風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第二部) 其の拾七

2010-03-06 23:23:35 | 大人の童話

一学期ももうすぐ終わりという日の昼休み、夢は一人、鉄棒の所でぼーっとして

いました。鉄棒の練習をしていたのですが、全然できなくて困っていたのです。夢は、

一年の時から鉄棒が苦手で、未だにさか上がりができません。一年の時、

さか上がりができなくて落ち込んでいた夢に、四小は優しく、「五年生ぐらいまでに

できるようになればいい。」と言ってくれました。この四年間、その言葉を励みにして、

一所懸命練習してきたのです。なのに・・・・・・できない。夢は、

”あ~あ、四小さん、五年になってもまだできないって知ったら、きっとがっかり

するだろうなぁ。ううん、それより、あきれられるかもしれないな。どうしよう。”

と、四小に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。と、その時、パァーッと大きな光が

射して、六小が現れました。

「な~に、夢ちゃんどうしたの。ぼーっとして。」

「なんでもない。六小さんには関係ないことだもん。」

「えー、それはないでしょ。わたしたち、友だちなんだから。」

「だって、六小さんに話しても、ちゃかされるか笑われるかのどちらかなんだもの。」

「そんなことないよー。ちゃんと聞いてあげるよ。」

「ほんとに。」

「うん。」

夢は、本当に大丈夫だろうかと思いながらも話してみました。夢の話を黙って

聞いていた六小は、聞き終わると、

「あはは、夢ちゃん、やっぱり鉄棒もダメなんだね。五年間練習してきて、まだ

できないんだったら、もうむりだって。いいかげんあきらめたら。」

「あー、六小さん笑った。だから、話すのいやだったのに。も・う!」

六小に笑われて、夢は怒ったように言いました。

「四小さん、ほんと、優しいんだね。夢ちゃんのこと一所懸命励まして。でもさ、

別に、さか上がりなんてできなくてもいいじゃない。それこそ、はんとう棒

上れないのといっしょでさ。」

六小は、別にそんなのどうでもいいというように、夢に言いました。

「よくないよ。体育の成績に関係するんだから。」

夢が言い返すと、六小は

「だからさー、わたしが言いたいのは、一所懸命やってもできないものは

しようがない、ということなの。それで成績が悪くてもいいじゃない。夢ちゃん、

せいいっぱいがんばったんだから。」

と、さらっと返してきました。そして、

「まあ、あんまり考えすぎないほうがいいよ~。」

と、笑いながら消えていきました。

「もう、六小さんたら、ほんとにお気楽なんだから。でも、ありがと。おかげで

なんか気が楽になったよ。」

六小が去ったあと、夢は校舎の方を見て言いました。すると、一瞬校舎がチカッと

光ったように夢には見えました。