写真・「決議」労働者大会1926.12.4
健康保険ストライキ 1926年の労働争議(読書メモ)
参照
「日本労働運動史年表第1巻明治・大正編」青木虹二
「日本労働組合評議会の研究」伊藤晃
健康保険ストライキ
1926年度の争議の原因で注目される一つに健康保険ストライキがある。健康保険法実施に伴い次年1月より労働者に課せられる強制的保険料に反発した争議である。労働者が職場でケガや病気になるのは会社の過酷な労働に原因がある。健康保険法は欺瞞政策の典型だとして、資本家が保険料を全額負担するのが当然だと、主に評議会に属する組合において健康保険料会社全額負担を要求したストライキが続いた。日本紙業株式会社(東京)、東京銅鉄家具製作所(東京)、浅野セメント株式会社(東京)、日本鑄造株式会社(東京)、旭紡績仙台工場、旭ガラス牧山工場(福岡)など以下の健康保険争議の主な一覧でみるように全国で果敢にたたかわれた。争議の多くは、保険料全額会社負担を実現することはできなかったが(不貫徹)、工場内の怪我や病気に対する本質的、根本的視点を全労働者に提起する大変意義のある闘いであった。
健康保険争議の主な一覧
8月11日~17日 東洋紡績三軒家工場争議(大阪)800名 10数項目の要求の筆頭に「運送部員に工場法を適用(健康保険負担金は会社が全額払う)されたし」がある。評議会と総同盟の共同戦線争議
11月10日~1月28日 浅野セメント深川工場争議(東京深川) 407名 明年1月の保険法施行につき、保険料全額会社負担・賃上・定期昇給要求しスト、不貫徹。評議会・東京合同労働組合
11月16日~12月8日 旭ガラス牧山工場争議(福岡) 286名 割増奨励金と保険料全額会社負担を要求しスト、30名解雇、不貫徹
11月20日~ 日本紙業会社争議(東京四谷)198名 明年1月の保険法施行につき、保険料全額会社が負担せよとスト、妥結。評議会・出版労働組合
11月25日~ 五十嵐自転車製造工場争議(東京本郷) 健康保険料の紛争による工場休業反対でスト。評議会
11月25日~ 秀英舎争議(東京市ヶ谷)数百名 健康保険料全額会社負担を要求、妥結。幹部12名の解雇。評議会・出版労働組合
11月30日~ 東京鋼鉄家具製作所争議(東京豊島) 260名 健康保険料全額会社負担を要求、妥結。評議会・関東金属労働組合
12月3日~5日 日本紙業大阪工場争議(大阪東成区)100名 健康保険料区分をめぐり紛争、妥結。評議会・大阪金属労働組合
12月4日 東京時計会社争議(東京目黒) 健康保険料全額会社負担を要求、妥結。 評議会・関東金属労働組合
12月9日~10日 日英自転車製造会社争議(神戸市)30名 健康保険料全額会社負担を要求、不貫徹。 評議会・神戸地方評議会
12月9日~11 塚本ガラス工場争議(仙台市)35名 健康保険料全額会社負担、賃上げ、年2回の昇給、工場法の厳重適用などを要求、妥結。評議会・仙台一般労働組合
12月10日~17 旭紡績会社仙台工場争議(宮城)17名 健康保険料全額会社負担と4名の解雇撤回要求でスト、不貫徹
12月11日~12日 ライセッドサドル会社争議(兵庫)30名 健康保険料全額会社負担要求、不貫徹。総同盟・神戸機械労働組合
12月20日~22日 ダンロップゴム会社争議(兵庫)51名 健康保険料全額会社負担要求、不貫徹。評議会・ダンロップゴム工組合・神戸金属労働組合
12月24日~2月28日 池貝鉄工所争議(東京芝区三田) 269名 健康保険料全額会社負担、賃上要求、不貫徹。自由連合・東京機械工組合
12月25日~26日 日本鋳造会社争議(神奈川)162名 15名の解雇反対・健康保険料全額会社負担要求、不貫徹。評議会・関東金属労働組合
12月中旬 池貝鉄工所分工場争議(東京芝区本芝)215名 健康保険料全額会社負担要求、不貫徹。自由連合・東京機械工組合
12月21日~22日 東亜エナメル会社争議(兵庫)20名 健康保険料全額会社負担要求、不貫徹。 評議会・神戸地方評議会
12月22日~28日 大和田紡績今福工場争議(大阪)7名 健康保険料全額会社負担要求で解雇。解雇手当要求し妥結。評議会・鯰江支部
12月29日~2月19日 東出鉄工会社争議(兵庫)102名 健康保険料全額会社負担要求、妥結。
12月31日 能登製作所争議(京都) 健康保険料全額会社負担要求、妥結。 評議会・加左郡木材組合