新人乱立 薄れる地域色…伊勢崎市議選
都市型兆しで「地盤なし」目立つ
25日に投開票される伊勢崎市議選は、32の定数を9上回る41人が立候補し、乱立模様だ。特定の支持基盤を持たない新人も複数立ち、旧市町村の地域代表を選ぶ色彩の濃かった前回の選挙とは異なり、都市型への変化の兆しを見せる。目立った争点のない中、有権者に世代交代の必要性を問う形となっている。(武田潤)
19日午後5時頃、伊勢崎市連取町の県道交差点で、30歳代前半の新人の男性候補がマイクを握りしめていた。「争点がない選挙だからこそ、市、そして子どもの未来を誰に託すかを考えてほしい」
この候補者は、地域から推されたのではなく、市の介護福祉を充実させたいと自ら立候補を決意したという。往来する車に向かって「20~30歳代が投票に行かないと、一部の政治家が独占する状況を変えられない」と連呼した。
旧伊勢崎市最後の2003年の市議選は、定数26に対し29人の立候補にとどまった。合併による在任特例の任期満了で候補者数が膨らんだ06年の前回は、定数34に対し、52人が出馬した。
<伊勢崎東地区の掲示板>
今回は、旧町村部からも乱立した前回とはうって変わり、現職以外の13人中、旧町村部からの出馬はわずか4人。このうち3人は在任特例の元議員で、新人は1人だけ。残る新人9人は旧市部からの立候補だ。
新人の中には、民主党公認候補や、特定の地域に支持基盤を持たない候補者など、全市域から広く票を集める選挙戦を展開する陣営もいる。
<伊勢崎東地区の掲示板>
こうした現象に、地元の票固めに奔走する複数の現職候補は「以前は公明、共産以外にはありえなかった。みんな何かしら地域の後押しを受け、それを前面に出して戦っていたのに」と、変化を実感している。
<ザゼンソウ>
新人10人が立った背景を、ある現職候補は「合併で特例市になり、市議にもステータス、責任が増してきた」と分析する。一方で、「市議になるのを『就職』と考えている人もいるからだ。慎重に実力を見極めるべき」と冷ややかに見る向きもある。
新人の1人で、自転車遊説で全域を回る候補者は「特定の組織や団体に偏らない政治を実現するには、自分のような存在が必要」と強調する。ある現職候補は「薄く、広く票を取っても勝てる都市型の選挙になりつつある。小差の勝負になる」と気を引き締める。
昨年1月の五十嵐清隆市長の誕生後、市議会は「オール与党」とも言われる状況が続いている。第1会派が圧倒的な力を持ち、「活発な議論に欠ける」との批判もある。
ベテランの現職候補は「旧市部での新人乱立は、現議会への『待った』の表れだと思う」とみる。「世代交代を望むのかどうか、市民への問いかけは十分だろう」と、有権者の判断の行方に注目している。
(2010年4月21日 読売新聞)
都市型兆しで「地盤なし」目立つ
25日に投開票される伊勢崎市議選は、32の定数を9上回る41人が立候補し、乱立模様だ。特定の支持基盤を持たない新人も複数立ち、旧市町村の地域代表を選ぶ色彩の濃かった前回の選挙とは異なり、都市型への変化の兆しを見せる。目立った争点のない中、有権者に世代交代の必要性を問う形となっている。(武田潤)
19日午後5時頃、伊勢崎市連取町の県道交差点で、30歳代前半の新人の男性候補がマイクを握りしめていた。「争点がない選挙だからこそ、市、そして子どもの未来を誰に託すかを考えてほしい」
この候補者は、地域から推されたのではなく、市の介護福祉を充実させたいと自ら立候補を決意したという。往来する車に向かって「20~30歳代が投票に行かないと、一部の政治家が独占する状況を変えられない」と連呼した。
旧伊勢崎市最後の2003年の市議選は、定数26に対し29人の立候補にとどまった。合併による在任特例の任期満了で候補者数が膨らんだ06年の前回は、定数34に対し、52人が出馬した。
<伊勢崎東地区の掲示板>
今回は、旧町村部からも乱立した前回とはうって変わり、現職以外の13人中、旧町村部からの出馬はわずか4人。このうち3人は在任特例の元議員で、新人は1人だけ。残る新人9人は旧市部からの立候補だ。
新人の中には、民主党公認候補や、特定の地域に支持基盤を持たない候補者など、全市域から広く票を集める選挙戦を展開する陣営もいる。
<伊勢崎東地区の掲示板>
こうした現象に、地元の票固めに奔走する複数の現職候補は「以前は公明、共産以外にはありえなかった。みんな何かしら地域の後押しを受け、それを前面に出して戦っていたのに」と、変化を実感している。
<ザゼンソウ>
新人10人が立った背景を、ある現職候補は「合併で特例市になり、市議にもステータス、責任が増してきた」と分析する。一方で、「市議になるのを『就職』と考えている人もいるからだ。慎重に実力を見極めるべき」と冷ややかに見る向きもある。
新人の1人で、自転車遊説で全域を回る候補者は「特定の組織や団体に偏らない政治を実現するには、自分のような存在が必要」と強調する。ある現職候補は「薄く、広く票を取っても勝てる都市型の選挙になりつつある。小差の勝負になる」と気を引き締める。
昨年1月の五十嵐清隆市長の誕生後、市議会は「オール与党」とも言われる状況が続いている。第1会派が圧倒的な力を持ち、「活発な議論に欠ける」との批判もある。
ベテランの現職候補は「旧市部での新人乱立は、現議会への『待った』の表れだと思う」とみる。「世代交代を望むのかどうか、市民への問いかけは十分だろう」と、有権者の判断の行方に注目している。
(2010年4月21日 読売新聞)