(つづき)
広大な尾瀬ヶ原の、東の端が見晴です。ここには山小屋が6軒集まっています。湿原のど真ん中でも、深い森の中でもないですが、仙境という感じがとても出ているところだと思います。
辞書をひくと、仙境は「仙人の住む土地(のような俗界(ゾッカイ)をはなれた地)。仙界」(『三省堂国語辞典(第七版)』)とあります。いくら仙人でも、建物が無ければ住めないでしょう。
見晴から山ノ鼻まで尾瀬ヶ原を縦断しました。竜宮十字路の手前で沼尻川を渡るところが、福島県と群馬県の境界です。川の周囲だけは、湿原ではなく原生林です。複線の木道の間から、ワタスゲの果穂が顔を出しています。
この近くで「竜宮現象」が見られます。木道の標識に「竜宮現象 出口(湧出点) ※水が出てくるところ」と書いてあります。湧き出しているかどうかは、水面を見ても分かりませんでしたが、底に大きな穴が開いているのが見えました。尾瀬で、湿原の地下の様子が分かるのは、ここだけかもしれません。
天気は今一つで、山ノ鼻が近づくと小雨もぱらつきましたが、燧ヶ岳も至仏山も隠れることなく見え続けていました。水面に映る、曇り空とおぼろげな逆さ燧も味があると思いました。
17時20分発の、鳩待峠を出る最終バスで帰りました。
(写真:2021年6月上旬)