風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第二部) 其の拾九

2010-03-10 14:46:24 | 大人の童話

「だめだよ、浮くだけじゃ。やっぱり二十五メートル泳げなくちゃ。夢ちゃん、一所懸命

練習した?」

六小は、夢の反応におかまいなしに、話し続けます。

「ね、ちゃんと練習して、卒業までには二十五メートル泳げるようになって、わたしに

見せてよ。」

夢は、その言葉に、

「勝手に決めないでよ。二十五メートルって結構大変なんだから。」

と、ますますご機嫌ななめになってしまいました。しかし、そんな夢の気持ちに

気づいていない六小が、

「だから、一所懸命練習して・・・・・」

と言いかけると、夢は、その言葉を途中でさえぎって、

「うん、もう、うるさい!だいたい六小さん、この前わたしに何て言った?一所懸命

練習してもできないものはしようがない、って言ったじゃない。練習しても

できないんだもの。もう、いいでしょ。」

と言い、プイと横を向いて完全に怒ってしまいました。六小は、夢の激しい言い方を

聞くと、ペロッと舌をだして、

「あ~あ、夢ちゃん怒らせちゃったかなあ。まずかったかな。でも、わたし、これでも

がんばって励ましているつもりなんだけど・・・・・・」

などと独り言を言って、きまりわるそうにしていました。