まだまだ走る!

 

「リチャード・ジュエル」71点★★★★

 

********************************

 

1996年。オリンピック開催に沸く米・アトランタ。

 

リチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)は

警官になることを目指してきた純真な若者。

 

だが、強すぎる正義感はしばしば周囲との軋轢も起こし、

いまはオリンピックの野外フェス会場の警備員として働いていた。

 

その夜、リチャードは会場で

怪しいリュックサックを見つける。

 

「爆発物かもしれない!」と率先して市民を避難させた彼は

結果的に多くの人々の命を救い

リチャードはヒーローとして人気者になる。

 

だが、そんな彼があろうことか

「容疑者」となってしまい――?!

 

********************************

 

クリント・イーストウッド監督が

1996年に起きたアトランタ爆破事件を描いた作品です。

 

「ハドソン川の奇跡」(16年)

など、割と最近ニュースになった実話を基にすることも多い監督。

 

今回は、1996年、アトランタ・オリンピックの最中に起きた

爆発テロ事件が題材に。

 

テロを最小限に食い止め、一躍ヒーローとなった純真な青年が

一転、犯人扱いされ

実はいまもその汚名が完全に注げていない・・・・・・という事実を知り

「真実を伝えなければ!」と筆を、いやカメラを取ったそうです。

 

 

イーストウッド監督にしては

若干、光りきれていないところも残している感じなんですが

実際の出来事が教える教訓を、とにかく「誠実」に伝えていて

いま、大事な作品だと思いました。

 

というのは

純真で正義感の強いリチャードが、犯人にされていく様が

あまりに昨今の風潮、たとえばSNSでの炎上にそっくりで

 

誰かを「血祭り」にし、生贄にしようとするメディアや大衆の恐ろしさが

20年以上たった現在、より加速している!ってことを

いやでも感じずにいられないから。

 

無理やり犯罪のストーリーを考え、リチャードをハメようとするFBIにイラだちつつ、

同時に、正義感や忠誠心が裏目に出そうな

リチャードの言動や行動にもハラハラ。

 

そんな彼を助けることになる弁護士ワトソン役の

サム・ロックウェルが実によい!

そう、「スリー・ビルボード」(18年)のあのいや~な巡査役で

アカデミー助演男優賞を獲ったあの人です。いや~ナイス。

いい人か悪い人かわかりにくい「あや(綾)」の加減といい

ちょっとスティーヴ・カレルを思わせるよね。

 

さらにリチャードの母役

キャシー・ベイツもさすがの存在感。

 

と、脇を固めるキャストも手堅く

リチャードの運命はいかに?!と魅せるんですが

 

色気を武器にネタをとる女性記者など

もうひと押し、ふた押し、書き込んでほしいキャラやエピソードがあったかな、と。

 

でも、なによりこの作品は

リチャード・ジュエル本人に、捧げられるべきもので

その意義は十二分に果たしてはいるなあと。

 

89歳のレジェンド、

まだまだ走り続けてほしい!

 

★1/17(金)から全国で公開。

「リチャード・ジュエル」公式サイト

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ダウントン・アビー

2020-01-12 01:48:07 | た行

ドラマは未見ですが

なるほど、人気の理由がわかった気がする。

 

「ダウントン・アビー」69点★★★★

 

************************************

 

20世紀初頭、イングランド北東部、

自然豊かなヨークシャーにある

壮麗な大邸宅「ダウントン・アビー」。

 

先代の伯爵未亡人(マギー・スミス)と

その孫であるメアリー(ミシェル・ドッカリー)を中心にした屋敷では

大勢の使用人たちが働いている。

 

そんなある日、イギリス国王夫妻が

ダウントン・アビーに一泊の滞在をすることになる。

 

メアリーたちも、使用人たちも

めったにない名誉にてんやわんやとなるがー―?

 

************************************

 

2010年にスタートし、2015年まで

世界200以上の国と地域で大ヒットしたテレビシリーズが

シリーズ終了後から数年後、の続きのスタイルで映画化されたもの。

 

ワシ、ドラマは未見。

人物関係がわかりにくい部分は少しありましたが

2時間見てれば、ほぼわかったので

ダウントンアビー初体験者にも、おすすめです。

 

地方貴族の屋敷「ダウントン・アビー」に、

イギリス国王夫妻が滞在することになる。

なんと名誉なことよと、当主たちも召使いたちも浮き足立つけれど

準備はまあてんやわんや。

 

その大混乱のなか

直前に王室付きの執事や召使いたちがやってきて

「私たちがやるので、あなたたちは下がってるように」と

ダウントン・アビーの使用人たちは仕事を奪われてしまう。

 

「そんなわけにいくかい!」という彼らと

王室側の使用人たちのプライドをかけた剣突。

 

さらに、当主側にも

相続問題などさまざまな火種が――?!

 

・・・・・って

まあ正直、平民にはどうでもいいわい!って話なのですが(笑)

 

展開もよくできているし

 

贅沢三昧で自由そうで

実はいろいろ不自由な貴族の暮らしを

「ま~、あそこもいろいろ大変そうよねえ」って

お茶をすすりながら、楽しむ。

そこに圧倒的な魅力がある最強コンテンツなんだなと

改めて感じ入った次第です。

 

それに、ダウントンの当主一家には

けっこう若くして亡くなってる人がいたり、いろいろあったんだなあと

この映画を観るだけで、

テレビシリーズに興味もわきました。

 

なにより一番に感じたのは

ロイヤルファミリーの来訪にも耐える屋敷と調度を

「整える」当主や使用人の姿勢。

 

多大な苦労を伴いながらそれをする彼らのプライドに

「美」をみました。

 

★1/10(金)から全国で公開。

「ダウントン・アビー」公式サイト

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

フィッシャーマンズ・ソング

2020-01-11 23:48:12 | は行

Pコートにフィッシャーマンズセーターに

ジーンズがカワイイ!(観るとこ、ちがーうだろ!

 

「フィッシャーマンズ・ソング」70点★★★★

 

*******************************

 

イギリス南西部コーンウォール地方にある

小さな港町に

音楽業界でヒットを飛ばすプロデューサーのダニー(ダニエル・メイズ)が

友人の結婚式のためにやってくる。

 

ダニーは友人たちと

港で漁師たちの舟歌を披露するバンドの歌を聴く。

友人たちは

「これは、売れる!ダニー、契約を取ってこい!」と

ダニーをけしかける。

 

実は友人たちの悪ふざけだったのだが

そんなことは知らず、

少なからず漁師たちの歌に心を動かされたダニーは

漁師たちにレコーディングを持ちかける。

 

しかし、無骨な漁師たちに鼻であしらわれ――?!

 

*******************************

 

 

イギリスの田舎の小さな港町コーンウォールで

舟歌を歌っていた漁師たち。

 

彼らが、まさかのメジャーデビュー?! で、大ヒット?!という

ミラクルなストーリー。

実話が基だというから、なかなかすごい話です。

 

港町の風景も、おっさんたちの濃いキャラもいいんですが

音楽映画の割には、意外に「うわー!」っという高揚感がないのと

彼らをメジャーに押し上げる都会のレコード会社のプロデューサーである主人公が

もうひとつパッとしないのが残念(笑)。

 

コーンウォールというご当地色も満載で

言ってみれば「翔んで埼玉」的なのかもしれないのですが(笑)

異国人にわかりにくいところもあるんですよね。

 

最初に漁師たちが

「田舎の労働者の歌なんて、お金を出して誰が買うんだ?」と言うとおり、

彼らの歌が「ガツーン!」なヒットとなった流れを

もっと、映画的に盛り上げることはできたんじゃないかな~とは思う。

 

ただ、それでも

反骨精神に溢れ、一筋縄ではいかない漁師たちが

引き起こすさまざまなトラブルと、

それを操縦しかねる主人公のドタバタは観ていておもしろく

 

なにより

おっさんたちのフィッシャーマンズセーターにジーンズ、

Pコートの定番コーデに、ごっつ魅了されました。

ええ、この冬はPコートにジーンズで、過ごしてます。

 

★1/10(金)から新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。

「フィッシャーマンズ・ソング」公式サイト

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする