(つづき) 辞書で「尻」をひくと、7番目に「いちばんあと。終わり。」(『三省堂国語辞典(第七版)』)と出てきます。「沼尻」という地名らしく、尾瀬沼の西の端にあたります。
尾瀬沼の水は沼尻川へ、西の方角へ、福島と群馬の県境をたどって、広大な尾瀬ヶ原へ流れ出ます。登山道は、川のやや北側、福島県側につけられています。
沼尻から尾瀬ヶ原の見晴までおよそ4kmの間は、尾瀬のど真ん中という雰囲気で、歩くことの少ない道です。沼尻川は尾瀬沼から一方的に下りですが、登山道はいったん白砂峠まで少し登りがあります。途中には、複線の木道が架かって、沢を渡る場所があります。そこでは水が沼尻川とは逆方向に流れています。面白い地形です。
先にあるのが白砂田代で、この湿原を過ぎると見晴に着くまで湿原はありません。大きくはないですが、水面の占める部分が広く、尾瀬の中でも豪快な湿原の一つだと思います。上空は曇ってきましたが、ミズバショウはさらに白さを増した気がします。湿原の出口にはミネザクラも咲いています。
峠へ登り切る直前に、この日最後の残雪が現れました。
その先に「迂回して下さい。木が倒れそうです」という注意書きがあります。その木は残念ながらもう倒れていました。幹は長いですが、太くはありません。細かい根が、横に長く長く広がっているのが意外でした。
段小屋坂を下り、見晴まで森林の道が続きます。
尾瀬では燧裏林道も深い森で、背の高い立派な樹が多いですが、枝ぶりの豪快な樹は段小屋坂の方が多い気がします。いくつか小さな沢をこえるところは燧裏林道に似ていますが、沼尻川の水音が聞こえてくるのは燧裏林道とは違っています。
見晴に着きました。モノクロの写真を撮るなら曇り空の日がいいと思いました。
(写真:2021年6月上旬) (つづく)