「当時の争議団の職場ビラ・地域ビラ」合同紡績株式会社天満支店労働争議から―1928年の労働争議(読書メモ)
参照・協調会史料
職場ビラ「合同紡績の同志諸君」
合同紡績の同志諸君!
争議団に参加せよ!
この問題は人のことではない。皆諸君の為だ。今まで諸君は会社のために虐使されていたではないか!
会社の重役などは豪奢な生活をしているではないか。
夏は山に海に温泉に。(妾)を二人も持っているではないか。社長の娘など絹の着物を着たり、こんな豪奢な生活は誰がさしているのだ。
会社の重役や上役は、なぜ我々を虐使するのか。皆我々の肉の一片が欲しいのだ
早く我が労働組合の旗下に集まれ!
争議団に加入して資本家と戦え!
横暴なる会社をやっつけろ!
大阪紡織労働組合
天満合同争議団
職場ビラ「全従業員諸君 争議団は大きくなるばかりだ!」
「全従業員諸君 争議団は大きくなるばかりだ!」
・・・・階級的良心を持つ労働者だったら皆争議団に来るべきだ
皆来て加われ! 早く来なければ従業員全部の裏切者となるぞ
我らと一緒になって会社をたたきつけろ!
大阪紡織労働組合合同紡争議団本部
職場ビラ「女工さんにお知らせ」
女工のみなさん!
・・・皆さん! 社長や重役工場長などは皆さんが養っているのだ。
もし会社の役付が偉そうに言っても決して恐れることはありません。
もし皆さんをいじめたら直ちに組合の人に言ってきてください。
組合は皆さんの味方です。
合同紡天満工場争議団本部
職場ビラ「兄弟もう一息だ頑張ろう」
・・・・会社は相変わらず惨虐と頑迷なる態度を持賊している。
諸君はぼんやりしていてはならぬ
裏切者になるな
女工さんですら、会社の出様によってはいつでも罷業をやると言っている
今一息だ! 一人の裏切者もなく全部が頑張れ!
合同紡罷業団
地域ビラ「町民諸君に訴える!」
町民諸君に訴える!
親愛なる町民諸君!
・・・・合同紡績は日本中でも有名なほど無茶と乱暴をもって職工を取り扱うところはないのです。女工の対する上役の態度など全く聞くに堪えない犬か猫のごとき行為をなさしめるなどの噂はすでに諸兄のご承知のことと思います。労働条件にしましてもここほど悪い工場はありません。
・・・・なんら理由がなく職工をクビ切って一文も手当をださず、また・・・色々言いがかりをつけて解雇するなど実に言語を絶した無茶を続けて、・・・・。
町民諸君! 吾々は長い間会社の乱暴を忍び続けてきた。しかし、最近の会社の態度にはもう我慢がしきれなくなったのです。
諸氏よ! どうか我々の悲惨な事情を重々御了察くださいまして今後絶大の御援助をお願いします。
合同紡天満工場争議団
応援総同盟大阪紡織労働組合
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合同紡績株式会社天満支店労働争議(1928年8月20日~9月4日)
参照・協調会史料
大阪の合同紡績株式会社天満支店工場ではひそかに総同盟大阪紡績労働組合の組織化が進められていた。その数は今や50余名に達した。労働組合を極端に嫌悪する谷口社長は機会があるごと組合員をクビにしてきたが、その都度多少の騒ぎにはなっても大きな争議にはならなかった。しかし今回、8月20日、突然会社は部長大利万吉に暴行を加えたとでっち上げた理由で、一人の組合員松尾秀造を解雇してきた。現場の労働者は憤激し抗議の声を挙げた。すると会社は抗議の声を挙げたうち2名を主謀者だとして更に解雇してきた。職場の46名の労働者はこの3名の解雇に怒りを爆発させた。
争議参加46名 総同盟大阪紡績労働組合
(要求書)
1928年8月28日
一、深夜業撤廃に関する件
(イ)深夜業廃止に伴い労働時間を8時間とすること
(ロ)解雇者を出さないこと
(ハ)賃金を値下げしないこと
二、夜勤手当支給の件
夜勤手当として2割を支給すること
三、皆勤賞与支給の件
夏季は一ヶ月につき6日分、冬季は4日分を支給すること
四、各部男女工歩増の件
五、指定下宿に関する件
指定下宿者に通勤手当として寄宿舎と同額程度の手当を支給すること
六、社宅住者と寄宿住者の食費を同額とすること
七、従業員の湯銭を撤廃すること
八、作業に関する件
男工の行うべき作業を女工に行わさないこと
九、副食物に関する件
副食物を改善すること
十、消耗品に関する件
消耗品は作業に支障を与えないように支給すること
十一、人事に関する件
(イ)草?舎監を排斥すること
(ロ)部長大利万吉を排斥すること
十二、社宅賃の値下げの件
十三、松尾秀造を復職させること
十四、今回の争議で犠牲者を出さないこと
(会社)
会社はますます攻勢に出て来た。8月29日更に組合員8名を解雇してきた。その日の午前10時、組合は現場監督の隙をみて工場内のベルトコンベアーを止めようとした。9月3日組合員一同は正門前に押しかけ、その場で曽根崎警察署員に検束された。
(解決)
9月4日、大阪府特高課労働係は、御大典前の争議を一日も早く解決させようと曽根崎警察署長とともに労資間を急いで行き来した結果、解雇された11名に諸手当と同情金として金参千円を支給すること等で解決した。
以上