式が終わると、夢たちは卒業記念写真を撮るために、屋上に上がりました。
屋上からは、地域の町が見渡せます。六小の周りは、六小ができた五年前に
比べると、だいぶ家が増えてきていました。それでも、まだまだ畑や林が多く自然に
恵まれています。屋上を吹き渡る風を頬にうけ、遠くに見える町並みを眺めながら、
夢は、
『これから、この辺はどんなふうになってゆくんだろう。その時、わたしはどこに
いるんだろう。まだ、ここに居るんだろうか、それとも、どこか他の所に往って
居るんだろうか。』
などと、とめどなく思っていました。いよいよ写真を撮るというその時、式の間は
泣かなかった夢も、さすがに感きわまり涙が出そうになって、あわてて手で眼を
こすりました。涙をこらえて撮った卒業写真、でき上がってきたその写真の後ろには、
下部半分だけ、夢の大好きな、六小が”これもわたしの一部よ”と言った、あの
時計台が写っています。