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演劇「マクベス」を観る

2024年03月03日 | 演劇

東京芸術劇場シアターイーストで演劇「マクベス」を観てきた。原作:W.シェイクスピア、翻訳:松岡和子、上演台本・演出:ノゾエ征爾(劇団はえぎわ主宰)。東京芸術劇場で2月25日まで上演後、彩の国さいたま芸術劇場のリニューアルオープン公演として上演する予定。

今日は、14時開演、15時40分終演、4,500円。シアターイーストは300人前後の収容能力があるが、今日は8割がた埋まっていた、客層は幅広い年代の人に見えた。演劇の特徴で、若者も女性も目立った。値段的にも来やすいのだろう。シェイクスピアに興味がある若者が増えるのは喜ばしいことだ。私は若いころは見向きもしなかった。

芸術劇場のホームページによれば、「彩の国さいたま芸術劇場では、2022年春、ノゾエを招いてシェイクスピアの『マクベス』を題材としたワークショップを実施。ワークショップでは「演劇を見慣れていない若者に演劇の魅力を知ってもらう」という目標を掲げ、ノゾエは親しみやすく、飽きさせない構成と演出で約100分の『マクベス』をつくりあげた。これをきっかけに、はえぎわと彩の国さいたま芸術劇場の共同制作による『マクベス』を東京と埼玉で上演することが決定。」とある。

出演者

内田健司:マクベス
川上友里:マクベス夫人
山本圭祐:バンクウォー、フリーアンス他
村木 仁:ダンカン、暗殺者、医者他
町田水城:マクダフ、将校、貴族他
広田亮平:マルカム、暗殺者他
上村 聡:ロス他
茂手木桜子:魔女、門番、マクダフ夫人他
菊池明明:魔女、マクダフ息子他
踊り子あり:魔女、侍女他

ノゾエ征爾氏のインタビュー記事を読むと、マクベスは悲劇だが悲劇の中にもユーモアや人間味を見つけていく、若者に演劇の面白さを感じてもらうため自分が初めて戯曲を読んで面白いと感じた部分を大事にした、台本についても初心者の気持ちを大事にして「ここは飽きる」という部分についてジャッジして、(そこはカットして)、人間の温かさや息遣いが感じられるようにした、と話している。

ノゾエ氏はマクベスに人間味を見つけていくと話しているが、私はマクベスはもともとかなり人間臭い男だと思っている、魔女のささやきを妻に話し、妻のそのそそのかしに乗って悪い夢を見て、国王を殺害してしまう、そのあとで事の重大性と魔女のささやきにがまた気になり、臆病になっていく。軍事は優秀だが人間としてはごく普通の弱みを持っている男だ。

本作の特徴の一つは100分1幕ということだろう。本来、戯曲通りに演じるともっと時間がかかるのを一気に100分で小気味よく上演するというやり方だ。これはよかったと思った。オペラでも歌舞伎でも無意味に長い部分があるので、そういうところは思い切ってカットしても問題ないと思う。

さて、今日の舞台だが、場面転換はなく、舞台に50個くらい並べてある木製の椅子の配置換えを何回もすることで場面転換的効果を出しているのが面白いと思った。音楽についても現代の音楽をところどころ使ったり、魔女が携帯電話みたいなものをもってそのスイッチを押すと音楽が流れたりしていたように見えたが、いい試みだと思った。

出演者はそれぞれ全力で演じていたと思う、その姿勢が演技に出ていた。私が特に注目したのはマルカム(ダンカンの息子で王位承継者)の広田亮平だ。彼は芸術劇場も初めてだし、彩の国さいため芸術劇場も初めて、シェイクスピアも初めての27歳の若手俳優だ。

彼が活躍するのは最後のほう、イングランドに避難しているところ、マクベスの部下だった貴族のマグダフが来て祖国奪回の再起を促すと、自分は精力絶倫だけでなく物欲が衰えず、王として持つべきもろもろの美徳がないと言い、真実、節制、信念、寛大、忍耐、慈悲、敬虔、我慢、勇気、不屈の精神、これらの美徳を書いたカードを一枚ずつ捨て、これらは一切持ち合わせてないと言う。落胆したマグダフは、あなたに国を治める資格はないと言い、嘆く。それを見てマルカムは、さっき述べた自分の悪口は全部取り消すと言う。実はマグダフの誠実を試すために嘘を言ったのだ。いい役ではないか、いい場面ではないか、実に若々しさを出して賢い王子役を演じていたと思った。

さて、最初から最後まで舞台の両側の机の上には何やらいろんなガラクタが置いてあったが、これが何を意味するのか最後まで分からなかった。

楽しめました。



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