磐梯山(1,816m)
会津若松行きの磐越西線の電車に乗ると、進行方向右手に端正な山頂の磐梯山が見えてきます。
スキー場のゲレンデになっている部分以外、ほとんどが濃く緑に覆われています。
しかし、車窓から見えたのは表側の磐梯山で、裏側にまわると様相が一変します。
裏磐梯スキー場のゲレンデ歩きから始まる登山道は、あちこちにゼンマイが生えています。山菜採りの人もいました。
約40分の登りで、銅沼(あかぬま)です。1888年の大噴火によってできた火口湖です。
磐梯山の凄まじい火口壁と、もう一つのピーク・櫛ヶ峰が迫ります。列車から見た山とはまったく違う風景が広がっていました。
赤茶色の沼も印象的です。しかし、赤茶けていない部分もあります。1つしかないはずの水面に、何種類もの色があります。この水は強い酸性です。
対照的に、畔の樹々は葉が青々としています。
静けさと荒々しさが同居する、豪快で不思議な風景でした。
「~ 景色の鑑賞にも時代の感覚のようなものがあって、シムメトリーよりむしろデフォルメを好む傾向を近代的とすれば、たしかに磐梯山の表よりも裏にそれがある。 ~」(深田久弥『日本百名山』(新潮社版))
深田久弥は『日本百名山』で、表から見た方の磐梯山を絶賛しています。
「~ 裏側では表側のような端麗雄大な姿は見られない。大爆発で欠損した小磐梯が、未だに荒々しい傷口を見せて、断崖となって立っている凄い形が眼を惹くが、磐梯山そのものは隣峰の櫛ヶ峰と共に間隔の広い双耳峰となって、火口壁の引立て役をつとめるに過ぎない。本当のすぐれた磐梯山に接しようとするには、ぜひ表の猪苗代湖から仰がねばならない。 ~」
しかし、銅沼の風景に接してみると、自分は「近代的」で「デフォルメ」のある磐梯山の方が好きだと思いました。
「小磐梯」は、同じく1888年の大噴火による山体崩壊で消滅した山です。
(登頂:2013年6月上旬) (つづく)