Wind Letter

移りゆく季節の花の姿を
私の思いを
言葉でつづりお届けします。
そっとあなたの心に添えてください。

6月の詩作品 「鶯のさえずり」

2023-06-16 16:38:55 | 詩作品

                                            

                                                                                                                      高安ミツ子


   

 

 

      日常の図柄を弱くしたコロナの暴走は

      生活様式をがらんと変えてゆきました

      そんな折 孫とのリモート授業が始まりました

      笑って映る孫のパソコン映像には救いがあり

      頼まれた時間は一輪の花をみる楽しさでした

 

      あなたの学校生活でもコロナの影が歩いていましたが

      今日の出来事をあなたは若さの早口で話します

      数学の授業は後回しにして

      ばあばは今日の出来事を聞いています

      育ちゆくあなたとの最後の時を感じますが

      いっぱい いっぱい聞いて

      庭に咲く花と一緒に花瓶に飾ることにしました

 

      少しの間二人で会話遊びしましょうよ

      正二十面体の中に潜り込み転げまわりましょうか

      止まることのない時間を感じますが

      それでも 雨上がりに見つけた木苺を

      二人でつまんだような気持になるのです

      思い出歌を口ずさみ

      紡いだあなたとの三年間は風のようでした

      そして命の重なりを感じ

      ばあばは死ぬことが怖くなくなりました

      ようやくコロナからの出口が見えたころ

      あなたは念願の高校生になりました

 

      川向うの桜並木をあなたが歩いていきます

      川のこちら側では老木の桜が咲き

      心地よかった『あのね おばあちゃん』が蘇り

      春愁の風に吹かれています

      あなたの旅たちを祝うように

      今日のばあばは鶯のさえずりを真似ました



          

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「私の四季」 6月の紫陽花

2023-06-02 12:34:12 | 花物語

 

 雨に濡れた紫陽花は6月の庭をゆっくりとやさしい風景にしてくれています。
梅雨の季節に咲く紫陽花は色も鮮やかで、そのみずみずしさは心の底に眠っている思いが
蘇ってくるような気持にさせてくれます。抒情があってとても人の心をひきつける花だと
思います。美しい花を見た感動はなかなか言葉にはなりません。「ああ」とか「うわあ」
とかそんな言葉が最初に漏れます。しばらくして花物語や花言葉やそれぞれの人生と重な
っていくように思えるのです。紫陽花の青は人の物語を吸い込んでくれるような色合いに
思えるのは私の感情移入の多さでしょうか。
江戸時代オランダ商館の医師として日本に来た「シーボルト」もこよなく紫陽花を好み,
本国に帰り、紫陽花の花の命名に関して、シーボルトの日本人妻であった方の名前を付
けようとしたとも聞いたことがあります。それほど紫陽花を愛でる人は多いのかもしれ
ません。
 まさしく日本の風土に似合う花の一つであると思えます。ですから水彩画や日本画に
適した素材ともいえましょうが、残念ながら私には描く才は有りません。
今年も我が家の庭にはたくさんの紫陽花が咲きました。自画自賛でしょうが紫陽花祭り
たけなわと申せましょう。仏壇をはじめ家じゅう紫陽花を飾り紫陽花づくしの時間を私
は楽しんでいます。また、我が家を訪ねてくださった知人や友人と紫陽花を眺めながら
共有できる語らいにうれしさを感じています。
紫陽花(額紫陽花)は日本が原産であり、やがて西洋にわたり改良された紫陽花が逆輸
入されたものが西洋紫陽花だそうです。近頃は紫陽花の改良が進み多種の種類が店頭に
並んでいます。どちらかというと、私は額紫陽花や青や白の色彩で咲く従来の紫陽花が
好みです。
 また、紫陽花の咲くころから日ごとに緑が深まり、梅の実が育ってゆきます。今年も
我が家の枝垂れ梅もたわわに実を付けました。晴れ間を見ながら梅をもぎ、自家製の梅
ジュースや梅干しを作る時期となりました。
 家の前にある公園の樹木からは四十雀が「スピッツ スピッツ」と囀る心地よい空間
に包まれて紫陽花は今年も鮮やかに咲いてくれました。毎朝紫陽花を見ることで、老い
への道すがら思い出を重ねながら立ち止まれる喜びを味わっています。
                         
                            (2023.6.2)


 

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