魚鳥木、申すか?申さぬか?

ぎょ・ちょう・もく、申すか?申さぬか?
申す!申す! 魚⇒ニシキゴイ。鳥⇒ニホンキジ。木⇒制定無し、花は桜と菊

百人一首の和歌の原文・現代訳・英訳を紹介します。「19」

2017年12月10日 | 百人一首
百人一首の和歌の原文・現代訳・英訳を紹介します。「19」

※英訳については、1909年にWilliam N. Porterが書いた百人一首の本
『A HUNDRED VERSES FROM OLD JAPAN』を参照しています。

和歌番号019 
作者:伊勢
author of waka:THE PRINCESS ISE(ISE)

原文
難波潟 短かき蘆の 節の間も 逢はでこの世を 過ぐしてよとや
(なにはがた みじかきあしの ふしのまも あはでこのよを すぐしてよとや)

現代訳
難波潟の入り江に茂っている芦の、短い節と節の間のような短い時間でさえお会いしたいのに、それも叶わず、この世を過していけとおっしゃるのでしょうか。

英訳
SHORT as the joints of bamboo reeds
 That grow beside the sea
On pebble beach at Naniwa,
 I hope the time may be,
 When thou ’rt away from me.

The Princess Ise was the daughter of Tsugukage Fujiwara, the Governor of the Province of Ise; hence her name. She lived at the Imperial Court, and was the favourite maid of honour of the Emperor Uda, who reigned A.D. 888-897. She was noted for her talents and gentle disposition, and was the mother of Prince Katsura. Naniwa is the old name of Osaka. The picture shows the Princess on the pebble beach at Naniwa, and to the left are the bamboo reeds.

解説
 伊勢(いせ・貞観17年頃~天慶元年頃 / 875?~938年?)は平安時代初期の人で、伊勢守・藤原継蔭の娘で、宇多天皇の后・温子様に女官として仕えていました。
 後に天皇の寵愛をうけて御息所(みやすんどころ)とも呼ばれました。

 伊勢は皇子を出産しましたが、敦慶親王や后の弟である藤原仲平にも愛されるなど、伊勢は容貌や心情の美しい女性だと伝えられているだけでなく、和歌にも優れ、藤原公任が選んだ三十六歌仙の一人にも数えられています
 小野小町に次ぐ女流歌人として、「古今集」などの勅撰集にその和歌が伝えられていますが、娘の中務も伊勢の才能を受け継ぎ、三十六歌仙に名を残しています。

 伊勢は仲平と愛し合っていましたが、仲平は心を移していて「忙しくてお会いすることができません」というような手紙を出しました。
 この和歌は、その手紙に対して詠まれたものだと言われていますが、伊勢の素直な胸の内がよく伝わってきます。
 自然の情景を詠んだ前半部と、自分の気持ちを詠んだ後半部とを、「節の間」で巧みにつなぎ合わせていて、激しい恋心を詠んでいるにもかかわらず、その切なさが感じられる和歌になっています。




★おススメ本★  

A Hundred Verses from Old Japan: Being a Translation of the Hyaku-Nin-Isshiu
Tuttle Pub


図説 百人一首 (ふくろうの本/日本の文化)
河出書房新社


百人一首の歌人列伝(業平、定家に西行…人気二十歌人の面白エピソードと代表歌を知ろう! )
歌林苑


本書は「平成和歌所」のウェブコンテンツ「一人十首の歌人列伝」を再編集したものです。
http://wakadokoro.com/

厳選した百人一首歌人の「おもしろエピソード」と「十首の秀歌」を分かりやすく解説した読み物は、幅広い層の和歌ファンに人気を博しました。
これを読めば「はるか昔にいた正体不明のオジサン」だった歌人たちが、グッと身近に感じられることでしょう。

そして本書を読み終わった後、あらためて百人一首を一番から眺めてみてください。
王朝の歴史絵巻が紐解かれ、つまらなかったあの百首歌たちが息吹を宿し、断然おもしろく感じられるはずです。

※読みやすい文字サイズ&文章で、約200ページがあっという間に読み終わります!
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