羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

とと姉ちゃん

2016-06-11 12:04:42 | 日記
 山門の辺りまで星野に送ってもらってきた常子。大阪の人々は言葉が荒いので一人では心細い等と話し出す星野に常子は笑ってしまった。「まさか、それが理由で結婚をしたかったんですか?」「違います!」慌てる星野だったが、ずっと思い詰めていた常子が笑ってくれたことに安心していた。「自分のことは後回しにして、御家族の為に走り回る常子さんだから、恋に落ちたんです。この辺でお別れしましょう」星野は改まって言った。「さようなら、お元気で」笑顔で続ける星野。「さようなら」笑顔で応える常子。二人はそのまま擦れ違い、常子が一度振り返ると、既に山門に星野の姿は見えなかった。
 二週間後、出征する青年達が目立つ駅のホームで同じ帝大生に見送られて電車に乗り込む星野。辺りを見回すが常子の姿は無い。発車した電車の中で常子のことを思い出していると前の座席で仲のよい家族連れを見て微笑む星野。と、電車が川の上に差し掛かると川原に常子がいた。「すみません」立ち上がって車窓を開ける星野。「常子さん! 常子さんっ!」帽子を振って叫ぶ星野を常子は見詰め、一礼した。それ以上は叫べなくなる星野。顔を上げ、泣かずに電車を見送る常子。
 帰って二階に上がった常子を追って君子が部屋に入ると常子は竹蔵の遺影の前にいた。星野とのことを打ち明ける常子。「とととの約束は関係ありません。私は今、美子とも鞠子ともかかとも、離れたくありません。でも、やっぱり辛いものですね」涙を堪える常子を君子は抱き寄せた。「こいしてやれば、誰にも聞こえないわ」君子がそう言うと、常子は声を上げ、すがり付いて泣き出すのだった。
・・・家長縛りを差し引いても、大阪でも働いて仕送りするという選択を思い付かない常子もまだ子供なんだろうね。

最新の画像もっと見る