五、「教会とわたしたち」(314)
4.近代の教会の夜明け
―宗教改革―スコットランド
「わたしの霊と心と身体とをあなたの御手におゆだねます」と、彼の言葉はもつれながらいったという。このとき彼の目は見えなくなったようで、続く言葉が、「ヨハネによる福音書17章を読んでください。そこにわたしの最後の錨をおろします。」と言い切ったとき、呼吸が乱れ重いうめき声になり、ノックス夫人らが入って来て最後を見守った。11月24日深夜11時ころ発作もなく息を引き取った。歳は(ここまで前回)
58歳であった。彼の遺体は当時エディンバラに滞在中の数人の貴族たちと、その他親しい者たちに付き添われ聖ギレス教会に運ばれた。あのノックスと争ったスコットランドの女王メアリーがこの二ヶ月前にロンドン塔に監禁された。そのこともあって、スコットランドの全国民はノックスの死を心から哀悼した。彼の告別式は二日後の11月26日、エディンバラのセント・ジャイルズ教会で盛大に行われ、その教会の南に接する教会墓地に葬られた。ノックスの死の当日、摂生に任命されたモントル伯は、簡単な言葉で墓の前で告別の辞を述べた。「ここにいかなる人間をも恐れず、また何人にもおもねることをせず、剣しばしば彼を脅かしたにもかかわらず、平和と栄光のうちにその生涯を終わった人がここに眠る」と。その言葉がノックスの墓碑銘に刻字され、その複製が今日も残っている。(つづく)