Guitars On Broadway

洋楽とエレクトリックギターの旅路

PRS SE Bernie Marsden

2017-06-08 15:56:29 | GUITARS

2011年にリリースされたイギリスのブルースロックギタリスト「バーニー・マースデン」のPRSシグネイチャーモデル。日本では馴染みが少ないように思われますがイギリスのレスポール使いのギタリストの中ではメジャーな存在のバーニーマースデン。ディープパープル解散後のメンバーのユニットやデビッドカヴァーデルのソロアルバムのギタリスト。そこから派生したホワイトスネイク初期の中心ギタリストとして活躍。現在も精力的に自己のユニットで活動していてyoutubeでチェックできます。

イギリスはレスポール使いのギタリストが多くフリードウッドマックのピーターグリーンが最初のように思われますがアメリカでフレディキングやマイクブルームフィールドがアメリカでレスポールを使ったのがイギリスにわたって3大ギタリストに流れていったとの説が有力。バーニーマースデンはどちらにしてもその直系のギタリストですから59年製レスポールはお約束のように生涯のキャリアの中で使いまくっています。現在はライブでPRSを多く使用しており韓国製SEからシグネイチャーを出すのは自然の流れかもしれません。2000年あたりからPRSでは伝統のシングルカットが生産され始め、レスポールをPRS的に解釈したデザインは新たなトラディッショナルを生み出しレオフェンダーと同じく50年代からのギブソンの黄金期を作り出したテッド・マーカーティーとコラボしたマッカーティーシリーズがこのモデルの原型というところでしょう。

レスポールの絶対的なデザインをモチーフにしたギターは過去にもたくさんありましたがどれもスタンダードにならず短命に終わったものばかりでこのPRSシングルカットが初めての定番になった感じです。それはコピーなどのデザイン優先ではなくレスポール風なオリジナルPRSという認識からくるので誰もギブソンレスポールを追いかけていないところがポイントのようですね。本家PRSレギュラーモデルの完成度が高いのはご承知の通りですが驚くのがやはり韓国メイドのSE。この完成度は少し前のメイドインジャパンを軽く超えています。塗装や細かな部分までツメが効いている仕上がり。コストダウンをどうやって図っているのかが不思議なくらいです。トップの木目もメイプル材の上に張り合わせていることやバックのマホガニーも2から3ピースだとしてもそれが音にどれだけ影響しているかは問題にはなりません。楽器業界がデフレ化しているようですね。しかし、その分ハイエンドクラスはほとんど言い値のような現実離れした宗教的な洗脳価格に。であればコストパフォーマンスの高い現実的で音が良いアイテムを選ぶのは当然の成り行きです。

さて、このバーニーマースデンモデルですが彼が長年59年製ギブソンレスポールを使用していることからリアルにオリジナルレスポールに迫るデザイン。ボディの厚さはマッカーティーからのオリジナルに近いガッシリとした厚さ。PRSオリジナルのシングルカットは薄めのボディで3.4kgと軽量化を実現していますがこのモデルは4.2kgとオリジナルレスポールに迫る重量。ネックはPRS規格のワイドファットですが太さは感じないスリムな59年ネックという感じで弾きやすい24.5インチスケール。ネックの仕込み角度がレギュラーPRSより深く、オリジナルレスポールに近いことからブリッジでのテンションや低いアクションのタッチがレスポ―ル的です。フレットの処理が素晴らしく低いアクションでどのポジションでも問題ありません。ローコストギターではありえないところがSEの凄いところ。コントロールは2V、1Tでピックアップはこの時期の新しいデザインのSE245はファットなビンテージをイメージしている感がありローエンドを持ち上げたトーンもスムースです。ハムバッカーのワイルドさを出すのならこの4kg以上の重量が必要な気がします。軽いストラトキャスターにハムバッカーという独特のトーンもありますがローミッドからむせび泣く爆発感は重量のあるレスポールならではのモノです。以前所有していた80年代の石のような4.6kgレスポールカスタムもローアクションでもワイルドに鳴りきっていたことを思い出しました。久々のクルーソンタイプペグも懐かしい。50年代中盤をイメージしたバーブリッジはシンプルで音が太くてサスティーンが最高です。

PRSの中でもシングルカットモデル自体がマニア向けなので日本でこのモデルはさほど話題にもならず中古市場でもほとんど姿を見せません。たまたま今回新品のデットストックを発見しましたが現在ではカタログ落ちしていて入手不可能。製造も2013年位までで輸入本数も極わずかだったのでしょう。ヨーロッパ市場では2015年にファイナルランとして数種類のカラーで250本限定発売して終了したようです。このモデルから現行のSE245のスタイルに変化していったのも見受けられます。そんなマニアックなバーニーマースデンモデルですがネックバインディング等、一番レスポールに近いフォルムなギターとしてPRSでは特異な存在です。有名アーティストのシグネイチャーモデルをSEシリーズからリリースするのはギターメーカーとして正しいスタイル。サンタナ御大が「学生でも買えるいいギターを」というポリシーがブレていないのが素晴らしいですね。名ギタリストと同じようなキズを入れた高額シグネーチャーモデルもいいですがなんとなくネタにしか見えてこないのが歳を取った証拠かも。

いつもの悪い癖で電装系のチューナップしたくなりますが当分オリジナルで嗜んでみましょう。


Paul Reed Smith SE Singlecut

2017-05-25 19:32:48 | GUITARS

2001年からスタートしたPRSの韓国製SE。2006年のPRS総合カタログからSEのシングルカットバージョンががリリースされたようです。このチューンナップしたSEシングルカットも2010年製で電装系とピックアップ、ノブ等を取り替えてから7年近く使用してますがトラッドなレスポールサウンドを出したいときには全てこのギターで用が足りる感じです。その間のメンテというとフレットサイドのバリ取りくらいでネックもほとんど動きません。

またこのギターを長く嗜む原因の一つがダンカン59sh-1です。クリーンからクランチ、粘るオーバードライブまですべてのレンジで適度なひっかかりと噛み付き感はこれに勝るものは無いでしょう。ピンポイントにアレンジされたシグネーチャーモデルやカスタムものもありますがオリジナリティーを追及するあまりトーンの不安定さを避けることは出来ません。このダンカン59のトーンをハイゲインで再生するならEMG85がベストということに。となるとこのSEにEMG85をインストールを企みたくなりますがそれはまた別のギターに。

日本を含め世界的にもPRSのシングルカットは全くと言っていいほど人気はありません。これを買うくらいならレスポールという気持ちもわかりますがこのSEシングルカットくらいコストパフォーマンスの高いレスポールモデルは逆にありません。しかし、海の向こうにはそんなマニアックなSEシングルカットモデルを自身のシグネーチャーにしてしまうギタリストがイギリスのブルースロック界の大御所バーニーマースデン。初期のホワイトスネイクを支え、解散後のディープパープルのイアンペイス、ジョンロードとも活躍、コージーパウエルのソロ等70年代に大活躍した大物の後ろに必ずいたのがこの方。ピーターグリーン直系のブリティッシュブルースの伝統を今も再現し続けています。

このバーニーマースデン・シグネーチャーは彼の長年共にしている59年レスポールをもとにモディファイしているようですがサウンドもかなりいい線いってます。SEはスチューデントエディションなんですがロックオジサンたちしか反応しない内容が実に楽しいですね。お父さんのお小遣いでいけそうな価格なので現実離れしてきた本家ギブソンのビンテージモディファイシリーズより本気度が高まる感じです。そんなリアルなサウンドが楽しめるのがこれです。https://www.youtube.com/watch?v=3xY1rdDfQww https://www.youtube.com/watch?v=9cE8pV9vnQY

そのフェンダーやギブソンの歴史をうまく利用しながらギャグにならないオリジナルを生み出せるPRSの切り口はシャープですね。

 


ビザール風邪

2016-08-29 14:54:17 | GUITARS

数年に一度はブームが訪れるビザールギター。いつも同じなビンテージフェンダーやギブソン、機能性を重視したハイエンドギターばかりだとオシャレなギタリストはシラケてしまいます。独特の雰囲気の60年代を演出するならやはりビザールギターが無ければ始まりません。当時、世界のビザールをけん引していたのが日本のテスコとグヤトーンというのも誇らしい限りです。そんなビザールギターは約15年周期にブームがやってきますがそれは楽器店の限定モデルが出たりそれをきっかけに雑誌の特集記事だったりと作為的なブームにも見えます。しかし、オリジナルを知らない若い世代には新鮮に見えるのでしょう。得体の知れないくらいにブームになった60年代の中盤からのインストエレキブームをリアルタイムに経験した世代も還暦をとっくに過ぎて後期高齢者になろうとしています。その思い出を忘れさせないように孫の世代に受け継がなくてはなりません。

伝統のある楽器メーカーのギブソンやアンプ製造からスタートしたフェンダーが作ったエレクトリックギターとは別物ですがこのインチキ臭いデザインと作りが新たなジャンルを作っていきました。日本では楽器メーカーではない木工メーカー、機械メーカーが委託製造していった経緯があるので斬新な切り口の違うモノが多数。この時期はなんたってトレモロユニットがお約束なので様々な機構が出来上がりました。コストもあるのでほとんどのメーカーは鉄板をプレスしたもの。この板バネが独特のリバーブ感とサスティーンの少なさを演出し、イナたいトーンのキーポイントになっています。

ここ最近はこのリバイバルブームを予感したように部屋弾きではこのテスコ・スペクトラム5がメインの存在。いろいろと調整していくと何ともゴキゲンな仕様になりました。このビザール系ギター特有の弦高が高いのを回避するためにシムをネックジョイントに仕込みます。ハイフレットをスリ合わせして12Fで1.3mmがいい塩梅です。エアー感が増してスクイーズもスムース。トレモロアームの可変幅は少ないですがいいポイントで変化し、珍しくチューニングの狂いもありません。面白いのがアームダウンすると滑らかにブリッジが前後に動きます。PUはフェンダーのようなクリスピーではなくて意外とP-90的な太さもあります。ストラトキャスターのようにそれぞれのPUの特徴を出さずPUのコンビネーションやインフェイズ、アウトフェイズでバリエーションを出すレイアウト。フロント&リアPUの高さの調整でミックストーンのアタック感が変化するのでそこがポイントです。ついついレスポールやストラトの解釈で改造してしまいがちですがそれはご法度。開発された当時のサウンドを嗜みながら弾かないと罰アタリに。結局、原型から離れるほど価値が薄まりその内使わなくなっていきます。それならストラトやレスポールを弾けばいいわけでスペクトラム5にそれを求めちゃいけません。拘らなければいいのですが、下手なチューンナップをするといい雰囲気のラージヘッドストラトのピックガードを外したら素人作業のハムバッカーの座繰りが出てきた時の失望感のようなものがやってきます。

流れるような流線形ボディですがボディバランスが悪く楽には弾けません。マホガニー風なラワン材ボディは意外と重量があり板バネの割にはサスティーンがあります。ネックはメープル3ピースでローズウッド指板という頑丈でタフなネック。このあたりのネックのつくりは90年代の再生産モノの確かさが見受けられます。モデル名にもなるカラフルな5個のスライドスイッチはPUのプリセットですがインフェイズ、アウトフェイズはメインに使用できるトーンではありません。リアPU、フロントPU、フロント&リアのミックストーンの3パターンで太めのテレキャスターやレスポール的な使い方がいいかもしれません。アンプはなんたってツインリバーブ。オーバードライブで粘らせてもいいですが収集つかなくなる場合もあるのでザクッとクランチとリバーブが収まりよい感じ。ファズも良し。


ストラト再設定

2016-08-08 13:19:00 | GUITARS

最近メインのRunt Guitars製スペシャルボディと55年製ネックのストラトキャスター。EMG SAをインストールし数ヶ月使用しましたが病みつきになっています。ブリッジ設定とピックアップの高さ、ハイポジションのスムースなベンドのために再度、Runt Guitarsの後藤代表にネックポケットの調整を依頼したのですが発送後5日で完治して戻ってきました。的確、確実、スピーディーは毎度のことながら素晴らしいです。今回はネックポケットを1mm強深く掘り下げていただきました。ネックポケットの処理を見るだけでギターの完成度の大体が判別できます。今回はブリッジのフローティングの度合、サドルの高さ、弦高等をキープするネックポケットの高さにしていただきました。

ストラトキャスターのセッティングは人によって様々ですから一概にこれだということはありません。レオフェンダーの凄いところは「大体この範囲で調整しろ」というあたりで設計されています。なのでそのオイシイポイントがわかるまでにはかなりの時間が必要になります。「鳴るギター、鳴らないギター」なんてよく耳にしますが鳴るようにセッティングすれば現行のギターの精度なら十分に鳴らしきれるようになります。しかし、音はイメージだけど弾き心地が今一つだったり、その逆もあったりと際限がありません。その折り合いのつくポイントを見つけるのも楽しみの一つです。そんな楽しみもこのEMG導入でまた角度が変化したような気が。

ギターサウンドを表現するのによく使う言葉の「倍音豊かで太い音」というのがストラトキャスターでよく言われます。しかし、EMGで慣れてくると、パッシブ・ビンテージスタイルの「倍音豊か~」がいかにやかましいかが再認識できます。トラッドフェンダーの倍音の中には雑音にも似たエグ味みも多く含まれますがこれを太さと勘違いしていた感も否めません。EMGは必要最小限の倍音で構成されていてクリアに前に出てきます。PUの本体自体の磁力が弱いので弦とPUの距離を近いところでセッティングが可能、その距離によってかなりのトーンバリエーションが作れます。今回のネックポケットの深さもPUの距離を調整する目的があります。EMG SAが弦とPUのトップとの距離が2mmから劇的に変化し、3mmからはソフトなアコースティック感が出てきます。それはゲイン、トーンの両方を兼ね備えているのでひじょうに奥深い作業です。3個のPUの出力バランスやハーフトーンでの音質、弦バランスと微妙なところまで反応するのがEMGの特徴。パワーとアクティブサーキットに特化したハイゲインPUはクリーン設定になると独特な質感になりますがこのEMG SAはビンテージパッシブトーン以外の何物でもない感じです。どこかの周波数をブーストさせたハイゲインパッシブより使い勝手は楽ですね。また定番ですがどんな環境でもノイズが無いのが驚きです。

このようにアタリハズレが大きいストラトキャスターですがそんなバランスの不具合を霊感商法のようなパーツで回避するのもあって酒のさかなに事欠きません。木材部分を組み立てる中間の金属パーツに特殊素材を使ったもの等は一度は使ってみたくなります。しかし、材料を変えても音には影響はほとんどありません。違いは持ち主の精神的な喜びとパーツの精度がしっかりしているのと重量バランスが変化することでしょう。確かにこだわりの新素材パーツの仕上げは別格です。しかし、ネックプレートをスチール、チタン、ブラスに変えたとしても音の違いはありません。違いは厚さや重さ、形状なのです。これはブリッジやサドルも同じ原理。木材の加工・組込精度やパーツの形状が良ければいい音が出て当たり前なのです。そのあたりを理解した上で新素材ハイエンドパーツを使うのがまた楽しいのです。

やめられません、ストラトキャスター。https://www.facebook.com/RuntGuitars/


NEW STRATOCASTER 2 チューニング

2016-06-21 13:55:39 | GUITARS

ストラトキャスターほどセッティングで別な楽器に変貌するものは他にありません。それだけ好みの設定に仕上げることが可能ですが変化の幅もこれまた大きいギターです。このニューストラトはブリッジのサドル上部からネジが出ないでフローティングさせ、シム無しでローアクションを実現するネックポケットを特別に加工してもらったので必然的にセットアップはタイトになります。1mm強のかなり低い弦高な為、さすがに1~3弦の16フレットあたりのベンドでは音がつまります。メンテされた60年以上前のネックはキッチリとリフレットされて指板の割れも治っていますが若干ハイポジションがハネている感じです。しかし、これ以上指板を削ると薄いネックになってしまうのでフレットのすり合わせでバランスが取られていますがこのローアクションだともう一声な感じです。フレットの隅から隅までチェックすると案の定バラついている箇所が数か所ありました。

一本のフレットでもセンター付近の1cmの幅だけで悪さをしているのもあるのでステンレスのL字ゲージで細かく見ていきます。指板をマスキングしてフレットのその部分だけ#400の耐水ペーパー(水の使用は無し)で研磨し高さを合わせてから#2000とコンパウンドの順で磨いていくとデットポイントは無くなります。工房系ハイエンドストラトではそこのハイフレットの処理は普通ですがビンテージ系ストラトはあえて大味にします。しかし、音つまりを無くすだけではなくローポジションでもハイフレットでの弦の接触があって独特のグラッシーなコンプレッションを演出します。ローアクションにはハイフレットの処理が大変ポイントになるのです。

そんな感じでスタジオセッションに2回程このギターでプレイしましたがタッチの反応は良くイメージ通りの雰囲気です。テンションが緩くローアクションでは無駄な力のピッキングはサスティーンの減少を引き起こします。ソロのピークでも8割のパワー以下で弾くのがこれまた別のテクニックが必要になってきます。

EMGの磁力はパッシブPUとは別次元に低いため弦とピックアップの距離を最大限近づけることが可能です。近づけるとダイナミックなパワーとそれぞれのPUのキャラクターが明確になりますがあえて2.5mmくらいの距離をとるとパッシブPUよりパッシブな自然の質感に変化します。

恐ろしきEMG。