Wind Letter

移りゆく季節の花の姿を
私の思いを
言葉でつづりお届けします。
そっとあなたの心に添えてください。

冬の風

2016-02-11 16:48:02 | 詩作品
 
 

 

裸木は風に巻かれ

風は力むことなく

冬の輪郭をはっきりさせ

走り抜けていく

 

家ではストーブが燃え

母が眠りつづけている

顔が小さくなり

人間界の言葉をたくさん忘れ

時間が絡まって

いくつもの糸車がまわりだしている

 

こごった糸は直せないが

瑠璃色の母の記憶のいくつかを

意識の光になれるように

思い出させてあげたい

母の岸辺の一番近い場所で

嫁いだ三十年の年月のトレモロは

存在の重さで共鳴している

 

冬空はどんよりと沈黙し

久しく咲かなかった

アロエの花が

母の魂の色のように咲いている

 

隙間から吹いてくる風は

小さな渦になって

私の体内を冷たくかけぬけていった

 

冬の景色が

額縁になったガラス窓の向こうで

黙って座っていた

 
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