「ゲロゲロゲロ、グワグワグワ」 最近、カエルどもの啼き声がとてもヤカマシイ。
里山で田植えの準備が始まり、田んぼに水が引かれ始めると、山から民族移動してきた奴らは、その田んぼの中で我が物顔で大合唱を始めるのだ。
それまで山の沢などでひっそりと潜んでいた奴らが、溜めに溜めたエネルギーを一気に発散するかのように、「ゲロゲロ、グワグワ」と不気味な声を出して一斉に啼き始める。 夕方から始まる奴らの大合唱は、なんと深夜まで延々と続くのだ。
あの小さな体のどこにそれほどのパワーがあるのかと驚くのだが、驚いてばかりはいられない、あの騒音とも言うべき大合唱による安眠妨害で、拙者は不眠症になりそうである。
夜中になると、裏山の竹薮にタケノコ目当てのイノシシが出没するので、拙者はその警戒もしなければいけないのに、カエルどもに安眠を妨げられてはかなわないのだ。
しかし、それにしても、奴らはどうしてあんなに必死に啼き続けるのだろうか?
ここだけの話だが、実は拙者も満月の夜になると、妙に胸騒ぎがするのである。自分でも何故だか分からないのだが、胸の奥の奥の方で、ザワザワとしたものを感じるのである。そしてあの満月に向かって「ウオーーーーー!」と腹の底から叫びたくなる衝動にかられるのだ。何故そうなるのか、自分でも分からない。
カエルの大合唱も、カエルになっても分からないのかも知れない。