BELOVED

好きな漫画やBL小説の二次小説を書いています。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。

蝶の華 一

2023年12月30日 | FLESH&BLOOD 韓流時代劇風パラレル二次創作小説「蝶の華」
素材はこちらをお借りしました。

フリー素材【和華蝶】https://www.pixiv.net/artworks/63848096

「FLESH&BLOOD」の二次小説です。

作者様・出版社様は一切関係ありません。

一部残酷・暴力描写有りです、苦手な方はご注意ください。

海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。



「お産まれになったぞ!」
「男か、女か?」
「それが・・」
元気な産声と共に、この世に産まれ落ちた赤子には、男女両方の性を持っていた。
「その子を、何処かへ捨てて来て!」
「奥様・・」
「早く!」
泣き叫ぶ赤子を抱いた東郷家の乳母は、屋敷を出てある場所へと向かった。
そこは、妓楼だった。
「助けて下さい!」
「可哀想に、捨てられたんだね。」
都一の妓楼・蝶華楼の行首・ヨナは、そう言うと赤子を乳母から受け取った。
「あとは、あたしに任せな。」
「どうか、お嬢様の事をお願い致します!」
こうして、両班の令嬢として産まれた海斗は、ヨナに引き取られ、妓生として生きる事になった。
「海斗、おはよう。」
「おはようございます、行首様。」
「今日も早いねぇ。」
海斗は、玄琴の稽古を受ける為、妓楼から少し離れた師匠宅へと向かっていた。
その途中で、彼女は転んでしまった。
「大丈夫か?」
「はい・・」
チマの裾についた汚れを払った海斗は、美しい蒼い瞳に吸い込まれるかのように、自分に手を差し出してくれた男に見惚れてしまった。
「どうした?」
「助けて下さって、ありがとうございました。」
(赤い髪か、この国では珍しいな。)
「ジェフリー、こんな所に居たのか。」
そう言って金髪碧眼の男に駆け寄って来たのは、右目に黒絹の眼帯をつけた男だった。
「ナイジェル。」
「あの赤毛の子とは知り合いか?」
「いいや。ただ昔、会った事があるような気がしてな。」
「そうか。」
眼帯の男―ナイジェルは、そう言うと溜息を吐いた。
「こんな所で油を売っている暇はないぞ。」
「あぁ、わかっているよ。」
金髪碧眼の美男子・ジェフリーは、そう言うとナイジェルと共にある場所へと向かった。
「おかしらぁ、待っていやした!」
そう言ってジェフリー達を出迎えたのは、屈強な男達だった。
彼らは、私腹を肥やす両班から財産を奪い、彼らの悪事を暴く義賊だった。
「おかしらぁ、今日は何処を狙うんです?」
「そうだな、あそこの金家を狙うか。」
「そうこなくっちゃ!」
金家の主は、使用人を虐待する事で悪名高い両班だった。
彼に娘を殺された母親は、涙を流しながらジェフリー達にこう訴えた。
「どうか、娘の仇を討ってください!」
(俺がこの世で一番嫌いなものは、他人を害してのうのうと生きている奴等だ。)
夜陰に乗じて金家へと向かう途中、ジェフリーの脳裏に幼い頃の記憶が甦って来た。
ジェフリーの母は、彼が三歳の頃、自室で首を吊って死んだ。
その苦しそうな死に顔は、未だに忘れられない。
亡き母の代わりに自分を育ててくれた乳母は、王の側室に殺された。
男でありながら、卑しい身分から王の側室として権勢を振う彼の淡褐色の瞳を、ジェフリーは、ひと時たりとも忘れた事はなかった。
「ジェフリー、着いたぞ。」
金家の屋敷から、賑やかな音楽と人々の歓声が聞こえて来た。
どうやら彼は、これから襲われることも知らずに、呑気に宴を開いているようだ。
「行くぞ。」
頭から黒い頭巾を被り、ジェフリー達が宴に乱入すると、妓生達は悲鳴を上げた。
「この屋敷の主人は何処だ!?」
「裏に逃げた!」
ジェフリーが金を追い掛けると、彼は悲鳴を上げて地面にへたれ込んだ。
「お願いだ、命だけは・・」
「お前に殺された娘がそうやって命乞いした時、助けてやったか?」
「ひぃぃっ!」
(クソ、この服は捨てるしかないな。)
ジェフリーが舌打ちしながら両班の返り血で汚れた服を拭おうとした時、彼が被っていた頭巾が風に飛ばされてしまった。
「綺麗・・」
背後から声が聞こえたので、ジェフリーが振り向くと、そこには昼間自分とぶつかった妓生が立っていた。
「ジェフリー!」
「あぁ、今行く!」
月明かりに照らされたジェフリーの美しい金髪が見えなくなるまで、海斗はその場に立ち尽くしていた。
(あの人、綺麗な人だったな・・)
「どうしちゃったの、惚けちゃって?」
「ううん、別に・・」
「それにしても、金様があんな方だったとはね。あたし達には良くして下さったのに。」

(あの人と、また会えるかな?)

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年末のご挨拶

2023年12月29日 | 日記
今年も、創作活動に精を出せました。
そして、高校生の頃に夢中になって読んだ大好きな漫画、平井摩利先生の「火宵の月」を、単行本全巻をブックオフに売り飛ばしてしまいましたが、出版社の漫画アプリでちまちま読み返しております。
やはり、有匡様のツンデレぶりはいいですし、クールな彼が火月ちゃんに対して動揺したり怒ったり、そして甘々になったりと、そのギャップが堪りません。

来年も創作活動に精を出そうと思っております。

2023.12.29 千菊丸
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年末のご挨拶。

2023年12月19日 | 日記
2023年も、色々と二次小説の更新があったりなかったりという一年でしたが、来年も宜しくお願いいたします。

2023.12.19千菊丸
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海賊と人魚 1

2023年12月15日 | FLESH&BLOOD 異世界ファンタジーパラレル二次創作小説「海賊と人魚」
「FLESH&BLOOD」の二次小説です。

作者様・出版社様は一切関係ありません。

海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。

二次創作・BLが嫌いな方はご注意ください。

海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。

その昔、世界に様々な種族が存在していた。

人間、人魚、妖精・・彼らは皆、互いを尊重し、共存し合っていた。
そんな中、人間が“産業”という物を発展させた為、次第に妖精やドラゴン、そして人魚達の棲家が徐々に奪われていった。
やがて、人間とドラゴン達は、些細な事で戦を起こした。
ドラゴンは、徐々に人間達の争いでその数を減らしていった。
妖精とドラゴン、人魚達は、それぞれの代表が人間が開く会議に出席し、和平条約を結んだ。
しかし、欲深い人間達は、幾度も彼らの領土を荒らした。
そして、世界には妖精とドラゴンが絶滅し、人魚だけが残った。
だが、その人魚もまた、不老不死の妙薬を目当てに人間達に乱獲され、その生息数を減らしていった。
そんな中、海の底にある人魚の王国で、一匹の人魚が仲間の人魚達と逸れて、広い海の中を彷徨っていた。
(みんな、何処に居るんだろう?)
腰下まである赤毛を揺らしながら、その人魚―海斗は不安そうな表情を浮かべ、只管広い海原を泳いでいた。
「海斗!」
「和哉、どうしたの?」
「急に居なくなったから、心配したんだよ?」
「ごめん・・」
「戻ろう、皆君を待っているよ。」
「うん・・」
海斗が和哉と共に王国へと戻ると、国王・レギオンが彼女の元へとやって来た。
「カイト、そなたの結婚が決まった。」
「え?」
「海斗、おめでとう。」
海斗の母・友恵は、そう言うと彼女を抱き締めた。
急に決まった結婚に、海斗は戸惑いを隠せなかった。
(俺はまだ、結婚なんてしたくない!)
人魚は、その生息数を増やす為、18の誕生日を迎えるまでに結婚し、子を産まなければならないという、掟があった。
「海斗、溜息なんて吐いてどうしたの?」
「うん・・」
「掟は絶対だからね。」
「そんな事、わかっているけどさぁ・・」
「まさかと思うけど、何か変な事を考えていない?」
「べ、別に・・」
海斗はそう言うと、和哉に背を向け、自宅へと戻って行った。
同じ頃、ジェフリー=ロックフォードは『グローリア号』の船長室で何度目かの溜息を吐いた。
「どうした、ジェフリー?浮かない顔をして?」
「いや・・」
「今回は、余り収穫がなかったな。」
『グローリア号』の航海長・ナイジェル=グラハムは、そう言いながら親友にワインボトルを手渡した。
「あぁ・・」
ジェフリー達が襲った商船には、コチニールや絹織物などが積まれていた筈だったのだが、それらは全て商人達が買い占めた後だった。
空の商船を襲い、港に戻ったジェフリー達を待っていたものは、人々の冷やかな視線だった。
「最近、ツイてないなぁ~」
「そうか。」
「考えてもみろ、この数ヶ月間、何のお宝も得られていない。俺達は、運の女神様に見放されたのかもしれないな。」
「そうかもな。」
だが、ジェフリー達が自分達の考えが間違っている事を知ったのは、商船を襲った数ヶ月後の事だった。
「ジェフリー、早く引き上げるぞ!」
「あぁ!」
ジェフリーは敵船の舷側から軽やかに『グローリア号』へと乗り移った時、海面に赤いものが光ったような気がした。
「どうした、ジェフリー?」
「いや、何か居たような・・」
「気の所為じゃないのか?」
(良かった、顔は見られていないな・・)
海斗は海中へと戻りながら、海賊船が遠ざかるのを感じた。
(あの人の瞳、綺麗だったなぁ・・)
海斗は時折光を受けて輝いているサファイアに、金の髪をなびかせた海賊の姿を思い浮かべた。
(綺麗な人だった・・また会いたいなぁ・・)
そんな事を思いながら、海斗は眠った。
「海斗、起きなさい!」
「う~ん・・」
海斗は乱れた髪を手櫛で整えると、母・友恵に連れられ、見合い相手が待つカフェへと向かった。
「お待たせしてしまってすいません。」
「いいえ、こちらも来た所ですわ。」
海斗は、自分をじっと見つめる青年の執拗な視線を感じ、とっさに友恵の背後に隠れてしまった。
「あらあら、恥ずかしがり屋さんでごめんなさいね。」
「いいえ、サイモン、カイトさんよ。」
「サイモンです。」
「じゃぁ、後は二人だけで・・」
突然海斗は気味の悪い青年・サイモンと二人きりにされ、戸惑った。
「君が僕のお嫁さんになるなんて、嬉しいなぁ・・」
サイモンはそう言うと、海斗の手を握った。
海斗は彼の手を振り払うと、カフェから出て行った。
(あんな奴とは、結婚しない!)
「海斗、どうしたの?」
「俺、サイモンさんとは結婚しない!」
「わがまま言わないの!」
友恵と口論になった海斗は、王国を離れ、人間達が居る世界へと向かった。
だが運悪く、彼女は漁師の網に絡まり、身動きが取れなくなってしまった。
(どうしよう・・)
海斗は身を捩って暴れたが、時間が無情に流れていった。
「おい、大丈夫か!?」
海斗が途方に暮れていると、突然頭上から声が降って来た。
俯いていた顔を上げた海斗の目に、自分を見つめる美しいブルーの瞳が飛び込んで来た。
「あなたは・・」
「お前、もしかして、人魚か?」
「はい・・」
“海斗、人間に会ったら気をつけなさい。”
物心ついた頃から、海斗は友恵達から耳にタコが出来る程、人間の恐ろしさを聞かされていた。
「俺を、どうするつもりですか?」
「そんなに怯えるな。お前を取って食ったりはしないさ。」
ジェフリーはそう言うと、海斗の身体に絡まった網を器用にナイフで切り落とした。
「ありがとう・・」
「また、会えるといいな。」
「これ・・小さいけれど。」
海斗は、ジェフリーに自分が首に提げていた涙型の真珠のペンダントを渡すと、海の中へと消えていった。
(可愛い奴だったな・・)
「ジェフリー、その真珠はどうした?」
「可愛い子に貰ったのさ。」

(また、会いたいな。)

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炎の踊り子 1

2023年12月15日 | FLESH&BLOOD ハーレクインパラレル二次創作小説「炎の踊り子」
「FLESH&BLOOD」の二次小説です。

作者様・出版社様は一切関係ありません。

海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。

二次創作・BLが嫌いな方はご注意ください。


1910年、京都。

「今晩わぁ。」
「海斗ちゃん、今日も寒いさかい、風邪ひかんようになぁ。」
「おおきに。」
祇園甲部のお茶屋「みずの」で女将に見送られ、東郷海斗は降りしきりる雪の中を歩いていた。
海斗がこの地で舞妓として店出しをしてから、もう五年もの歳月が経っていた。
五年前、海斗は伯爵家の令嬢として何不自由ない生活を送っていた。
父が詐欺師に金に騙し取られ、破産するまでは。
海斗は母・友恵に連れられ、祇園甲部の置屋に引き取られた。
赤髪の舞妓として、好奇の視線に晒されたが、海斗はそれをはねのけるように、芸を磨いた。
その結果、彼女は祇園の名妓としてその名を全国に轟かせていた。
だが、山程身請け話が持ち込まれても、海斗はそれらを皆、断った。
「海斗ちゃん、どないしたんや?さっきの伯爵様の身請け話を断るやなんて、何か理由でもあるんか?」
「うちには、夢があるんどす。」
「夢?」
「うちの踊りを、世界中の人に見て貰いたいんどす。」
「そら、あんたの舞は美しいものやさかいな。」
「うちは、パリへ行きたいんどす。」
「パリへ行って何をする気なんや?」
「パリへ行って、有名になるんどす。」
「大層な夢やなぁ。でも、現実は甘くない。」
「そんな事、わかっています。せやから、うちはもっと芸を磨きます。」
「そうか。」
舞妓になる前、海斗はバレエを習っていた。
「お嬢様はダンスの才能がありますわ。お嬢様程の才能ならば、パリのオペラ座の舞台に立てるようになるかもしれませんね。」
それは、バレエの家庭教師がお世辞で言ったのかもしれなかったが、かつてパリのオペラ座でしのぎを削った経験があった彼女は、海斗には天賦の才能があると見抜いていた。
だからこそ、彼女は友恵に海斗をパリへ留学させることを薦めたが、その前に海斗達は姿を晦ましてしまった。
(今、何処に居るの、カイト?)
「どうしたんだ、リリー?浮かない顔をして?」
「ごめんなさい、ジェフリー。昔の教え子の事を思い出していたのよ。」
「へぇ、どんな子だったんだい?」
「赤毛で、ダンスの才能がある子だったわ。この子ならパリでも通用すると思ったの。だからあの子の母親へあの子をパリへ留学させるように薦めたわ。でもその後、彼らは行方を晦ましてしまったの。風の噂で、その子がこの京都で舞妓をしていると聞いたのだけれど、会えるかどうか・・」
「会えるさ。」
ジェフリー=ロックフォードは、この京都でオペラ座バレエ団の公演の演出を担当する演出家だった。
そして彼の隣に座っているリリーは、かつてパリで有名なバレエダンサーであったが、怪我をして引退し、振付師として世界中を駆け回る日々を送っていた。
「日本での公演を決めたのは、あの子に―カイトに会えるかもしれないと思ったからなの。でも、無駄足に終わりそうね。」
「する前から諦めるなんて、あんたらしくないぞ。」
「そうね。」
二人は来日したその日の夜、「みずの」で食事をする事になった。
「今夜は、舞妓を呼ぶ事にしたが、構わないか?」
「いいわよ。振付師として、日本の踊りがどんなものなのか見てみたいわ。」
リリーとジェフリーがそんな話をしていると、襖が開いて、一人の芸妓と舞妓が部屋に入って来た。
「今晩わぁ、千代どす。」
「海斗どす。」
「カイト、あなたなの?」
「リリー・・先生?」
海斗は、お座敷でリリーと再会し、思わず彼女と抱き合った。
「元気そうで良かったわ。まさか、あなたが舞妓となって踊りを続けているなんて思ってもみなかったわ。」
「俺も、あなたと会えて嬉しいです。」
「まだ、パリ留学は諦めていない?」
「はい。今は芸を只管磨いています。」
「そう。」
リリーと海斗は暫く話し込んでいたが、海斗は自分を見つめるジェフリーの視線に気づいた。
「リリー、あの方は?」
「あぁ、この人は・・」
「初めまして、カイト。俺はジェフリー=ロックフォード、今度この京都公演の演出を担当する演出家だ。」
ジェフリーはそう言うと、海斗の手の甲に口づけた。
「明日の公演のチケットだ。良かったら観に来てくれ。」
「はい・・」

これが、ジェフリーと海斗との出会いだった。

後に、海斗は歴史にその名を残すダンサーとなるのだが、その時はまだ誰も知る由もなかった。

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