地域の図書館から、櫻井よしこ著「
櫻井よしこの憂国」(ダイヤモンド社)という本をかりてきました。
櫻井の本をあんまり読んだことがないのですが、拉致問題は話が別なので、その点について目をとおしておこうかなと考えたわけです。
正直彼女の本の中にも、共感できるものがなくもありませんが、この本の中身は「沖縄集団自決訴訟、高裁判決を疑う」(p.136)とか、「田母神氏の主張は『極論』ではない、切り捨ててはならない」(p.142)など、正直「馬鹿」としかいえないものが多いのですが、これらの反論よりも、このブログの興味にしたがって、拉致問題の記事をひとつ取り上げます。
「横田めぐみさんを北朝鮮はなぜ必死に隠すのか」(p.275)です。
横田めぐみさんの問題については、安倍晋三が首相在任時、横田夫妻に
>「めぐみさんが生きている可能性は九九%ないが、政府としては”生きている”という前提で北に圧力をかけるから同調して欲しい」
と求めたという
情報があるくらいで、そうだとしたら議論するだけばかばかしいという話になりますが、これはそのような話があったということを当事者たちは認めないでしょうから、一応可能性としてどんなもんかいなという留保はしておいた上で、櫻井の文章を解析します。
櫻井は、田原総一郎氏が拉致被害者死亡の話をしたことにふれ、
>家族の皆さんは問うているのだ。なぜ、北朝鮮の言い分を、確証もないのに確定事実であるかのように主張するのか、と。(p.275)
私はこの時の田原氏の話をしたときの様子を知りませんが、しかし現実問題として、北朝鮮で拉致被害者の方々が存命の可能性は、きわめて低いとしかいえませんよねえ。確証はないにしても、ほとんど限りなく絶望に近いとしかいえないでしょう。もし生きていたら、それは大変な幸運だと思います。
>金賢姫氏の新証言は、韓国で最も信頼されている言論人(McCreary:ほんとに???)、趙甲済氏によって報告された。氏は語る。
「金賢姫氏は三つの重要証言をしました。一、自分の同僚工作員の金淑姫がめぐみさんから日本語を習ったこと。二、死亡と発表された田口八重子さんは生きていると確信すること。三、自分に中国語を教えたのは、マカオから拉致されたミス孔であり、彼女は、日本の『救う会』が三年前に探し当てた人物だったことです」(p.276)
1については、(仮に事実であっても)それって金賢姫が逮捕された1987年以前の話でしょという以上のことではありませんし(その後どうなったかは、誰も語りません)、2は、こんなことで彼女の確信を述べられたってあんまり役に立ちませんし、3は、「ああ、そうですか」という以上の話ではありませんよね。
それで櫻井は、
>金正日総書記が懸命に、KAL機事件を隠蔽しようとしていることが見えてくる。
>北朝鮮がめぐみさんを決して出してこないのは、めぐみさんが何らかのかたちで金正日王朝の内部を比較的知りうる立場にいたのが要因ではないかと、拉致問題に詳しい、救う会事務局長の西岡力氏らは推測する。(以上p.276)
と書きます。
私も、横田さんが(万万が一)生きているとしたら、たぶんそれ以外に可能性がないと思います。
横田さんの(元)夫が、新しい奥さんをつれて、めぐみさんのほんとの娘さんの異母弟までテレビにだして登場したことも(ということは、彼女は離婚(?)して北朝鮮のどこかに暮らしているってことになりますよね)、なにかものすごい事情があって「偽装工作」(?)をしたっていうことになるんですかね。
以下は、私も可能性の問題でしかいえません。
横田さんが実際に工作員に日本語を教えたのかどうか知りませんが、そしてその可能性はあったのかもしれませんが、彼女も消息を絶って十何年たちますからねえ。はてはて、精神を重大に病んだ(らしい)彼女が、その後愛する家族とはなれて元気に生きていますかねえ・・・・。何回か日本に帰ろうとしたらしい彼女を、今日に至るまで北朝鮮の当局が囲っているんでしょうか。囲われてしまった彼女は、最愛の娘さんとも(たぶん)一生会えないことになったんですかねえ。そのように精神を強く病んだらしい女性が、今日まで北朝鮮のどこかにいる・・・。いろいろ考えてみても、彼女の生存の可能性はなかなか厳しいのでは。それとも横田さんは新しい家族をつくったのかな。
一番生きている可能性が高い(というか最近まで消息が判明している)横田さんもあんまり期待できそうにありませんし、ましてや他の拉致被害者は推して知るべしですよね。北朝鮮が入国していないと主張する2人の方々(曽我ひとみさんのお母さんと久米さん)は拉致以後誰一人として消息を語るものがいませんし、増元照明氏のお姉さんらも30年近く、有本さんたちも20年以上消息がつかめません。
横田めぐみさん以外にも、日本政府が確認している拉致被害者が存命中だとしたら、私はやはり北朝鮮の中枢と深い関係にあるという可能性しかないと思います。拉致被害者の全員が全員そのような立場だと仮定するのは、きわめて現実味に乏しいというものです。
けっきょくすべて「可能性」なんですよね。横田さんが生きていると主張しないと、北朝鮮攻撃のネタが減るという事情はわかりますが、だからといったって、こんな程度の薄弱な状況でそんなに「生きている」と断言してもねえ。でもこの文章を読んでいると、櫻井自身も彼女が生きているとそんなに確信しているわけではないみたいですね。
これを打破するためには、このブログで何回も繰り返しましたように、横田夫妻が訪朝もしくは第三国でお孫さんに会うことが必要です。そうすればいろいろなことがわかります。が、それをしないのは、やっぱり「事実」を認めるのがいやだ、ということなのでしょうね。いろいろ理由はあるでしょうが、けっきょく話はそこに行き着きます。
そして櫻井も、夫妻の訪朝には(当然ながら)否定的です。でも、相当思い切ったことをしないと、拉致問題は進展しませんよね。
総じて、この記事で櫻井が挙げている論拠は、横田さんの生存の可能性は説明していますが、とても弱いと思います。彼女が生きていると積極的に主張するには、もう少し材料がないと。20年以上前に逮捕された人物の話をもとに希望をつなぐというのは、あまり前向きになれる材料がないからではありませんかね。
さいごに、これは拉致問題とは無関係ですが、櫻井は2008年9月29日の麻生首相の所信表明演説を評して、
>しかし、麻生氏の言葉が、真に首相の心から出たものであり、作り物でないとしたら、小沢氏の訴えを超えて、なお力強く国民に語りかける力があると、私は思うが、どうか。(p.108)
としています。
櫻井は、いまでも同じ意見なのでしょうか(笑)。
なお、櫻井と安倍については、敬称をつける気がしないので略します。
さてさて、このブログは1日1記事を鉄則としているので、新たなエントリを追加するわけにはいきませんから、おまけの記事を書きます。
自民党のこの
pdfファイルがひどい。(削除された場合の魚拓は
こちら)ぜひ目を通してください。冗談でなく、自民党に明日はありません。
>民主党と労働組合の革命計画
一言。「馬鹿」
でもほんと、産経新聞の
阿比留瑠比記者や前に私が
馬鹿にした極右シンクタンクより、これはもっと頭が悪いですね。阿比留氏や極右シンクタンクだったら、「馬鹿が馬鹿を言っている」で話が済みますが、自民党は今度の選挙でも比例票をたぶん千何百万票くらいはとるでしょうからねえ。阿比留氏や極右シンクタンクを超える頭の悪さを世間にさらしてどうしようというのでしょうか。こんなものを読んだら、ごく平凡な頭脳と良識の持ち主なら、内容に強い不審を感じると思いますけどね。
これはほんとに野党転落後の自民党は極右政党になるかもしれませんね。たぶん自民党はこのような馬鹿で時代錯誤で誇大妄想なことをわめき続けるのでしょう。というか、衰退する組織の末路というものは、このようなものなのかもしれませんね…。
と、ここでこの記事は切るつもりだったのですが…。
追記:田母神がまた
馬鹿なことをほざいたみたいですね…。さすがに関係者もあきれきっているようですが、これは選挙の応援演説ですからねえ。こんなことをしたら、かえって候補者には迷惑だと思うんですけど、たぶん彼には違った考えがあるんでしょうね。困った馬鹿です。
田母神元空幕長 広島平和式典「被爆者も2世もいない」
8月25日21時18分配信 毎日新聞
田母神(たもがみ)俊雄・元航空幕僚長は25日、衆院宮崎1区に立候補している無所属前職の応援演説で宮崎市を訪れ、広島原爆の日の6日に広島市で開催された平和記念式典の列席者について「被爆者も2世もいない。左翼ばかりだ」などと述べた。これに対し、広島、長崎の被爆者からは批判の声が上がっている。
田母神氏は演説で6日に広島市で講演したことを紹介。さらに平和記念式典について「慰霊祭は左翼運動。あそこに広島市民も県民もほとんどいない。原爆の被爆者も2世もいない。並んでいるのは全国から集まった左翼。一部政治勢力が日本弱体化を図っている」などと述べた。
広島市によると、式典参加者は約5万人。会場には被爆者や遺族のための席も2000以上準備されている。 長崎原爆被災者協議会の谷口稜曄(すみてる)会長(80)は「原爆犠牲者に対して失礼だ。式典には歴代首相が参列して恒久平和と核兵器廃絶を誓っているのだから、日本政府はきちんと田母神氏に抗議すべきだ」と話した。
広島県被団協の坪井直理事長は「広島の平和記念式典は被爆者が平和宣言を聞き、亡くなられた方々に献花などする場。田母神氏の発言は実証がないのに人を扇動するばかりだが、何の効果もない。騒ぐ必要はないだろう」と話した。