高安ミツ子
夏空のもとテントウムシを見せてくれた
お隣の幼子の
片言交じりの言葉は胸を熱くしていきました
語りすぎない
生きることの澄んださえずりのように
猛暑の夏
私に麦わら帽子をかぶせてくれたようでした
急に 夏と秋の境界線を引くように
台風が運んできた秋風は
入道雲をイワシ雲に変わらせ
雨や風を伴い
足早に彼岸花を咲かせていきました
夏の忘れ形見のように痛んで咲いている花々は
秋の声に包まれだし
ススキも穂が出
吾亦紅 アメジストセイジーが鮮やかな色になり
痛んだ水引は秋色に染まっていきました
彼岸を迎えおはぎを作り
仏様にあげて手を合わせ
掛け軸も秋草に変えたとき
ふと
歳月には慈悲があることに気づかされました
人に会うことが少なくなった日々
庭の花々と私は
過ぎ去った家族の嵐や凪いだ海のできごとを
まさぐりながら
心静かに蘇らせています
そして それらは
初秋の組曲となって私を穏やかに包んでいます
お隣からお母さんと呼ぶ幼子の声
秋は深まっていくようです