ポルトガルのえんとつブログ

画家の夫と1990年からポルトガルに住み続け、見たり聞いたり感じたことや旅などのエッセイです。

153. 転んで、温泉

2019-06-01 | エッセイ

 今年は日本に3か月近く滞在し、その間に2回も転んで顔を打ってしまった。そのせいで前歯が2本折れてしまい、一ヶ月ほど歯医者通い。でも足の骨は幸いなことに骨折しないで済んだ。よほど骨が丈夫と見える。しかし足のむくみや擦り傷がひどいので、温泉に行くことにした。

宮崎市では70歳になると、敬老パスが送られてくる。一乗車100円でかなりの範囲のバス路線を使える。私の生れ故郷都城は宮崎から高速バスで片道一時間、1670円もかかるが、これも100円で乗れる。お陰で墓参りが往復200円ですむ。

都城と宮崎の境にある青井岳は旧道に面した山の中にあり、ここも片道一時間、通常料金1000円だが敬老パスなら100円で行くことができる。宮崎市内を出るとバスはだんだんと田舎の町や村を通り、しだいに山の中に入り込んで行く。川の水は透き通るようになり、時々は浅瀬にクレソンの茂みが見える。どこからか流れ着いて、そこに繁茂しているのだろう。

宮崎市内から乗ったバスは青井岳温泉に行く敬老パスを持ったお客でほとんど満席。途中の村から乗り降りするお客は殆どが老人だが、宮崎市民ではないから宮崎市の敬老パスを持っていない。普通料金で乗って来て、すでに満席だから座ることが出来ない。市や町の財政状況の差で住民サービスの不公平が生まれている。

バスは山桜や藤の花を見ながら、終点の青井岳温泉に到着した。

昔は都城から宮崎に行くときに青井岳超えをしたものだが、温泉には寄ったことがなかった。今回が初めてということだ。建物は新築の様にきれいで、大規模な施設だ。

入ってすぐにレストランがある。昼前だから席が空いている。

温泉に入る前にまず昼食。メニューも種類が豊富だ。注文したのは椎茸の卵とじ丼と天ぷらのセット。地元どれの椎茸でふっくらと肉厚で美味しい。メイン料理といい、小鉢やデザートといい、プロのコックさんが調理しているような見栄えと味だ。

真ん中のホールは地場産業品が並んでいて野菜や果物がかなり安い。

その奥に温泉のチケットの販売機があり、一人420円。それを見せると係の人がスタンプをおしてくれる。8が付く日はスタンプが2倍になるというのでふたつ押してくれた。それで今日はバスが満席に近かったのだ。スタンプカードがいっぱいになると、入浴料が一回無料になるそうだ。

大浴場はまるでリゾートホテルの浴場にそっくりで、ジャグジーやサウナ、歩く温水プール、などと様々な風呂がある。人が多くてのぼせるので、私はそうそうに風呂から上がる。

大広間の休憩室は風呂から上がった人々でいっぱいだ。畳敷きの大広間に横になって眠っている人たちもいる。私は持参したナッツを食べながらゆっくりする。カラスの行水なので帰りのバスまで時間がたっぷりある。ビトシは露天風呂やサウナなどに何度も入ったり、たっぷりと温泉を楽しんでいるから、なかなか休憩室に現れない。かなりの時間が経ってから、ピカピカの頭と顔で現れた。満足しきった様子だ。

帰りのバスは3時。来るときのバスに乗っていた人々がほとんどだ。途中のバス停から小学生たちが乗り込んできた。バスの中は一気に騒がしくなった。でもしばらくして数人ずつ降りて行った。そのバス停には家族がクルマで迎えにきていた。

青井岳温泉から乗った敬老パスのお客たちはほとんどが市内の中心まで乗っていた。そこから他のバスに乗り換えたり、或いは駐輪場に置いてあった自転車に乗って帰って行った。私は自転車に乗っていて転んだので、それ以来恐怖心で乗れなくなって、他のバスに乗り換えて帰宅した。行きは歩いて30分かかったけれど、かえりはバスに乗って10分。自転車だと5分もかからない。やはり自転車に早く乗りたいものだ。

週に2回ほど、約1ヶ月通って顔や足の打ち身傷もすっかり良くなった。青井岳温泉は良く効く温泉だ。

MUZ 2019/06/01

 

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