風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第二部) 其の拾弐 

2010-03-01 21:57:08 | 大人の童話

給食当番の時のことです。当番は五人一組で、それぞれ一人一つずつ、お盆・食器・

パン・おかず・牛乳と受け持ちます。そのなかで、皆が受け持つのをいやがるものが

ありました。「おかず」です。子どもたち一人一人の器に、おかずを均等に入れるのが

難しかったからです。もちろん、夢も例外ではありません。なるべくなら、受け持ちたく

ありませんでした。しかし、先着順で遅れをとり、結果的におかずの受け持ちの日が

多くなりました。ジャンケンで決めることにしても、勝った人から好きなものを取って

いくので、負けることが多かった夢は、結局、おかずの受け持ちとなって

しまうのでした。夢は、おかずの受け持ちになった時、何とかみんな同じ量に

なるように必死になって、器におかずを入れていきました。それでも、多少の違いは

でてしまいます。そんな時、何人かの子が、「おかずの具が偏って入ってる。」「量が

前の子より少ない。」などと、いろいろ文句を言ってきました。ある時、一人の子が

先生に、「先生、夢のおかずの入れ方が、其の時によって全然違うよ。公平じゃ

ないよ。」と言いつけました。それを聞いた先生は、「だめじゃないの!なんで同じに

入れないの。自分がそうされたらどうするの。」と、『本当にだめな子ね。』とでも

いうように、きつく夢に言いました。みんなの器に均等におかずを入れるのに、夢が

どんなに気をくばっているか、その場の状況を見ないで、一方的に夢が悪いと

決めつけた言い方でした。夢は泣きたくなりました。クラスの子たちだけでなく、

担任の先生も、自分を疎ましく思っていることがわかったからです。