風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第二部) 其の弐拾七

2010-03-20 22:43:05 | 大人の童話

もうすぐ一学期も終わるというある放課後、鉄棒に寄りかかってボーッとしている

夢に、いつもはにぎやかな六小が、静かに声をかけてきました。

「ねえ、もうすぐ卒業だよね。」

「うん。」

「卒業しても、時々はわたしのこと思い出してくれる?」

「もちろん、何で?」

「う・・・ん、ちょっと。」

それだけ言うと、それきり六小は黙ってしまいました。そのまま、しばらくたっても

話しかけてこないので、夢は気になって自分から話しかけてみました。が、六小の

反応はありません。やがて校舎から、下校をうながす音楽『アンダンテカンタービレ』

が流れてきました。

「もう、下校時刻になりました。校内・校庭に残っている、用のない生徒は、早く家に

帰りましょう。掃除をしている人は、早くすませて家に帰りましょう。」

視聴覚委員の声が聞こえます。それでも夢は、しばらく鉄棒に寄りかかって

いました。さっきの六小の様子が気になって、帰るに帰れなかったのです。

音楽が高まるなか、なかなか帰らない子どもたちに向かって、マイクが

呼びかけます。

「校内・校庭で遊んでいる人、早く家に帰りましょう。」

そして、しばらくして音楽が静かに消えてゆくなか、視聴覚委員の最後の声が

響きました。

「これで、今日の校内放送を終わります。さようなら。」

あとは静寂だけです。その静寂のなか、ようやく夢は鉄棒から離れ、帰り支度を

始めました。

『考えていてもしかたがない、か。明日、また聞いてみよう。』

そして、六小の方をちらっと見ると、

「バイバイ、また明日ね。」

と言って、駆け足で帰って行きました。

 

 

 


第六小学校の呟き

2010-03-20 12:17:48 | 校舎(精霊)の独り言

夢ちゃんから聞いた話。以下は、夢ちゃんの言葉です。

「昭和三十八年に川崎市の小学校で実際に出されていた給食を、期間限定で

食べられる所がある、と聞いて行って食べてきた。献立は、コッペパン・

鯨のたった揚げ・白菜と人参のおひたし、それに脱脂ミルクだった。

コッペパンは当時の大きさ、でも、味は当時のよりいい。当時のコッペは

パサパサしていたけど、今回のはやわらかくておいしかった。鯨のたった揚げ・

おひたしは、当時食べたそのままの懐かしい味だった。脱脂粉乳ミルクは、

当時のより少しうすく感じたけど、おいしいと思ったのは・・・何故???

食器も、アルマイト製のものをわざわざ使ってくれていた。ただ、当時あった

先割れスプーンのかわりに、スプーンと箸が付いてたのがちょっと残念。評判が

悪くて使わなくなった先割れスプーン、だけど、当時は当たり前に使っていた。

当時確かに、子ども心にも強烈な印象を与えた先割れスプーン、そんなものにも

郷愁を抱くわたしだった。

それはともかく、懐かしい味に、おもいっきり感動!

楽しくて、涙もろくもなった給食時間であった。」

へ~、そうだったんだ。夢ちゃんも年だね。うふっ。