「FLESH&BLOOD」の二次小説です。
作者様・出版社様は一切関係ありません。
海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。
二次創作・BLが嫌いな方はご注意ください。
何処かでフクロウの鳴き声がした。
川沿いの道を馬で走りながら、海斗はこのまま夜の闇を自分で包んでくれれば良いのに思っていた。
森の中に入った海斗は、暫く歩くとこぢんまりとした小屋を見つけた。
「すいません、誰か居ませんか?」
そう言いながら小屋の中へと入った海斗は、ここでつい先程まで人が住んでいた気配を感じた。
台所には、湯気が立ったスープだった。
それを一口飲んだ後、海斗はそのまま泥のように眠った。
「あの子が消えたですって!?それは本当なの!?」
「はい・・」
「まだ遠くには行っていないわ、捜し出して殺しなさい!」
「は、はい・・」
(まったく、あの娘には苛々させられるわね!)
女はゴブレットを乱暴にテーブルの上に置いた後、深い溜息を吐いた。
「奥様、お呼びですか?」
「リリア、例の物は完成したの?」
「はい。」
「そう、ご苦労様。」
侍女に労いの言葉を掛けた女は、そのまま寝室へと入っていった。
朝が来たら、娘を殺そう―女はそう思いながら眠った。
「おい、起きろ。」
「ん・・」
誰かに揺り起こされ、海斗が静かに目を開けると、自分の前には険しい顔をしている男の姿があった。
「貴様、俺の家で何をしている?」
「ごめんなさい、少し訳有りで・・」
「そうか。」
男は、灰青色の瞳で、泥で汚れた海斗のドレスを見た。
「俺はナイジェル、この小屋に住む猟師だ。お前、名は?」
「カイトです。あの、これ宿を貸して頂いたお礼にどうぞ。」
海斗はそう言うと、男に金貨を三枚、手渡した。
「カイト、その身なりからするとお前は何処かの貴族の娘のようだな?」
「はい、実は俺・・」
「声を出すな、誰かがこちらに近づいて来ている。」
「え?」
男―ナイジェルに口を塞がれ、海斗が小屋の窓から外を見ると、そこには継母の部下と思しき男達の姿があった。
「あいつらとは、知り合いか?」
「継母の部下です。彼女は、俺を殺そうとしているんです。」
男達が小屋から遠ざかった後、海斗はナイジェルにこの小屋まで来た経緯を話した。
父が死に、継母が財産目当てで自分を殺そうとしている事や、後見人であるエリザベス女王の元へ単身向かおうとしている事などを話した。
「そうか。ここで会ったのも何かの縁だ。俺がお前を陛下の元へと連れて行く。」
「いいんですか?」
「あぁ。俺は元々、根無し草だ。」
これが、ナイジェルと海斗の出会いだった。
「お前の背丈に合うかどうかわからないが、衣装箱からこんな服が出て来た。」
「ありがとう。」
ナイジェルから手渡された黒い天鵞絨の服には、美しい真珠の釦がついていた。
「この服は・・」
「俺がガキの頃、母が仕立屋で誂えてくれた服だ。」
「そんな大切な物、受け取れません。」
「俺はもう着られないから、お前に来て貰った方が天国の母も喜ぶだろう。」
「わかりました。」
汚れたドレスから黒い天鵞絨の服に着替えた海斗は、ナイジェルと共に森から出て、ロンドンへと向かった。
「これから、どうする?」
「継母は、わたしがロンドンへ向かう事を予想している筈です。だから・・」
「俺の弟、という事にして、俺と一緒に旅をするというのはどうだ?それか、夫婦としてでもいい。」
「夫婦・・それなら、周りに怪しまれませんね。」
「そうだな。これからよろしく、カイト。」
森を抜けた二人は、小さな町へとやって来た。
「ここで何か食べる物でも買おう。長い旅になりそうだしな。」
「はい・・」
ナイジェルは海斗から貰った金貨で数日分の食料と水を買い、町から出た。
「暗くなる前に、何処かへ泊まろう。」
「そうですね。」
街道から少し離れた宿屋に二人が入ると、そこには柄が悪そうな男達が数人、エールを飲みながらチラチラと横目で海斗達の方を見ていた。
「行くぞ。二階の部屋が空いている。」
「はい・・」
「大丈夫だ、お前の事は俺が必ず守る。」
にほんブログ村
作者様・出版社様は一切関係ありません。
海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。
二次創作・BLが嫌いな方はご注意ください。
何処かでフクロウの鳴き声がした。
川沿いの道を馬で走りながら、海斗はこのまま夜の闇を自分で包んでくれれば良いのに思っていた。
森の中に入った海斗は、暫く歩くとこぢんまりとした小屋を見つけた。
「すいません、誰か居ませんか?」
そう言いながら小屋の中へと入った海斗は、ここでつい先程まで人が住んでいた気配を感じた。
台所には、湯気が立ったスープだった。
それを一口飲んだ後、海斗はそのまま泥のように眠った。
「あの子が消えたですって!?それは本当なの!?」
「はい・・」
「まだ遠くには行っていないわ、捜し出して殺しなさい!」
「は、はい・・」
(まったく、あの娘には苛々させられるわね!)
女はゴブレットを乱暴にテーブルの上に置いた後、深い溜息を吐いた。
「奥様、お呼びですか?」
「リリア、例の物は完成したの?」
「はい。」
「そう、ご苦労様。」
侍女に労いの言葉を掛けた女は、そのまま寝室へと入っていった。
朝が来たら、娘を殺そう―女はそう思いながら眠った。
「おい、起きろ。」
「ん・・」
誰かに揺り起こされ、海斗が静かに目を開けると、自分の前には険しい顔をしている男の姿があった。
「貴様、俺の家で何をしている?」
「ごめんなさい、少し訳有りで・・」
「そうか。」
男は、灰青色の瞳で、泥で汚れた海斗のドレスを見た。
「俺はナイジェル、この小屋に住む猟師だ。お前、名は?」
「カイトです。あの、これ宿を貸して頂いたお礼にどうぞ。」
海斗はそう言うと、男に金貨を三枚、手渡した。
「カイト、その身なりからするとお前は何処かの貴族の娘のようだな?」
「はい、実は俺・・」
「声を出すな、誰かがこちらに近づいて来ている。」
「え?」
男―ナイジェルに口を塞がれ、海斗が小屋の窓から外を見ると、そこには継母の部下と思しき男達の姿があった。
「あいつらとは、知り合いか?」
「継母の部下です。彼女は、俺を殺そうとしているんです。」
男達が小屋から遠ざかった後、海斗はナイジェルにこの小屋まで来た経緯を話した。
父が死に、継母が財産目当てで自分を殺そうとしている事や、後見人であるエリザベス女王の元へ単身向かおうとしている事などを話した。
「そうか。ここで会ったのも何かの縁だ。俺がお前を陛下の元へと連れて行く。」
「いいんですか?」
「あぁ。俺は元々、根無し草だ。」
これが、ナイジェルと海斗の出会いだった。
「お前の背丈に合うかどうかわからないが、衣装箱からこんな服が出て来た。」
「ありがとう。」
ナイジェルから手渡された黒い天鵞絨の服には、美しい真珠の釦がついていた。
「この服は・・」
「俺がガキの頃、母が仕立屋で誂えてくれた服だ。」
「そんな大切な物、受け取れません。」
「俺はもう着られないから、お前に来て貰った方が天国の母も喜ぶだろう。」
「わかりました。」
汚れたドレスから黒い天鵞絨の服に着替えた海斗は、ナイジェルと共に森から出て、ロンドンへと向かった。
「これから、どうする?」
「継母は、わたしがロンドンへ向かう事を予想している筈です。だから・・」
「俺の弟、という事にして、俺と一緒に旅をするというのはどうだ?それか、夫婦としてでもいい。」
「夫婦・・それなら、周りに怪しまれませんね。」
「そうだな。これからよろしく、カイト。」
森を抜けた二人は、小さな町へとやって来た。
「ここで何か食べる物でも買おう。長い旅になりそうだしな。」
「はい・・」
ナイジェルは海斗から貰った金貨で数日分の食料と水を買い、町から出た。
「暗くなる前に、何処かへ泊まろう。」
「そうですね。」
街道から少し離れた宿屋に二人が入ると、そこには柄が悪そうな男達が数人、エールを飲みながらチラチラと横目で海斗達の方を見ていた。
「行くぞ。二階の部屋が空いている。」
「はい・・」
「大丈夫だ、お前の事は俺が必ず守る。」
にほんブログ村