クロの里山生活

愛犬クロの目を通して描く千葉の里山暮らしの日々

アブダビの仙人

2014-04-19 17:35:18 | 日記
もうだいぶ前の冬の寒い日のことである。中東の砂漠の国からの客人があった。
今や世界で一番の大金持ちの国として知られる、アラブ首長国連邦の首都アブダビというところからやってきたらしい。
この客人にはご主人様はアブダビでたいそうお世話になったらしく、最上級のお世話をしておった。当然の如く、シシ鍋のお肉も最上級の柔らかいロースである。

ところで、ご主人様はこの客人を、「アブダビの仙人」とお呼びしていた。
この仙人は、色々なことができる人生の達人であるらしい。
一例をご紹介すると、夏季には灼熱の砂漠の国土となるところで、盆栽を作り、蘭の栽培もする。あるいはホームパーティなどでゲストの手相を観て人生を占う。また葬式の時には坊さんに代わって般若心経を唱えたりする。
そんな中でも、ご主人様が一番うれしかったのは、バーベキューパーティで招かれて行くと、仙人が自らさばいたニワトリの部位で、とてもおいしい焼き鳥を焼いてふるまってくれたことであった。
アブダビの高級日本レストランよりも旨い焼き鳥が食べれるということで、現地では評判であったらしい。

さて、そんな仙人と、ご主人様は定年後の里山生活についてアブダビで語り合った。
さすがの仙人も、死ぬまで砂漠の国で暮らすつもりはないらしく、日本の緑豊かな里山生活に強い関心を有していた。

そんなわけで、正月の休暇を利用して日本に帰ってきた仙人は、忙しい日程をやりくりしてご主人様の里山生活を視察にきたというわけだ。

アブダビの仙人はこの里山にかなり好印象をもったようである。
ご主人様がふるまうシシ鍋をつつきながら、こんな話をしていた。
「イスラム教で説く天国というのは、このような日本の里山のような所を言うのじゃよ。緑の木がたくさん茂る山があり、空気がきれいで、そしておいしい湧き水も出る。野原にはきれいな花が咲き、そして畑では色々な野菜がとれる。四季折々に自然の美しさがある。日本には天国のような里山がたくさんある。」

砂漠の国からきた仙人は、地元富津特産のおいしい大吟醸の杯を傾けながら、天国の世界をさまよい始めた。


コメント
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