北へ…

ごらんあれが竜飛岬 北のはずれと
見知らぬ人が指をさす～
息で曇る窓の硝子 拭いてみたけど
遥かに霞み見えるだけ～

　　　　　「津軽海峡冬景色」阿久悠

そんな旅情に浸るのは 僅か一瞬夢のうち
船の中に乗り込めば　トラック運転手達と
風呂の取り合い 取られ合い…

音のある風景…

シャッターの下りたさくら野デパート前で
その人はギターを弾いていた…
ギターに書かれた「東北魂」の黒い文字
それをその人は
自分の一番好きな言葉だと言った…

通過駅…

やがて開通する北海道新幹線
その大工事が
超特急の速さで進んでいる…

折角青森まで繋がったものを
それが道南まで延びてしまえば
ここはただの通過駅になると
その人は言うけれど
更に札幌まで延びてしまえば
そこもまた、通過駅だ…

そういう事情を
都会の人は知らないだろと
東京人のふりをしている僕に
みんなが言う…

優しい声…

「ご飯はもう食べましたか？」
「何かお困りな事は無いですか？」
突然、声をかけられ
意味も分からず能面顔で聞いていると
まさかのまさかのホームレス支援者…

端から見れば
僕も到頭そのレベルに達したかと思うと
特に哀しくも無く別に嬉しくも無く…