クロの里山生活

愛犬クロの目を通して描く千葉の里山暮らしの日々

座敷童子現る-2

2014-04-30 22:49:37 | 日記
女人は、6人の会席者全員の野点を終えると、やおら金属製の半円球ボールを持ち出した(直径20cmくらい)。今度は何が始まるのかと庭先から眺めていると、そのボールの縁に小さな木の棒を当て、その棒を縁に沿わせてゆっくりグルグルと回し始めた。するとかすかに音が響き始め、その響きは「ウオーン、ウオーーーン」と次第に大きくなっていった。その音響はとても心地よく拙者の心に響いてきた。そして拙者はいつのまにか寝てしまっていた。

あの不思議な物は、チベット仏教の坊さんが瞑想する時に使うシンキングボールという仏具らしい。それにしてもニンゲン様は心の修行のために色々な事をするものだ。ところが拙者が気持ち良く寝ていると、今度はこれまで聞いたことがない奇妙な音色が聞こえてきたのだ。

その音色は時に草原の大地に吹く風のように、また時には大空を舞う大鷲のように思えた。どうやらそれはモンゴルから伝わってきたホーミーという喉歌らしい。誰がそのような妙な喉歌を唸っているのかと見てみると、案の定あの女人であった。あのような音色を出せる者は不思議なオーラを出すあの女人しかいないだろう。

会席者は、野点のお茶でしばし非日常の世界に誘われ、シンキングボールで瞑想の世界に入り、そしてホーミーで大空を舞った。

しかし、それにしても、とんでもない女人が現れたものだ。ご主人様は、目の前の女人が作り出す不思議な世界にすっかり度肝を抜かれている。

その時、誰かが言った。

「彼女は幸運をもたらす座敷童子(ざしきわらし)なんです」

「なるほど、妖精か・・・。そうであろう。そうに違いない・・・・・・」

ご主人様は呆然とその座敷童子の横顔を眺めていた。
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座敷童子現る-1

2014-04-30 12:45:33 | 日記

昨日、拙者は世にも不思議な音色を聞いた。あのような音色を出すニンゲン様はタダモノではない。拙者の直感がそう言っている。

その女人(にょにん)が来訪したのは昼過ぎであった。約束の時間から2時間以上も遅れているが、和服姿のその客人は、5人の仲間と共に笑顔爽やかに里山に登場した。その登場のしかたからしてタダモノではない。そしてその顔をよくよく見ると、見目麗しき、うら若き女人ではないか。

その女人がタダモノではないことを証明するのは、そのお仲間の方々の御経歴である。驚くことなかれ、まずは初老の天下の東大教授である。そしてその側には妙齢のやり手執事がいる。続いて落ち着いた風情の妙齢の手相占い鑑定士、更にはムッシュと呼ばれるエレクトリック・エンジニアの若者、そして若さ弾ける薬剤師さんという顔ぶれである。

うら若き女人はそのようなお仲間達とこの里山に爽やかに現れたのである。それを迎えるご主人様の胸の高ぶりやいかに。心の動揺を懸命に抑えながらが、まずは威儀を正してお出迎えした。

ご主人様は、昨日まで一生懸命手入れをした屋敷の内外をご案内した後、昨夜から仕込んでおいたタケノコ料理(炊き込みごはん、味噌汁、煮物、酢漬け)とシシ肉の焼肉で里山風情あふれる昼食を供した。庭には鮮やかに咲き誇るツツジが見える。やがて愉快なランチタイムとなった。話は大いに弾んだ。弾むはずである。客人達の経歴からして話題には事欠かない。

それにしても、中心にいるあの女人は何者なのか・・・。拙者にはまだその正体が分からない。

食後、女人は持参したお茶のお点前道具をやおら取り出した。そして茶碗に抹茶を入れて「シャカシャカシャカ」と茶筅で素早くかき混ぜ、十分に泡の立った野点の茶碗をご主人様の前に「どうぞ」と、そっと置いた。
そうか、このうら若き女人は茶道家だったのか。

だがしかし、この女人の身体からは、茶道家ではおさまりきらない、不思議で妖しいオーラが立ち上がっている。

続く・・・・・




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