ご主人様がなんだか泣いているようである。
拙者が朝食を食べ終えて、庭先からのんびり居間の方を眺めていると、ご主人様はテレビを観ながらポロポロと涙を流している。今日の連続ドラマはかなり感動的な場面がある気配だ。
テレビの画面では、ここの里山に似た風景が映し出されており、農村の貧しい人々の心温まる家族愛がご主人様の感動の涙をさそっているようだ。
それにしても、人間様というもは感情の起伏が少々激し過ぎるように、拙者には思われる。
さっきまで「わははは・・・」と大きな声を出して笑っていたかと思うと、急に「馬鹿野郎!」とどなってみたり、そしてこのように、テレビを観ながら突然泣き出したりする。
そんな人間様の姿を見るたびに、彼らも我々犬類のように、もっと心穏やかに日々を送れないものかと思ってしまうのだが、どうもそう簡単にはいかないようだ。
人間様の心の中には我々には理解できない色々な欲望が渦巻いているらしい。その欲望をうまくコントロールできずに色々な事件や問題を起こすらしい。
テレビを眺めていると、毎日毎日、ニッポン全国そして世界中で色々な事件や問題が起きているようだが、幸いこの里山では、今のところ特筆すべき深刻なトラブルはない。
せいぜいケモノの出没程度である。しかし、そのケモノこそが拙者にとっては最大の難敵なのであるが・・・・。