高安ミツ子
冬の寒さにむずかっていた光に
くすぐられたように
紅梅の蕾は2月の風に咲き始めました
余った寒さを余白にして
蜜を求めるメジロのうぐいす色の翼と紅梅は
春の訪れの近さを私に知らせてくれました
今日の紅梅は
幼子がふふふふと笑ったように
青空いっぱい満開に咲いています
鮮やかな紅梅のまぶしさに
義姉がみまかり もう1か月が過ぎたことが蘇り
消えることの重さを感じながら
気配を捜すように散っていく花弁を見つめています
幼いころ生母を失い
姉が抑えていた悲しみが紅梅の花びらにあてどなく
見え隠れているようにも思えますが
義姉の命の終わりを
明るく頑張った人生であったと讃えているようにも思えるのです
別れの寂しさが その姿が思い出されます
義姉のすべてを分かっていたわけではないけれど
もう聞くことはできない義姉の声が
浅春を巡っています
浅春の日差しに包まれていると
遠い山や海や空から運ばれる風の音から
人への懐かしさを受け取ろうと思えてくるのです
紅梅を見上げて「ほらね」 「きれい」と
聞こえてくる母と幼い子の会話は
生命の再生があるようにも思えてきます
義姉との別れも日常の連続に飲み込まれ
人生の便りになって私の心の影となっていくのでしょうか
2月の風は拾える光彩を集めて
私の歩む道を示しています