一学期ももうすぐ終わりという日の昼休み、夢は一人、鉄棒の所でぼーっとして
いました。鉄棒の練習をしていたのですが、全然できなくて困っていたのです。夢は、
一年の時から鉄棒が苦手で、未だにさか上がりができません。一年の時、
さか上がりができなくて落ち込んでいた夢に、四小は優しく、「五年生ぐらいまでに
できるようになればいい。」と言ってくれました。この四年間、その言葉を励みにして、
一所懸命練習してきたのです。なのに・・・・・・できない。夢は、
”あ~あ、四小さん、五年になってもまだできないって知ったら、きっとがっかり
するだろうなぁ。ううん、それより、あきれられるかもしれないな。どうしよう。”
と、四小に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。と、その時、パァーッと大きな光が
射して、六小が現れました。
「な~に、夢ちゃんどうしたの。ぼーっとして。」
「なんでもない。六小さんには関係ないことだもん。」
「えー、それはないでしょ。わたしたち、友だちなんだから。」
「だって、六小さんに話しても、ちゃかされるか笑われるかのどちらかなんだもの。」
「そんなことないよー。ちゃんと聞いてあげるよ。」
「ほんとに。」
「うん。」
夢は、本当に大丈夫だろうかと思いながらも話してみました。夢の話を黙って
聞いていた六小は、聞き終わると、
「あはは、夢ちゃん、やっぱり鉄棒もダメなんだね。五年間練習してきて、まだ
できないんだったら、もうむりだって。いいかげんあきらめたら。」
「あー、六小さん笑った。だから、話すのいやだったのに。も・う!」
六小に笑われて、夢は怒ったように言いました。
「四小さん、ほんと、優しいんだね。夢ちゃんのこと一所懸命励まして。でもさ、
別に、さか上がりなんてできなくてもいいじゃない。それこそ、はんとう棒
上れないのといっしょでさ。」
六小は、別にそんなのどうでもいいというように、夢に言いました。
「よくないよ。体育の成績に関係するんだから。」
夢が言い返すと、六小は
「だからさー、わたしが言いたいのは、一所懸命やってもできないものは
しようがない、ということなの。それで成績が悪くてもいいじゃない。夢ちゃん、
せいいっぱいがんばったんだから。」
と、さらっと返してきました。そして、
「まあ、あんまり考えすぎないほうがいいよ~。」
と、笑いながら消えていきました。
「もう、六小さんたら、ほんとにお気楽なんだから。でも、ありがと。おかげで
なんか気が楽になったよ。」
六小が去ったあと、夢は校舎の方を見て言いました。すると、一瞬校舎がチカッと
光ったように夢には見えました。