「今日は楽しい日曜日♪ クロちゃん音頭を踊りましょう♪ クロちゃんのお顔はマックロケ♪」
朝食後、拙者が庭先で気持ち良く日向ぼっこをしていると、上機嫌なご主人様が歌を唄いながら好物のおやつを持ってやってきた。
「今日は楽しい月曜日♪ クロちゃん音頭を踊りましょう♪ クロちゃんのお腹(なか)もマックロケ♪」
裏の竹薮で待望のタケノコが採れたらしい。おまけにシイタケも出てきたという。 このシイタケの出現はご主人様にとっては誠にうれしい出来事である。
1年半前にご主人様がこの屋敷に引っ越してきた時、広い敷地内には様々な木々が枝を伸ばしてうっそうと生い茂っていた。そこで近くの植木屋さんに頼んで余計な木樹の剪定をしてもらたのだが、その時に100本程度の大小の丸太がとれた。それを眺めていた植木屋さんは言った。
「これでシイタケを作ったらよかっぺ。いいシイタケができるっぺよ」
植木屋さんは軽トラに70本近い丸太を積んで帰って行き、数日後、シイタケの菌を打ち込んだ丸太を運んできて言った。
「来年の秋にはおいしいシイタケが沢山とれるっぺよ。親戚中に配っても配りきれないっぺよ」
ニコニコしながら請求書を置いて帰って行った。 疑うことを知らないご主人様は、その言葉を信じて翌年の秋を首を長くして待っていたのだ。 しかし、待てど暮らせど全く出てこない。あきらめかけていた晩秋のある日、一本の丸太に2枚のカサをつけているシイタケを発見した。
「オオ、やっと出てきてくれたか!」と喜んだのだが、出てきたのはその1本だけであった。
ある時、その話を裏のおばさんにしたら、「2年目の春に出ることもあるっぺよ」と哀れみ顔で言われたものだ。
そんなシイタケのことなどすっかり忘れて、タケノコ狩に精を出していたご主人様の目に、なんとシイタケの大きなカサが飛び込んできたのである。良く見ると、竹薮の竹に立てかけておいた近くの数本の丸太からも、ニョキニョキとかわいいカサが出ているではないか。 タケノコとシイタケの初物が一緒に取れた、めでたい日となったのである。
ご主人様が上機嫌になるはずである。これもあの鎮守の杜のよろずの神様の御加護お陰であろうか・・・・。
「今日は楽しい水曜日♪・・・・・・・・・」