「FLESH&BLOOD」の二次小説です。
作者様・出版社様は一切関係ありません。
海斗が両性具有です、苦手な方はご注意ください。
最期に憶えていたのは、紅蓮の炎に包まれた故郷だった。
―父様、母様!
燃え盛る炎の中で必死に家族を捜している中、何者かに殴られ、気絶した。
そこで、記憶は途切れた。
「海斗、早くしなさい!」
「はい・・」
「全く、クズなんだから!」
両親を事故で亡くし、東郷海斗は眠い目を擦りながら、“部屋”から出て行った。
夏の陽射しが容赦なく彼女の肌を灼いたが、海斗は母屋の中へと入っていった。
「遅かったわね、何をしていたの?」
「申し訳ありません。」
「もういいわ、仕事なさい。」
そう言ったのは、海斗の伯母で料亭『五十鈴』の女将・恵子だった。
「はい・・」
「辛気臭い顔ね。あなたを見ていると苛々するわ!」
恵子は海斗にそんな言葉を投げつけると、そのまま自室へと去っていった。
海斗が厨房に入ると、板長の理太郎が彼女に菓子の包みを手渡してきた。
「今日は忙しいから、これ食べて元気出せ。」
「ありがとうございます。」
「海斗ちゃん、おはよう。」
「おはようございます。」
「今日も暑いね。」
「ええ・・」
厨房は風通しが悪く、夏の間は地獄のように暑かった。
「海斗、柳の間に定食運んで!」
「はい!」
夜になると、『五十鈴』の厨房は猫の手も借りたい程忙しくなった。
その日は暑くて、夜になっても蒸し暑かった。
海斗は溜息を吐き、井戸の水で少し手を洗った。
「その髪は、染めているのか?」
「え?」
突然背後から声がしたので海斗が振り向くと、そこには黒いスーツ姿の男が立っていた。
「いいえ、地毛です。」
「眉と睫毛だけは黒いな。それにその瞳・・黒真珠のような美しさがある。」
「あの・・」
男の美しい蒼い瞳に見つめられ、海斗は急に気を失いそうになった。
「大丈夫か?」
「すいません・・」
「後で、時間あるか?」
「はい・・」
「そうか。じゃぁ、ここで待っている。」
男はそう言うと、海斗の手に名刺を手渡した。
そこには、男が泊まっている宿の名前があった。
仕事が終わり、海斗は男の名刺に書かれてあった宿へと向かうと、そこは新しく出来たレンガ造りの美しいホテルだった。
「あの、こちらにジェフリー=ロックフォードさんという方は・・」
「来てくれたのか。」
海斗がホテルのフロントで男の名刺を従業員に見せていた時、丁度彼がホテルのロビーを通りかかった。
「部屋へ行こう。」
「はい・・」
男に部屋へと連れて行かれ、海斗は彼にベッドの上に押し倒された。
「あの・・」
「力を抜け。」
男に唇を塞がれ、海斗は身体の奥が熱くなるのを感じた。
“カイト・・”
(誰?この人、知っているような気がする・・)
海斗は、男の腕の中で蕩けた。
―カイト、約束だ。必ずお前を・・
懐かしい夢を見たような気がした。
「ん・・」
小鳥の囀りを聞いた海斗が目を開けると、隣にはあの金髪碧眼の男が眠っていた。
彼を起こさぬよう部屋から出てホテルを後にした海斗は、料亭に戻った時、両親の形見を部屋に忘れてしまった事に気づいた。
(どうしよう・・)
そんな事を思いながら、海斗が仕事をしていると、座敷の方から賑やかな笑い声が聞こえて来た。
「随分とお昼から賑やかですね。」
「何でも、貴族院議員の先生が来ているんだとよ。」
「へぇ・・」
海斗が、貴族院議員が居る華の間へ酒を運ぶと、そこには彼女の幼馴染で、元婚約者の森崎和哉が居た。
「失礼致します。」
海斗は和哉に気づかれないように座敷から出ると、和哉が彼女に気づき、彼女を追い掛けて来た。
「海斗!」
「久し振りだね、和哉。」
「ここで、働いているの?」
「まぁね。」
「仕事が終わったら、話せる時間はあるかな?」
「少しは・・」
「そう。じゃぁ、ここで待ってる。」
和哉は別れ際、海斗に行きつけの喫茶店の住所が書かれたメモを手渡し、座敷へと帰って行った。
「お疲れ~」
「お疲れ様~」
仕事を終え、昼休憩に入った海斗は、和哉に渡されたメモの住所を頼りに、喫茶店「シルビィ」へとやって来た。
「いらっしゃい。」
海斗を出迎えたのは、長身で強面のマスターだった。
「海斗、こっちだよ。」
「和哉、久し振り。今まで、手紙を一通も書かなくてごめんね。」
「いいんだよ。あんな事があった後だし・・それにしても、海斗はまた箏を続けているの?」
「お客さんの前で演奏することがあるから、続けているよ。和哉は、ヴァイオリンは続けているの?」
「まぁね。お昼だから、何か食べない?このお店は、ビーフシチューが美味しいよ。」
「じゃぁ、それを食べようかな。」
昼休憩を終えて海斗が料亭に戻ると、何やら店の前に人だかりが出来ていた。
「どうしたんですか?」
「海斗、あんたに会いたいって人が・・」
「え?」
女将と海斗がそんな事を話していた時、店の前に停まっていた車から、金髪碧眼の美男子―ジェフリー=ロックフォードが降りて来た。
「やっと見つけたぞ、カイト。俺の、運命の花嫁。」
海斗の前に跪いたジェフリーは、そう言うと彼女の手の甲に接吻した。
(え、えぇ~!)
これが、海斗とジェフリーの、運命の出会いだった。
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作者様・出版社様は一切関係ありません。
海斗が両性具有です、苦手な方はご注意ください。
最期に憶えていたのは、紅蓮の炎に包まれた故郷だった。
―父様、母様!
燃え盛る炎の中で必死に家族を捜している中、何者かに殴られ、気絶した。
そこで、記憶は途切れた。
「海斗、早くしなさい!」
「はい・・」
「全く、クズなんだから!」
両親を事故で亡くし、東郷海斗は眠い目を擦りながら、“部屋”から出て行った。
夏の陽射しが容赦なく彼女の肌を灼いたが、海斗は母屋の中へと入っていった。
「遅かったわね、何をしていたの?」
「申し訳ありません。」
「もういいわ、仕事なさい。」
そう言ったのは、海斗の伯母で料亭『五十鈴』の女将・恵子だった。
「はい・・」
「辛気臭い顔ね。あなたを見ていると苛々するわ!」
恵子は海斗にそんな言葉を投げつけると、そのまま自室へと去っていった。
海斗が厨房に入ると、板長の理太郎が彼女に菓子の包みを手渡してきた。
「今日は忙しいから、これ食べて元気出せ。」
「ありがとうございます。」
「海斗ちゃん、おはよう。」
「おはようございます。」
「今日も暑いね。」
「ええ・・」
厨房は風通しが悪く、夏の間は地獄のように暑かった。
「海斗、柳の間に定食運んで!」
「はい!」
夜になると、『五十鈴』の厨房は猫の手も借りたい程忙しくなった。
その日は暑くて、夜になっても蒸し暑かった。
海斗は溜息を吐き、井戸の水で少し手を洗った。
「その髪は、染めているのか?」
「え?」
突然背後から声がしたので海斗が振り向くと、そこには黒いスーツ姿の男が立っていた。
「いいえ、地毛です。」
「眉と睫毛だけは黒いな。それにその瞳・・黒真珠のような美しさがある。」
「あの・・」
男の美しい蒼い瞳に見つめられ、海斗は急に気を失いそうになった。
「大丈夫か?」
「すいません・・」
「後で、時間あるか?」
「はい・・」
「そうか。じゃぁ、ここで待っている。」
男はそう言うと、海斗の手に名刺を手渡した。
そこには、男が泊まっている宿の名前があった。
仕事が終わり、海斗は男の名刺に書かれてあった宿へと向かうと、そこは新しく出来たレンガ造りの美しいホテルだった。
「あの、こちらにジェフリー=ロックフォードさんという方は・・」
「来てくれたのか。」
海斗がホテルのフロントで男の名刺を従業員に見せていた時、丁度彼がホテルのロビーを通りかかった。
「部屋へ行こう。」
「はい・・」
男に部屋へと連れて行かれ、海斗は彼にベッドの上に押し倒された。
「あの・・」
「力を抜け。」
男に唇を塞がれ、海斗は身体の奥が熱くなるのを感じた。
“カイト・・”
(誰?この人、知っているような気がする・・)
海斗は、男の腕の中で蕩けた。
―カイト、約束だ。必ずお前を・・
懐かしい夢を見たような気がした。
「ん・・」
小鳥の囀りを聞いた海斗が目を開けると、隣にはあの金髪碧眼の男が眠っていた。
彼を起こさぬよう部屋から出てホテルを後にした海斗は、料亭に戻った時、両親の形見を部屋に忘れてしまった事に気づいた。
(どうしよう・・)
そんな事を思いながら、海斗が仕事をしていると、座敷の方から賑やかな笑い声が聞こえて来た。
「随分とお昼から賑やかですね。」
「何でも、貴族院議員の先生が来ているんだとよ。」
「へぇ・・」
海斗が、貴族院議員が居る華の間へ酒を運ぶと、そこには彼女の幼馴染で、元婚約者の森崎和哉が居た。
「失礼致します。」
海斗は和哉に気づかれないように座敷から出ると、和哉が彼女に気づき、彼女を追い掛けて来た。
「海斗!」
「久し振りだね、和哉。」
「ここで、働いているの?」
「まぁね。」
「仕事が終わったら、話せる時間はあるかな?」
「少しは・・」
「そう。じゃぁ、ここで待ってる。」
和哉は別れ際、海斗に行きつけの喫茶店の住所が書かれたメモを手渡し、座敷へと帰って行った。
「お疲れ~」
「お疲れ様~」
仕事を終え、昼休憩に入った海斗は、和哉に渡されたメモの住所を頼りに、喫茶店「シルビィ」へとやって来た。
「いらっしゃい。」
海斗を出迎えたのは、長身で強面のマスターだった。
「海斗、こっちだよ。」
「和哉、久し振り。今まで、手紙を一通も書かなくてごめんね。」
「いいんだよ。あんな事があった後だし・・それにしても、海斗はまた箏を続けているの?」
「お客さんの前で演奏することがあるから、続けているよ。和哉は、ヴァイオリンは続けているの?」
「まぁね。お昼だから、何か食べない?このお店は、ビーフシチューが美味しいよ。」
「じゃぁ、それを食べようかな。」
昼休憩を終えて海斗が料亭に戻ると、何やら店の前に人だかりが出来ていた。
「どうしたんですか?」
「海斗、あんたに会いたいって人が・・」
「え?」
女将と海斗がそんな事を話していた時、店の前に停まっていた車から、金髪碧眼の美男子―ジェフリー=ロックフォードが降りて来た。
「やっと見つけたぞ、カイト。俺の、運命の花嫁。」
海斗の前に跪いたジェフリーは、そう言うと彼女の手の甲に接吻した。
(え、えぇ~!)
これが、海斗とジェフリーの、運命の出会いだった。
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