━(「シネ・レヴュー」)自分と同じような役者の活動をする人たちのおかげで、あなたはいらだっている喜劇女優のようです。それは、まったく意外なことでしょうか?
(アニセー・アルヴィナ)極端な話、私は喜劇俳優が好きじゃないの! しばらくは、顔を合わせるのも嫌だったし、ついには、いらだっちゃうことに気づいたのよね。やたらいつも、おんなじことばっかり聞かされてね。そういった場合ほとんど、男の方がすぐに気を悪くしちゃうのね。あの人たちって、それが人生だってことがまだわかっていないし、現実の人生の中のいろんなことについての基礎知識も全然ないわ。自分自身の中に閉じこもっちゃって、よそよそしく気難しくなっちゃうの。それって、あの人たちの戯れの中にも残るわね。明らかに誤っているわよ。人生とは何かっていう基礎知識に欠けているのではね。私には、この仕事における最高の学校は、人生であって、何かの講義ではないわね。役者になりたいと思ったとして、技術という点を除けば、人から教わることではないと思うわ。
━喜劇についての授業は、まったくうけなかったのですか?
ええ、でも、私にはそれって全く満足できることではなかったと言わなければならないわね。私はすぐに「レッテル」という面でいらいらさせられたわ。それって、「お前は、その種の役を演じるために存在するんだ」ってことね。あたしが演劇学校の授業に出始めた1番最初の時、
「お嫁さんの学校」のアグネスとジジの役を与えられたの。少々私には重荷だったといわねばならないわ。そういうわけで、私はさぼっちゃった。
マニアたちの小宇宙
━美しさというのは、役者の仕事をする上で重要でしょうか?
美人だってことは、ある意味ハンディね。というのは、フランスでは、美しいと必然的に愚かと見なされちゃうから! ほんと全くばかげているわね!アラン・ロブ=グリエの映画に出た後、私がしらずしらずに太っちゃった理由がそれなの。身体を壊そうとしちゃったわ。考えたものよ。「みんな、あたしを「かわいい女」っていうタイプにレッテルばりするんだなあ。ほんと、そればっかり。あたしは違うのよってことを証明するんだ!」こんな側面もあったわよ。「私が醜いように、でもうまく演じているように見て!」ばかばかしいわよね。他の役を演じられることを証明するために5キロも体重を増やさなければならなかったわ。そのうえ、私が出演した「夜明けのバリケード」やプロのレベルでうまく演じることのできた作品について言うと、今挙げた映画での私の演技にみんな驚いていたわね。それらのジャンルの映画でも、私は役をこなせるってことを明らかにしたってことよね。
次に、そういったことが原因のやっかみもあるわ。感じのいい人がいたら、打ち壊さなけりゃってこと。美人が、困惑したり、少し非難されたり―官能的な側面のようにね。マリリン・モンローやブリジット・バルドー・・・彼女たちは、どこかを非難されたわ。いろんな役を演じてきて、1度くらいはそれが大したことでないと理解する…。私はそのタイプの反応を挑発するのがすきよ。全然そんなことはないけど!
━最後に、あなたは、商業的にはほとんど成功していません。ヒットする映画に出演すべき時期だとはお考えになりませんか?
ええ、それが、私がこの連続テレビドラマに出演した理由の1つね。私の幸運は、ルイス・ギルバートの2本のアメリカ映画に出演したことね。外国での知名度の面で役に立ったわ。フランスよりもほんとに重要だったわ。フランスでは、何それって感じだったから。ほんとごく僅かなものだったわ。フランスのコメディエンヌにとって、外国人に人気があるのって、あんまりあることはないしね。外国では人気はあっても、フランスではいつだって人気を得るべき時なの!今、私はすばやく突き進んで、過去を厄介払いして、テレビでの感覚でいたいの。ブームを引きおこすためにね!
2本のアメリカ映画のおかげで、私は日本ですごい人気を得たの。それは無視すべきことではないわよね。米国からのとともに、日本からも仕事の依頼を直接受けているの。たとえば、「
地獄の黙示録」のプロデューサーの1人からね。1か月日本に滞在したんだけど、彼の地ではずっとあたしは人気があるって説明を受けて、とてもうれしかったわ。
━困難な時期を経験して、絶望はしませんでしたか?
したわよ。私はすごい楽観的な時期から悲観的な時期まで、すごい勢いで過ごしたことが何回かあったわ。もう自信をなくしちゃった時期もあったわね。その場合には、自分を疑うことをやめることね。というのは、喜劇俳優の仕事って、自分に助けを求めるしかないのよね。だから、仕事が上手くいかなかったら、問題を再検討して、くれぐれも、物事を悪くとらずに自分自身で最終的には建設的でいることね。それから、たとえば日本で私が人気があることって、気持ちが前向きになるわよね。「日本で人気があるんだから、そもそもフランスであたしに人気がない理由なんて、あるわけがないわ・・・」って、考えているのよ。
━ある種の映画にものすごく出演したということが、今までで顔をあわせた人たちになんらかの反応をおこさせたことがありますか?
ええ、いつだってあたしは付きまとわれているわよ。あたしにすごい好意をもっているマニア連中の小宇宙があるのよね。私を少々困惑させるし、でも今じゃ慣れちゃったけどね。そうは言っても、「ちょっと待って!」言わざるをえない時もあるわよ。すごい意地悪になっちゃうわよね。ベルナール・クエッサンヌとの連続ドラマの撮影の最中にあったわよ。撮影に間に合うため、毎朝7時に起きていたのよ。ところが、夜中の2時から朝の5時までひっきりなしに私に電話をかけるので、電話を取ることが出来なくなっちゃったの。というのは、ドラマのアシスタントが毎朝電話で私を起こしていてくれたから。それってすごい不愉快よね。私はもう眠れないし、昼まで体力に物をいわせて起きていなければならないわ。つらかったけど、他に解決する方法もなかったし。いうならば、不特定多数の人たちの前に姿を見せるっことは、明らかにその類のことに身をさらすってことね・・・。
(了)
((聞き手)ベルナール・アレ)
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私の解説は蛇足になりますので、手短に済ませます。
いろいろ興味深い内容のインタビューですが、アニセーが日本の話をしているのが目を引きます。日本の雑誌のインタビューでなく、フランスの雑誌でのそれですから、お世辞抜きで、彼女は日本を気に入っていたようです。日本からの仕事のオファーとは、高田賢三監督の「夢・夢のあと」のことでしょう。この映画は、翌年の80年に撮影され、81年に公開されましたが、しかし、この映画でも、彼女はヌードになっているんですよねえ・・・。また、その宣伝のため(でしょう、おそらく)に出た
雑誌のグラビアでもヌードになっています。なにも、インタビューでここまで話をしていて、そんなことしなくてもいいじゃんと思うのですが、彼女はセルフマネジメントの能力が弱かったのかもしれません。
ほかにもストーカーに付きまとわれている話とかも興味深いところですが、個人的には、
>「日本で人気があるんだから、そもそもフランスであたしに人気がない理由なんて、あるわけがないわ・・・」って、考えているのよ。
というくだりは、彼女がまもなく映画界を去ることを知っている私には、胸がいっぱいになってしまうものでした。
また、彼女のインタビューを入手できたら、このブログで翻訳したいと思います。