もうすぐ一学期も終わるというある放課後、鉄棒に寄りかかってボーッとしている
夢に、いつもはにぎやかな六小が、静かに声をかけてきました。
「ねえ、もうすぐ卒業だよね。」
「うん。」
「卒業しても、時々はわたしのこと思い出してくれる?」
「もちろん、何で?」
「う・・・ん、ちょっと。」
それだけ言うと、それきり六小は黙ってしまいました。そのまま、しばらくたっても
話しかけてこないので、夢は気になって自分から話しかけてみました。が、六小の
反応はありません。やがて校舎から、下校をうながす音楽『アンダンテカンタービレ』
が流れてきました。
「もう、下校時刻になりました。校内・校庭に残っている、用のない生徒は、早く家に
帰りましょう。掃除をしている人は、早くすませて家に帰りましょう。」
視聴覚委員の声が聞こえます。それでも夢は、しばらく鉄棒に寄りかかって
いました。さっきの六小の様子が気になって、帰るに帰れなかったのです。
音楽が高まるなか、なかなか帰らない子どもたちに向かって、マイクが
呼びかけます。
「校内・校庭で遊んでいる人、早く家に帰りましょう。」
そして、しばらくして音楽が静かに消えてゆくなか、視聴覚委員の最後の声が
響きました。
「これで、今日の校内放送を終わります。さようなら。」
あとは静寂だけです。その静寂のなか、ようやく夢は鉄棒から離れ、帰り支度を
始めました。
『考えていてもしかたがない、か。明日、また聞いてみよう。』
そして、六小の方をちらっと見ると、
「バイバイ、また明日ね。」
と言って、駆け足で帰って行きました。