2011年にリリースされたイギリスのブルースロックギタリスト「バーニー・マースデン」のPRSシグネイチャーモデル。日本では馴染みが少ないように思われますがイギリスのレスポール使いのギタリストの中ではメジャーな存在のバーニーマースデン。ディープパープル解散後のメンバーのユニットやデビッドカヴァーデルのソロアルバムのギタリスト。そこから派生したホワイトスネイク初期の中心ギタリストとして活躍。現在も精力的に自己のユニットで活動していてyoutubeでチェックできます。
イギリスはレスポール使いのギタリストが多くフリードウッドマックのピーターグリーンが最初のように思われますがアメリカでフレディキングやマイクブルームフィールドがアメリカでレスポールを使ったのがイギリスにわたって3大ギタリストに流れていったとの説が有力。バーニーマースデンはどちらにしてもその直系のギタリストですから59年製レスポールはお約束のように生涯のキャリアの中で使いまくっています。現在はライブでPRSを多く使用しており韓国製SEからシグネイチャーを出すのは自然の流れかもしれません。2000年あたりからPRSでは伝統のシングルカットが生産され始め、レスポールをPRS的に解釈したデザインは新たなトラディッショナルを生み出しレオフェンダーと同じく50年代からのギブソンの黄金期を作り出したテッド・マーカーティーとコラボしたマッカーティーシリーズがこのモデルの原型というところでしょう。
レスポールの絶対的なデザインをモチーフにしたギターは過去にもたくさんありましたがどれもスタンダードにならず短命に終わったものばかりでこのPRSシングルカットが初めての定番になった感じです。それはコピーなどのデザイン優先ではなくレスポール風なオリジナルPRSという認識からくるので誰もギブソンレスポールを追いかけていないところがポイントのようですね。本家PRSレギュラーモデルの完成度が高いのはご承知の通りですが驚くのがやはり韓国メイドのSE。この完成度は少し前のメイドインジャパンを軽く超えています。塗装や細かな部分までツメが効いている仕上がり。コストダウンをどうやって図っているのかが不思議なくらいです。トップの木目もメイプル材の上に張り合わせていることやバックのマホガニーも2から3ピースだとしてもそれが音にどれだけ影響しているかは問題にはなりません。楽器業界がデフレ化しているようですね。しかし、その分ハイエンドクラスはほとんど言い値のような現実離れした宗教的な洗脳価格に。であればコストパフォーマンスの高い現実的で音が良いアイテムを選ぶのは当然の成り行きです。
さて、このバーニーマースデンモデルですが彼が長年59年製ギブソンレスポールを使用していることからリアルにオリジナルレスポールに迫るデザイン。ボディの厚さはマッカーティーからのオリジナルに近いガッシリとした厚さ。PRSオリジナルのシングルカットは薄めのボディで3.4kgと軽量化を実現していますがこのモデルは4.2kgとオリジナルレスポールに迫る重量。ネックはPRS規格のワイドファットですが太さは感じないスリムな59年ネックという感じで弾きやすい24.5インチスケール。ネックの仕込み角度がレギュラーPRSより深く、オリジナルレスポールに近いことからブリッジでのテンションや低いアクションのタッチがレスポ―ル的です。フレットの処理が素晴らしく低いアクションでどのポジションでも問題ありません。ローコストギターではありえないところがSEの凄いところ。コントロールは2V、1Tでピックアップはこの時期の新しいデザインのSE245はファットなビンテージをイメージしている感がありローエンドを持ち上げたトーンもスムースです。ハムバッカーのワイルドさを出すのならこの4kg以上の重量が必要な気がします。軽いストラトキャスターにハムバッカーという独特のトーンもありますがローミッドからむせび泣く爆発感は重量のあるレスポールならではのモノです。以前所有していた80年代の石のような4.6kgレスポールカスタムもローアクションでもワイルドに鳴りきっていたことを思い出しました。久々のクルーソンタイプペグも懐かしい。50年代中盤をイメージしたバーブリッジはシンプルで音が太くてサスティーンが最高です。
PRSの中でもシングルカットモデル自体がマニア向けなので日本でこのモデルはさほど話題にもならず中古市場でもほとんど姿を見せません。たまたま今回新品のデットストックを発見しましたが現在ではカタログ落ちしていて入手不可能。製造も2013年位までで輸入本数も極わずかだったのでしょう。ヨーロッパ市場では2015年にファイナルランとして数種類のカラーで250本限定発売して終了したようです。このモデルから現行のSE245のスタイルに変化していったのも見受けられます。そんなマニアックなバーニーマースデンモデルですがネックバインディング等、一番レスポールに近いフォルムなギターとしてPRSでは特異な存在です。有名アーティストのシグネイチャーモデルをSEシリーズからリリースするのはギターメーカーとして正しいスタイル。サンタナ御大が「学生でも買えるいいギターを」というポリシーがブレていないのが素晴らしいですね。名ギタリストと同じようなキズを入れた高額シグネーチャーモデルもいいですがなんとなくネタにしか見えてこないのが歳を取った証拠かも。
いつもの悪い癖で電装系のチューナップしたくなりますが当分オリジナルで嗜んでみましょう。