地主の気配りのある応接に気分を良くした頼朝は、その地主の屋敷に1週間ほど滞在した。そして夕食が終わると、毎晩サクラと褥(しとね)を共にした。
頼朝は、若い弾むような乳房をいとおしむように優しくまさぐった。戦国の世にあって、明日をも知れぬ我が命が、そのひと時だけは「生きている」と実感できた瞬間であった。
旅立ちの朝、馬上の人となった頼朝は、里山の山桜を眺めながら一首詠んだ。
「『葉桜(はざくら)が、目にまぶしくも、君が里』 サクラ、さらばじゃ!」
膝から崩れ落ちそうになるサクラを、父が必死に抱きかかえた。
それから一ヵ月後、地主の屋敷で急に結婚披露宴が行われた。
花嫁はサクラ、花婿は小作人頭の次男坊の松吉である。松吉は真面目で働き者と村でも評判の若者であった。
そしてその9ヵ月後、サクラは玉のような元気な男の子を生んだ。
ご主人様はそんな夢をまたみたようである。朝の散歩の時に、遠くの山々を眺めながらそんな話を拙者にした。
しかしそのような事が起こった可能性は十分あると拙者には考えられる。
義経伝説にもそれに似た話が残っている。
従って、頼朝の落とし子の末裔が、人知れず生きているという話はまんざら荒唐無稽ではない。
ひょっとすると、あなたの隣人がその血筋の人かもしれない。
しかし、一番可能性が高いのは、この里山の村である。
頼朝は、若い弾むような乳房をいとおしむように優しくまさぐった。戦国の世にあって、明日をも知れぬ我が命が、そのひと時だけは「生きている」と実感できた瞬間であった。
旅立ちの朝、馬上の人となった頼朝は、里山の山桜を眺めながら一首詠んだ。
「『葉桜(はざくら)が、目にまぶしくも、君が里』 サクラ、さらばじゃ!」
膝から崩れ落ちそうになるサクラを、父が必死に抱きかかえた。
それから一ヵ月後、地主の屋敷で急に結婚披露宴が行われた。
花嫁はサクラ、花婿は小作人頭の次男坊の松吉である。松吉は真面目で働き者と村でも評判の若者であった。
そしてその9ヵ月後、サクラは玉のような元気な男の子を生んだ。
ご主人様はそんな夢をまたみたようである。朝の散歩の時に、遠くの山々を眺めながらそんな話を拙者にした。
しかしそのような事が起こった可能性は十分あると拙者には考えられる。
義経伝説にもそれに似た話が残っている。
従って、頼朝の落とし子の末裔が、人知れず生きているという話はまんざら荒唐無稽ではない。
ひょっとすると、あなたの隣人がその血筋の人かもしれない。
しかし、一番可能性が高いのは、この里山の村である。