「あっと、ごめんね。みんなが六小さんのこと忘れちゃうって、そんなことないよ。
みんな、ずっと覚えているよ。」
六小は、『そうかなあ』と半分疑問に思いながら夢に聞きました。
「本当?本当にそう思う?」
「うん、思うよ。だって忘れるわけないじゃない。母校なのに。」
夢は、一昨年六小が自分を励ましてくれたことを思いだしながら、一所懸命
六小を元気づけようと励まします。それでも、六小は不安そうでした。まだ、
「それは、夢ちゃんはそう思うだろうけど、みんなはわからないよ。」
なんて言っています。
「そんなことないって。」
「そうかなあ。」
夢は、『もう、六小さんたらどうしちゃったんだろう。』と心の中でやきもきしながら、
もう一度、大きな声で明るく言いました。
「そうだって。ねえ、だからそんなに悩まないで、元気だして。いつもの六小さんに
もどってよ。わたし、いつもの元気いっぱいの六小さんの方が好きだな。
つかれるけど。」
「つかれる、はよけいでしょ。」
「よけいじゃない。」
「よけい。」
「よけいじゃ・・・アハ、ウフフ・・・・アハハハ・・・・・」
二人は、いつのまにかいつもの調子にもどっていました。夢の言葉を聞いて、
六小もどうやら元気をとりもどしたようです。
「あー、よかった。何かすっきりした。夢ちゃんありがとう。もう、悩むのよそうっと。」
「うん、その方がいいよ。よかった、元気になってくれて。」
いつもの調子にもどった六小を見て、夢も、ほっと一安心です。ちょうどその時、
「もう、下校時刻になりました。・・・・・・・・・」下校の音楽とともに、視聴覚委員の声が
聞こえてきました。
「あ、もうそんな時間。そろそろ帰らなきゃ。」
「そうね。夢ちゃん、今日はありがとう。」
「うん。また、明日ね。」
「うん。」
六小はそう言うと、スーッと消えていきました。夢は六小が消えると、ランドセルを
しょって、スキップしながら帰って行きました。