鈴蘭通り １７

　喫茶ぶらじるを出ると克己と侑香、千草と健二郎は向かい合った。
「じゃ、またなっ」
　確かに鍛えた体で、健二郎は少し芝居掛かった軽い調子で克己に言った。今、変わろうとしている男で、千草のような人が必要何だな、と克己は思った。
「ああ。千草もな」
「・・・何か、ありがとね」
　思わず礼を言ってしまった。何の礼だろう？　千草はだが礼を言えて、満足だった。克己は千草を見ていた。
「金魚は私に任せて下さいっ！」
「そうね」
　侑香が勢い込んでくると、千草は微笑み、それから克己に言った。
「さよなら」
「うん」
　克己は頷き、背を向けて、強く腕を組んできた侑香と共に鈴蘭通りを歩いて去った。