風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第二部) 其の弐拾九

2010-03-22 23:44:57 | 大人の童話

「あっと、ごめんね。みんなが六小さんのこと忘れちゃうって、そんなことないよ。

みんな、ずっと覚えているよ。」

六小は、『そうかなあ』と半分疑問に思いながら夢に聞きました。

「本当?本当にそう思う?」

「うん、思うよ。だって忘れるわけないじゃない。母校なのに。」

夢は、一昨年六小が自分を励ましてくれたことを思いだしながら、一所懸命

六小を元気づけようと励まします。それでも、六小は不安そうでした。まだ、

「それは、夢ちゃんはそう思うだろうけど、みんなはわからないよ。」

なんて言っています。

「そんなことないって。」

「そうかなあ。」

夢は、『もう、六小さんたらどうしちゃったんだろう。』と心の中でやきもきしながら、

もう一度、大きな声で明るく言いました。

「そうだって。ねえ、だからそんなに悩まないで、元気だして。いつもの六小さんに

もどってよ。わたし、いつもの元気いっぱいの六小さんの方が好きだな。

つかれるけど。」

「つかれる、はよけいでしょ。」

「よけいじゃない。」

「よけい。」

「よけいじゃ・・・アハ、ウフフ・・・・アハハハ・・・・・」

二人は、いつのまにかいつもの調子にもどっていました。夢の言葉を聞いて、

六小もどうやら元気をとりもどしたようです。

「あー、よかった。何かすっきりした。夢ちゃんありがとう。もう、悩むのよそうっと。」

「うん、その方がいいよ。よかった、元気になってくれて。」

 いつもの調子にもどった六小を見て、夢も、ほっと一安心です。ちょうどその時、

「もう、下校時刻になりました。・・・・・・・・・」下校の音楽とともに、視聴覚委員の声が

聞こえてきました。

「あ、もうそんな時間。そろそろ帰らなきゃ。」

「そうね。夢ちゃん、今日はありがとう。」

「うん。また、明日ね。」

「うん。」

六小はそう言うと、スーッと消えていきました。夢は六小が消えると、ランドセルを

しょって、スキップしながら帰って行きました。