風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第二部) 其の参拾五

2010-03-26 22:42:18 | 大人の童話

式が終わると、夢たちは卒業記念写真を撮るために、屋上に上がりました。

屋上からは、地域の町が見渡せます。六小の周りは、六小ができた五年前に

比べると、だいぶ家が増えてきていました。それでも、まだまだ畑や林が多く自然に

恵まれています。屋上を吹き渡る風を頬にうけ、遠くに見える町並みを眺めながら、

夢は、

『これから、この辺はどんなふうになってゆくんだろう。その時、わたしはどこに

いるんだろう。まだ、ここに居るんだろうか、それとも、どこか他の所に往って

居るんだろうか。』

などと、とめどなく思っていました。いよいよ写真を撮るというその時、式の間は

泣かなかった夢も、さすがに感きわまり涙が出そうになって、あわてて手で眼を

こすりました。涙をこらえて撮った卒業写真、でき上がってきたその写真の後ろには、

下部半分だけ、夢の大好きな、六小が”これもわたしの一部よ”と言った、あの

時計台が写っています。