百人一首の和歌の原文・現代訳・英訳を紹介します。「18」
※英訳については、1909年にWilliam N. Porterが書いた百人一首の本
『A HUNDRED VERSES FROM OLD JAPAN』を参照しています。
和歌番号018
作者:藤原敏行朝臣
author of waka:THE MINISTER TOSHI-YUKI FUJIWARA(FUJIWARA NO TOSHI-YUKI ASON)
原文
住の江の 岸に寄る波 よるさへや 夢のかよひ路 人目よくらむ
(すみのえの きしによるなみ よるさへや ゆめのかよひぢ ひとめよくらむ)
現代訳
住の江の岸に打ち寄せる波のように (いつもあなたに会いたいのだが)、 どうして夜の夢の中でさえ、あなたは人目をはばかって会ってはくれないのだろう。
英訳
TO-NIGHT on Sumi-no-ye beach
The waves alone draw near;
And, as we wander by the cliffs,
No prying eyes shall peer,
No one shall dream we're here.
Toshi-yuki, who lived A.D. 880-907, was an officer of the Imperial Guard, and a member of the great and influential Fujiwara family. This family rose into power in the reign of the Emperor Tenchi, and became almost hereditary ministers-of-state. For a long period the Emperors chose their wives from this family only, and to this day a large number of the Japanese nobility are sprung from the same stock. Sumi-no-ye, or Sumi-yoshi, is in the Province of Settsu, near Kobe.
Note the word yoru used twice in the first instance as a verb, meaning 'to approach' and in the next line meaning 'night'. The illustration shows Toshi-yuki walking on the beach, and evidently waiting for the lady to join him.
解説
藤原敏行朝臣(ふじわらのとしゆきあそん・? ~902,907?)は、清和、陽成、光孝、宇多、醍醐の五朝に仕えていますが、陸奥出羽の按察使・富士麻呂の子とも言われています。
藤原敏行は藤原公任が選んだ三十六歌仙のひとりに名前が挙げられていて、平安時代の優れた歌人で、『古今集』にある「秋きぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる」もよく知られている和歌のひとつです。
また、藤原敏行は歌人であると同時に書道にも優れ、空海に並ぶと言われるほどの書道の大家でもありました。
世俗の身でありましたが、(書をよくしたので)「請われるままに写経をしたので地獄に送られた」などという話も、「今昔物語」や「宇治拾遺集」に残されています。
この和歌は敏行の恋心を詠ったものですが、御所で開かれた歌会の折、思いを寄せる女性を思い出して詠まれたと言われています。
「人目よくらむ」は「人目を避けようとしている」というような意味ですが、この主語は明記されていないので、「私」とも「あなた」とも取れるつくりになっています。
「私」を主語としたなら、「夢の中でさえ、人目をはばかってしまう(気の弱い)わたし」というようにも解釈できます。
★おススメ本★
本書は「平成和歌所」のウェブコンテンツ「一人十首の歌人列伝」を再編集したものです。
http://wakadokoro.com/
厳選した百人一首歌人の「おもしろエピソード」と「十首の秀歌」を分かりやすく解説した読み物は、幅広い層の和歌ファンに人気を博しました。
これを読めば「はるか昔にいた正体不明のオジサン」だった歌人たちが、グッと身近に感じられることでしょう。
そして本書を読み終わった後、あらためて百人一首を一番から眺めてみてください。
王朝の歴史絵巻が紐解かれ、つまらなかったあの百首歌たちが息吹を宿し、断然おもしろく感じられるはずです。
※読みやすい文字サイズ&文章で、約200ページがあっという間に読み終わります!
※英訳については、1909年にWilliam N. Porterが書いた百人一首の本
『A HUNDRED VERSES FROM OLD JAPAN』を参照しています。
和歌番号018
作者:藤原敏行朝臣
author of waka:THE MINISTER TOSHI-YUKI FUJIWARA(FUJIWARA NO TOSHI-YUKI ASON)
原文
住の江の 岸に寄る波 よるさへや 夢のかよひ路 人目よくらむ
(すみのえの きしによるなみ よるさへや ゆめのかよひぢ ひとめよくらむ)
現代訳
住の江の岸に打ち寄せる波のように (いつもあなたに会いたいのだが)、 どうして夜の夢の中でさえ、あなたは人目をはばかって会ってはくれないのだろう。
英訳
TO-NIGHT on Sumi-no-ye beach
The waves alone draw near;
And, as we wander by the cliffs,
No prying eyes shall peer,
No one shall dream we're here.
Toshi-yuki, who lived A.D. 880-907, was an officer of the Imperial Guard, and a member of the great and influential Fujiwara family. This family rose into power in the reign of the Emperor Tenchi, and became almost hereditary ministers-of-state. For a long period the Emperors chose their wives from this family only, and to this day a large number of the Japanese nobility are sprung from the same stock. Sumi-no-ye, or Sumi-yoshi, is in the Province of Settsu, near Kobe.
Note the word yoru used twice in the first instance as a verb, meaning 'to approach' and in the next line meaning 'night'. The illustration shows Toshi-yuki walking on the beach, and evidently waiting for the lady to join him.
解説
藤原敏行朝臣(ふじわらのとしゆきあそん・? ~902,907?)は、清和、陽成、光孝、宇多、醍醐の五朝に仕えていますが、陸奥出羽の按察使・富士麻呂の子とも言われています。
藤原敏行は藤原公任が選んだ三十六歌仙のひとりに名前が挙げられていて、平安時代の優れた歌人で、『古今集』にある「秋きぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる」もよく知られている和歌のひとつです。
また、藤原敏行は歌人であると同時に書道にも優れ、空海に並ぶと言われるほどの書道の大家でもありました。
世俗の身でありましたが、(書をよくしたので)「請われるままに写経をしたので地獄に送られた」などという話も、「今昔物語」や「宇治拾遺集」に残されています。
この和歌は敏行の恋心を詠ったものですが、御所で開かれた歌会の折、思いを寄せる女性を思い出して詠まれたと言われています。
「人目よくらむ」は「人目を避けようとしている」というような意味ですが、この主語は明記されていないので、「私」とも「あなた」とも取れるつくりになっています。
「私」を主語としたなら、「夢の中でさえ、人目をはばかってしまう(気の弱い)わたし」というようにも解釈できます。
★おススメ本★
A Hundred Verses from Old Japan: Being a Translation of the Hyaku-Nin-Isshiu | |
Tuttle Pub |
図説 百人一首 (ふくろうの本/日本の文化) | |
河出書房新社 |
百人一首の歌人列伝(業平、定家に西行…人気二十歌人の面白エピソードと代表歌を知ろう! ) | |
歌林苑 |
本書は「平成和歌所」のウェブコンテンツ「一人十首の歌人列伝」を再編集したものです。
http://wakadokoro.com/
厳選した百人一首歌人の「おもしろエピソード」と「十首の秀歌」を分かりやすく解説した読み物は、幅広い層の和歌ファンに人気を博しました。
これを読めば「はるか昔にいた正体不明のオジサン」だった歌人たちが、グッと身近に感じられることでしょう。
そして本書を読み終わった後、あらためて百人一首を一番から眺めてみてください。
王朝の歴史絵巻が紐解かれ、つまらなかったあの百首歌たちが息吹を宿し、断然おもしろく感じられるはずです。
※読みやすい文字サイズ&文章で、約200ページがあっという間に読み終わります!