Guitars On Broadway

洋楽とエレクトリックギターの旅路

Warmoth テレキャスター

2015-03-11 13:52:18 | GUITARS

大体の調整が終わったワーモスのテレキャスター。50年代初頭のフェンダーテリーのモディファイですがリアルビンテージというのではなく、あくまでビンテージ風な感じ。ワーモスはフェンダーからライセンスを取っているアメリカのギター用木材業者。80年代のカスタム工房メーカーの材としてかなりの供給量を誇っていました。そこのオリジナルギターではなくワーモスのボディ&ネックを使用して国内工房で組み立てた代物。それ風ですがボディ形状やネックシェイプなどは微妙にフェンダーと違います。

ネックはワーモス社オリジナル、プロネックというスペック。上下にストレートな2本のトラスロッドが入っているダブルエクスパンディングトラスロッドとネックエンド部サイドからも調整可能なゴトー製SAT-2というアジャスターが組み込まれている。基本はネックエンド部のネジで調整して微調整をサイドからレンチでする2段構え。知らない人はネックを外さないでサイドからの調整だけで済むと思いネジを切ってしまい後悔される方が多いとか。このサイドアジャスター自体可変幅が少ないのでオマケのようなパーツですがネックを外してエンド部でストレートにして弦を張ってから順反り具合を確認しつつ、弦を緩めてサイドで微調整という風に使います。弦のテンションによる反り具合を想定しなくてもいい便利なパーツ。世界のゴトー製品でもあまりメジャーにならなかったものですがワーモスが粘り強く最上級グレードに使っている思い入れの強い一品。ネックだけにこんなにもたくさんの秘密を隠しているものですからもちろんこの機構を仕込むにはワンピースメープルネックでは不可能でローズ指板のような張り合わせをしなくてはなりません。この個体はかなり厚めの貼りメープルバージョン。なのでこの仕様の為なのかの超極太ネック。しかしエッジの処理もよく指板はフェンダーよりフラットなので弾きやすさ抜群。ローポジションの極太感の割には9F以降のハイポジションは滑らかなので違和感はありません。しかしその細工の為、ネック重量は上がりタイトになってネック自体の鳴りを制御する方向に行く。これがワーモスネックは鳴らないといわれる原因かもしれません。

ボディは2ピースのライトウエイトスワンプアッシュ。このボディ重量だと通常はギター重量3kg前半ですがネック重量の影響で3.4k強の標準的な重さ。若干ネックが重いバランスですが慣れると問題はありません。PUの関係もありますが枯れたビンテージトーンではなく重心の低めな感じでクランチのシングルノートもズッシリ響きます。太いネックは意外と長時間のプレイでも手のダメージを軽減させるような気が。カスタムメーカーによくあるタイトなネックポケットのジョイント部分がよりモダンなタイトな感じの鳴りを生み出します。ここの部分はリアルなフェンダーを追い求めるとニュアンスが違ってくる部分なので判断が難しいですね。

ローアクションでテンション緩めの設定だとネックはほとんど動きません。逆に3kgを切るようなライトウエイトだと低いテンションだと鳴りきらないですがこの重量だとバランスがあっている感じです。

フロントにハムバッカーを仕込んでマイクスターンといきたいところですがとりあえずはこの現状で調整していきます。10年ぶりにテレキャスターを弾いてみてやはりエレクトリックギターの原点だと痛感する今日この頃。

 

 

 

 

 


テリーワイヤリング

2015-03-10 19:57:06 | GUITARS

いよいよ配線ですが残念なことにCTSのポットが1個不良品でした。特にボリュームに使用したものなので新しく調達。ソリッドシャフトは小売店にはほとんど置いていないので結局通販になってしまいます。

いつものように配線材はWEのビンテージ単線でシンプルに。コンデンサーは最近イチオシのデンマークメイドのジェンセン。トーンを絞りきる手前がムーディーでゼロでローミッドが軽くブーストするところがタマリません。テレキャスターではリアPUでトーンをチョイ絞りがクランチサウンドを太くすることに大変有効です。このローラーのビンテージPUはありがちなテリーのハイトレブルをカットしてあるので尚更太さが増して嚙付き良好。また2個のシングルPUの高さ調整が一番トーンに影響与えるのがこのテレキャスター。フロントとリアが違う形状のピックアップなのでこの弦とのアクションが単独とミックスでの使用のトーンバランスやキャラクターにかなりの違いを生み出してしまう。この調整だけはツインリバーブクラスの大型チューブアンプでそれなりの音量でチェックしないとうまくいきません。何時間もドライバー片手にやるのも楽しみの一つですが酔っ払いながらやるのはご法度。

ピックアップが木材や金属に直接マウントなのでそのダイレクトさから調整具合でかなりの違いが体感できシンプルで奥深いテレキャスターを堪能できます。しかしこの後、アッセンブリーをすべてピックガードに集約するストラトキャスターのデザインに発展していくのも古典的なギタリスト目線だと無理な話ですね。

またこのテレキャスターのネックがツバ出し22フレットなのでピックガードがネックを外さないと簡単に取れません。なのでピックガード無しで弦を張ってフロントPUの高さを調整し再度ネックを外してPUガードを取り付けてからまたやり直し。その後、リアPUの調整とオリジナルに一ひねり加えるだけですべてが面倒くさくなってしまう。それだけオリジナルが完成しているということでしょう。

いつものことですがシングルピックアップとブラックエナメル単線のマッチングは素晴らしいです。今回は特にジェンセンのコンデンサーとテレキャスタートーンが妙にいいです。これならトーンを絞ったムーディーなテリーでいくしかありません。

 


レリックの嗜み

2015-02-23 11:08:46 | GUITARS

ソフトなレリック処理を施されたギターを入手しました。ネックを調整しようとビスを緩めたらかなり渋い。やっとの思いで外したらなんと木ネジ頭部はそれほどでもないのに内部のネジ切部分が赤錆。完全なヴィンテージ仕様ではないので気持ち程度のレリックですがビスのすべてが赤錆だらけ。

これは全くのビンテージを知らない職人の仕業です。マニアックな専門ムック本なんかではかなり弾き込まれた個体の写真もありますが金属パーツがここまで赤錆を帯びたものは稀です。野外か過度な湿度のある地下室で長く放置されていなければここまでの錆にはなりません。これだと腐食で折れる可能性もあるのですべてのネジは交換です。ブリッジやコントロールプレートはサンドペーパーで軽くこすってある程度なので使えますがネジは全てアウトです。コンディションの悪いビンテージアンプでさえここまで錆びません。たぶん食塩水か何かに浸けて酸化させたんでしょうけど。使い込まれたビンテージギターの金属パーツは確かにメッキも剥げますが黒く変色する感じで赤錆は出ません。出ても表面部分に出る程度でネジ部にまで錆がくると折れるだけです。

レリック処理自体、センスしかないので腕利きの工房職人でもそこがズレると台無し。ハードなレリック処理も錆で弦高調整不能になってしまえば楽器としての価値は無くなります。オールドギターに迫りたいのはわかりますがしっかりメンテしながら弾き込まれたギターか劣悪な環境で放置されたギターか落としどころが重要です。どちらにしても仮想ビンテージなので本来のギターの完成度とは別のところに位置しているのが難しいところ。しかし、経年変化を意図的に作り出すモノに付加価値を見出すという特殊な世界が楽器にはあります。車のようにビンテージをビカビカにレストアすると価値が半減。しかし、ビスの赤錆はいけません。

さてパーツを入れ換えてどんなギターになるかこうご期待。

 


テスコ スペクトラム5 No.2

2014-08-04 19:01:35 | GUITARS

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線材は交換できる部分はすべてWEの単線でやってみます。トーン用のコンデンサーはニッセイ。一度に古い線材を外してしまうと戻せなくなるので少しずつ。輪郭がはっきりした感じになり、プリセットトーンが際立ちます。SWの接触不良も無く切り替え時のノイズも無くなりました。

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トレモロは構造が簡単な板バネ方式。トレモロ作動とともにセパレートしたブリッジが平行移動しチューニングの狂いがほとんどない。トレモロの効きはシンクロナイズドの1/3程だが板バネやブリッジに共鳴するリバーブ感でその雰囲気のまんまです。ネックはしっかりとしたメイプル3ピース。すべてのパーツがこのギター用にデザインされたもので力の入り方が違います。弦高を低くすると板バネのためブリッジにかかるテンションが少ないのでブリッジでの耳障りな共鳴が出ます。ネックポケットに0.25mmのシムをかませてブリッジを高くし、弦高を1.2mmに設定します。低い弦高がブライトでコンプレッションがかかったこのギターの特徴をより強調します。心地いいプリセットはグリーンの4、リアとフロントのミックスがいいですね。

フェンダー系のリバーブたっぷり効かせたアンプで弾くのがやはり定番ですがRATで軽くクランチさせてブルースもオススメです。大好きなギタリスト、マークノップラーやライクーダーも使っている由緒正しいギターがテスコ・スペクトラム5.。

 


テスコ スペクトラム5  No.1

2014-08-04 17:43:23 | GUITARS

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メイドインジャパンのオリジナルエレクトリックギターとして1960年代にいち早くワールドワイドに販売を展開したテスコ。そんなテスコが66年に発売した最高級ランクのギターがこの「スペクトラム5」。日本では60年代初頭に起きたベンチャーズやGSブームの中、安くて手に入りやすい国産のソリッドエレクトリックギターメーカーが乱立。家電メーカーまでギターを作る始末。そんな中、グヤトーンとこのテスコがこのブームを牽引する2大メーカーとして君臨していました。テスコは海外販売にも強く海外ミュージシャンが使用していたという話もよく聞きます。

60年代中期に巻き起こったビートルズからしだいにセミアコースティックギターの人気が出てソリッドギターの販売数の激減の中、このスペクトラム5はデビューしました。しかし、テスコ自体が同年経営危機に陥り会社は河合楽器に吸収され、70年代にこのテスコブランドは消滅しました。そのあたりは詳しいサイトを参照するとしてこのスペクトラム5は66年日本での販売の1年前に既に海外での販売が開始され、現在では当時のビンテージもののほとんどが海外で取引されています。ということは国内での販売数は少なかったということになります。当時の大学卒の初任給より高額だったことやメーカーの経営危機から生産本数も少なかったのかもしれません。

奇抜なデザインや発売時のタイミングの悪さから時代に埋もれてしまった感のあるスペクトラム5を92年に入ってブランドを所有する河合楽器が復刻させたのが今回のギターです。2005年に生産終了したので60年代よりもかなり長い間作られたことになります。さて詳しく見ていきましょう。

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シリアルナンバーから97年製。大変おさまりの悪いオリジナルハードケースも復刻したものですから移動時のケース内での動きとボディとネックのプレッシャーでネックポケットに3ヶ所の亀裂が入っています。かなり早い時期に亀裂が入ったようでクランプで簡単には戻りません。ここは見て見ぬふりはできない部分なのでしっかりとリペアに出して戻ってきました。ネックポケットの両サイドの塗装とポケット面をフラットにしています。

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現在では絶対にしない配線レイアウトです。線材も細いビニール線。PUセレクタースイッチが5個のスライドタイプ。これがまた接触不良の嵐で弾いているだけで音量や音が勝手に変わってしまうほど。機構は簡単なので分解して接点復活材のcaigを綿棒につけて優しく磨きます。この辺のパーツは替えが無いので大事に扱わないといけません。そんなことをやっていると線材を交換したくなる病気が出てきたので早速やってみます。

セパレートになってる6個のPUはストラトのように3シングルで使えるかというと全くできません。60年代当時のフロントとリアのミックス等の複数のPUを同時に鳴らすレイアウトです。ほとんどが6個すべてのPUを出力し位相を変えたりハムバッキングにしたり,同じ音で抵抗を通してローカット等今の音楽には難しいワイヤリングです。真ん中だけがリアPUだけ鳴らすスイッチでオーソドックスなテレキャスターのリアPUサウンド。チューンナップを考えると普通は使えるようにストラトキャスターのような配線にしてしまいますがそれをやってはいけません。当時の設計に敬意を表し、部材は替えますがオリジナルの配線で復刻させます。ストラトサウンドが欲しければストラトを弾けばいいわけで。使いやすいようにアレンジしても結局オリジナルが良くて戻すようになるんですね。

恐ろしいのがアウトプットが2個有、1.2.3弦と4.5.6弦とがステレオで出力されエフェクトなしでも空間系の効果が出せます。通常はモノラルにインプットすれば1ボリューム1トーン、2プラグをインするとステレオになりトーンノブがヴォリュームに成り代わります。ステレオ使用時にはトーンが無くなるのでスライドスイッチでトーンの変化を持たせるという成る程!と思わせるゴージャスな設計です。なのでトーン用のコンデンサーがモノ・ステレオ切り替えスイッチについています。ビンテージアンプの本にテスコのステレオギターアンプがありましたがこのギター専用だったのかもしれませんね。

なぜかポットは500kのBカーブ、これも交換予定。