かつて注がれた無上の愛に気づくとき

季節は必ず巡るんだなぁと、
そんなことを思いました。

小さな種も、こんな小さな粒だけれど、
寒い季節に渇いた土に落ちたとしても、

やがて雨が降り、
温かな風が吹くようになったら、
種は芽吹いていきます。

そうして、小さな苗も、
幾多の年月が過ぎ、成熟して行ったら、
花をつけ、実をつけます。

種はちゃんと
自分が今何をする時期なのか知って、
必然のタイミングで、
必然の姿になっているのですよね。

けれど私たち人間は、
しばしばその必然の時というのを
見失って、我欲で的外れなタイミングで
花を咲かせたがったり、甘い果実を
収獲したいと望みます。

ハウス栽培とか、様々な工夫をして
通常とは違ったタイミングで
望みの状態を手に入れるというのも
ありますが、

どんなに調整をしたとしても、
いずれにせよ、種のプログラムが
発動していく時間は、完全には
省略できません。

そこは忍耐強く、可能性を信じて
世話をしていく必要はありますね。

自分や他者の可能性の種も同じで、
芽吹かないんじゃないかとか、
育たないんじゃないかという不安と
闘いながら、

それでも未来を信じて、
今目の前のこの状態と対話しつつ、
忍耐強く向き合っていく。

最初はどれだけ水をやっても
うんともすんとも言わないかも
しれないけれど、

外から見て、何ら変化が見られなくても、
種の中では神秘的な変化が着々と
起こっているかもしれないのです。

だから、今できることに手を抜かず、
向き合い続けていきましょう。

今注いだものが、必ずしも
数か月後に結果が出てくるわけでは
ないかも知れないけれど、

たとえそれが今生では実を結ばず、
来世になるとしても、
それでも、今この時に自分が注いだものは、
無意味ではないのです。

幾世も越えて、自分が注いだものが、
あるいは、誰かが注いでくれたものが、
いつかのタイミングで、
その種が成熟したときに、
見事な花を咲かせ、
実をつけるかもしれないのです。

今、あなたが何事かを成しているのだとしたら、
また、何も成していないと思っていて、
けれども今ここで生きているのだとしたら、

それはいつぞやの時代に、
誰かがあなたのために注いでくれたものが
実った結果ではないでしょうか。

遠い時空を越えて、
あなたの可能性を信じて、
忍耐強く、寛容に、様々な栄養を、愛を
注いでくれた存在がいなかったと、
言えるでしょうか。

奇跡のような愛を受け取って、
あなたは今、ここにいるのです。

そんな愛を注がれていても、
未熟だった当時はそれに気づけず、
うまく受け取れないどころか、
唾を吐くようなこともしたかもしれません。

それでもなお、その存在は
そんな未熟さをものともせず、
忍耐と寛容さで赦し、
ときには峻烈な厳愛をもって、
妥協なく、真剣に向き合ってくれていた
のかもしれません。

そうまでして注いでくれたものが、
必ずしも報われるわけではないと
知りながら、それも厭わずに。

そんな無条件の、無上の愛を注がれながら、
無自覚にそれを踏みつけつつ、
私たちは今、ここにいるのです。

その愛に、本当に気づけたのなら、
やっとそこまで感性が成熟してきた
ということだし、

かつて、無条件に愛を注いでくれた存在の
その尊い自己犠牲が報われた、まさに
その瞬間が訪れたということなのです。

自分や他者の可能性を信じるということは、
投資のように、確実なリターンを計算して
するようなものではありません。

信用と信頼は似て非なるものであるように、
信頼には、目先ではなく、損得でもなく、
何かもっと違うレイヤーの温かな眼差しが
ありますよね。

そういう眼差しが、固い可能性の種を起動させ、
育むんですね。

自分にかつて注がれた無上の愛に気づいたら、
今度は自分がそれを誰かに注ぐ番です。

こうして、無限の恩送りが続いていくんでしょうね。

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