羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

探偵の探偵 1

2015-07-31 21:49:51 | 日記
阿比留は警察を引き連れ工場に突入した。中には玲奈からの? 書類を受け取った窪塚も紛れ込んでいた。事前の手筈では地下室に壊れたPCがあり、マザーボードを取り出し備え付けのオーブンレンジで加熱しハンダを溶かし配線を繋げ、やはり備え付けの冷蔵庫で冷やし水分を拭き取り本体に戻し起動させ、監禁場所の情報を派手に手に入れる演出となっていた。しかし、中へ入ると構内に金属の棒を引き摺る音がする。そのような演出予定は無い!「妹と琴葉が世話になったな!!」突如現れた玲奈は鉄棒を矢吹に降り下ろした!「おいッ! 追え!!」鉄棒を振り回し、構内の暗がりに逃げてゆく玲奈! 窪塚が追い、他の警官も追おうとしたが、計画が狂うことを恐れた阿比留は「騒ぎはまずい、誘拐犯がいるかもしれない」と玲奈を窪塚に任せるよう言い、強引に窪塚以外の警官を予定通り地下室へ誘導した。
PCは確かにあったが、簡単に起動した! 阿比留は素早く部屋を見回した。近くの工具箱が開いている。備え付けのレンジに早足で寄り、開けて中に手を入れ軽く火傷する阿比留!「熱っ」玲奈の仕業だった。「すぐ戻ります」阿比留は急いで地下室を出た! 頭に入っている構内の見取り図通りに素早く移動し、上階に移動した阿比留は誘拐させた幼児を閉じ込めた小部屋の前に来た。中から幼児の泣き声がし、戸を叩いている。幼児までは玲奈に抑えられていないとふんだ阿比留は手下に電話を入れた。
「近付いたら私が発見するから」警官達を近くへ誘導するよう伝える阿比留。電話を切ると玲奈が再び現れた。「現実と小説は違う、筋書きを決める自由なんて無い」「私にはある。役割演技が大事だ。探偵役は難事件を解決する。さしずめ君の役は突然善良な女医を痛め付けるサイコパスってとこかな?」「言いたいことはそれだけ?」玲奈は小部屋の方を促した。
     2に続く

探偵の探偵 2

2015-07-31 21:49:42 | 日記
「なんだよ?」阿比留は小部屋を開けた。中からは幼児を抱えた窪塚が現れた。「刑事役を忘れてるぞ? 今の会話も全て録音した」阿比留は配管の蓋を開け、「お手柄」火を点したライターを投げ入れた。仕込んでいたらしく、瞬く間に配管の先に火が回り、周囲は炎上した! 阿比留が立ち去り、玲奈が追おうとすると、ドォオンッ!! 爆発が起こり、吹っ飛ばされた! 警官達が騒ぎ出す中、玲奈はなんとか起き上がった。幼児は窪塚が庇い無事な様子。窪塚も怪我はしているが、死ぬ程ではなかった。玲奈はコートを被り、阿比留を追った!
玲奈は構内の高所に掛かった簡素な通路で、全て済んだ顔でゆっくり歩いていた阿比留に追い付いた。「しつこい、高いの苦手、もういいだろ?」玲奈は阿比留の身辺データを話し出した。阿比留は父から虐待を受け、母が離婚すると各地を転々として暮らし、誰とも親しくしてこなかった。いつか、阿比留は誰も自分を覚えておらず、過去を偽れると気付いた。「弱い自分を偽り続ける為に権力を欲しているだけの、ただのガキよ」「それで、私を丸裸にしたつもりか?」阿比留は動じず、死神であることも否定した。
「私も一緒に探してやろうか? 君が優秀な探偵だということは理解した」「ふざけないで!」「妹のことになると回りが見えなくなる。君はまんまと掛かり、妹ガールの峰森琴葉を巻き添えにした。全く、可哀想でしょうがないよ」激怒した玲奈は叫び、阿比留に殴り掛かった! 阿比留も鉄の廃材を手に玲奈を殴り付ける! 数発殴られたが、腕を取り柵に当てて廃材を階下に落とし、阿比留の腹を殴る玲奈! 阿比留も掴み返し玲奈の首を締め上げ通路の柵に押し付ける!「高いの苦手なんだよ、死神は君だろ?」玲奈は締め上げる阿比留の親指を握ってヘシ折った! 怯んだ阿比留を殴り、蹴り倒し、
     3に続く

探偵の探偵 3

2015-07-31 21:49:32 | 日記
頭を掴んで膝で顔面を打ち据え、階段から転げ落とした!! 気絶した阿比留を見下ろしていると、傷だらけの窪塚が来た。「大丈夫か? 詳しく事情を聞きたい」玲奈は去ろうとした。「待て! 君も、探偵なのか? 君は、あの子の恩人だ。感謝する」「探偵は、事件なんか解決しない」言い残し、玲奈は工場の陰の向こうへ消えた。
阿比留と矢吹は逮捕されたが、阿比留一味による捜査協力は伏せられ、逮捕して事態の詳細が発覚することを恐れた上層部は玲奈も放置した。阿比留は黙秘を通しているという。また阿比留の留守電を盗聴し、玲奈に反撃の材料をもたらしたのはスマ・リサーチのメンバーの調査によるものだった。「たまには悪くないだろ?」須磨は帰還した玲奈に言ったが、玲奈は上手く反応できなかった。
1ヶ月後、玲奈は桐嶋に促され、控えていた琴葉の見舞いへ出掛けた。病室には笑い声が響き、自分ではなく実の姉の彩音や家族に囲まれ穏やかに養生している琴葉の姿があった。玲奈は病室に入れず、琴葉に貰った妹がくれた物と同じ人形を手に、病院を出た。そこへ須磨から仕事の依頼の電話が入り、「一人で大丈夫か?」と問われると、「一人じゃありません」玲奈はそう答えた。さらに1年後、琴葉の荷物が取り払われた対探偵課で玲奈は働いていた。玲奈は支度を整えると『一人』で出掛けて行った。
とあるアパートに太った男が帰って来た。妙に周囲を伺う男。鍵を開け、雑然としているが探偵用とも犯罪用ともつかない機材や道具の揃った部屋に男は入った。男は素人仕様ではないパソコンの前に座り、作業を始めようとして、その横に玲奈がいることに気付き驚いた! 銀行のキャッシュカードの受け取り先は偽れないことから、報酬の振込先で住所を割り出していた。アパートの鍵などはどうとでもなった。「さすがだな、噂通りの女だ」
     4に続く

探偵の探偵 4

2015-07-31 21:49:24 | 日記
男は小金でストーカー等の悪質な依頼を受け、被害者の居場所を調べる違法探偵で、利益は薄いが、引き換えに料金とは別に依頼主から暴行動画を受け取る変態だった。玲奈は犯罪データを事件を追ってるマスコミに既に送っていた。「自首して」「推理小説の女探偵ごっこか? 情報やるから、黙って去るんだ」「なんの情報?」女を連れ去った依頼人の情報を教えるという。自分以外の複数の同業に獲物の情報を探させているという。常習だ。変質者の名は檜池。「どうだ?」「また来る」玲奈が去ろうとすると、男は引き出しの中のナイフを取り出そうとしたが、処分されていた。それでも「女探偵ごときがッ!」と男は襲い掛かろうとしたが、部屋に置いていたシリコンスプレー? を顔面に吹き付けられ、「ああぁーッ?!!」男は目を押さえてのたうち回った。玲奈は構わず部屋を去った。
「そのストーカーを追うのは対探偵課の仕事ではない。と言っても聞き入れないだろうな」男の言っていた女は3ヶ月程前から失踪している。玲奈は檜池を追えばいつか死神にたどり着けると勢い込んだが、須磨は死神が足を洗っている可能性を指摘した。「それはありません」玲奈は死神の調査報告書には義務の無い会話内容まで細かく書かれていたことを挙げ、「自分の調査能力に酔いしれ、他者との違いに満足している。常軌を逸した行為です! 求められる限りは、今もどこかで誰かを追っているはずです」須磨は玲奈の調査を認めた。
太った違法探偵の男のデータから、檜池は身分を周到に偽り、スマ・リサーチ社にも『次の』獲物の調査依頼をしていた。玲奈は檜池が警戒していることと、まだ調査はしていなかったがスマ・リサーチの別の探偵が檜池を見抜けず、うっかり依頼を受けていなかったことから警察には通報せず、単身で割り出された檜池のアジトに向かった。
目を閉じ、
     5に続く

探偵の探偵 5

2015-07-31 21:49:14 | 日記
何やらスプレーを自分の顔に吹き付ける玲奈。手袋をし、アジトのビルへ入ってゆく!「ビルの管理会社の者です。廊下のメンテナンス工事の件でお伺いしました」インターフォンにそう告げると、檜池はドアを開けた。目が合う。「なんですかアンタ?」ドアを閉められようとすると、玲奈は体当たり! ドア越しに檜池を突き飛ばし、中に入った! 檜池は「ちょっとちょっと!」と普通に止めると見せて即、殴ってきたが玲奈は怯まず膝で檜池の腹を蹴り、顔を殴り飛ばし、目についた奥の部屋へ入った! 檜池は狂暴に唸って追ってこようとしたが、玲奈はドアを閉めた。部屋は散らかっていたが診療室のようでもあり、中央の診療台には傷付いた被害者の女性が括り付けられ、猿ぐつわを噛ませられていた。まだ生きてる!
「開けろォッ! オラァッ!!」外から怒鳴る檜池!玲奈は棚を倒し、即席のバリケードを作り、棚や冷蔵庫から使えそうな物を探した!! 医療用メス、クエン酸、液状ヘパリン、ヒスタミン剤、納豆! 檜池がドアから押し入り出す中、玲奈は全てをメスで混ぜ合わさせた! これで刺すと血が止まらず激痛を与えられる!! 檜池が部屋に入って来た!「テメー、ぶっ殺してやる!!」玲奈は襲い掛かってきた檜池の肩口に混ぜた全てを塗ったメスを突き刺した! メスを抜くと滝のように尋常ではない出血&激痛!!「アウッ?! アアアアァッ!!!」喚き散らしながら檜池は部屋から逃れて行った。
玲奈は「もう大丈夫だから」と被害者の拘束を解き、110番に掛け、被害者に「助けて」と一言、言わせた。玲奈は「私のことは忘れて」と言い、被害者体にに布を被せて部屋を出た。檜池の資料を探る玲奈。その中から、死神と同じ仕様の『調査報告書』を見付けた! と、外で大きな物音がした。玲奈は『調査報告書』を鞄に入れ、部屋を出た。大量の血痕を追うと、
     6に続く