読書の森

祖母の思い 後編



戦時、各家庭に貴金属類の供出のお達しがあった。
つまり溶かして軍事物資に使う訳だ。
お国の為に宝石や指輪など装飾品を出す訳だ。
一枝は非常に正直な人だから、自分の持ってる貴金属全てを提供した。

そねは殆どをこっそり隠し持ち、見せかけだけ出した。
当時家捜ししてまで、持ってる貴金属を調べる事が無かったからだ。
そねは上手に嘘をつく人だった。

こういう性格の違いがお互いに分かってくると、当然反発が酷かった。

女子師範学校出身の一枝はチャラチャラしたそねを見ると「ぞっとする」と母に言ったそうだ。





一枝は養女である。
親戚の家に子が生まれず、そこに請われていった。
頭の良い子で当時の女子として最高学府まで進んだ。
ところが、その後男子が生まれたのである。
教師を続けたかった一枝は、気の進まない結婚をした。

そねの家は代々続く武家だった。
優秀な子孫に恵まれている。
ところが末っ子のそねの成績だけ悪かった。
曽祖父はそねを引きずり回して折檻した。
実は祖母が子どもに勉強させないのはその反動だった。

私の祖母は二人ともどうも愛される事に飢渇していたようだ。
戦前は経済的に豊かだったが、幸せ感は薄かったらしい。

ところが戦後、家は非常に貧しくなった。


祖父は病気で、一枝は経済的に四苦八苦していた。
母は口減らしの為に嫁に行った。

つまり皆自分は戦争という悲運に流された被害者だというのだ。

私は戦争のおかげで生まれる事が出来たと今は思っている。
二度と許してはならない戦争だが、自分が生を受けたのはとても素敵な事だと思う。

読んでいただき心から感謝です。ポツンと押してもらえばもっと感謝です❣️

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「エッセイ」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事