風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第二部) 其の参拾壱

2010-03-23 23:10:34 | 大人の童話

夕方、大会が終わって夢が帰って来ると、六小がさっそく声をかけてきました。

「大会、どうだった?」

「うん、結果は惨敗。でも、四小さんとお話できてとてもうれしかった。久しぶりに

会って泣いちゃった。」

六小は、『やっぱりねえ~。夢ちゃん、よっぽどうれしかったんだなぁ。』と

思いながら、夢に言いました。

「ふ~ん、そう。結果は残念だったね。でも夢ちゃんにとっては、四小さんに

会えたことの方が大事で、結果はどうでもよかったのかもね。なんか、今、夢ちゃん

見ててそう思った。」

実は六小は、四小のことを楽しそうに話す夢を見て、四小にちょっとやきもちを

やいていたのです。すると、それを察知したかのように夢が言いました。

「六小さん、もしかして四小さんにやきもちやいてる?」

六小は、夢に自分の気持ちを見透かされていたことにあわてて、

「べ、べつにー。」

と、夢の言葉を打ち消そうとしました。しかし、

「うふ、ごまかしてもだめ。わたしと六小さんの仲じゃない。ちゃんとわかっているよ。

大丈夫よ。前にも言ったように、わたし、六小さんのこと好きだから。四小さんの方が

もちょっと好きだけどね。」

と夢に言われ、打ち消すことはできませんでした。六小はさらにあわてて、

「わ、わかってるよ、そんなこと。それに、別に、四小さんにやきもちなんて

やいてないよ。」

と、チカチカ細かく光りながら言いました。

「うふふ、はいはいわかりました。じゃ、そういうことにしておきます。」

「何よ、その言い方、急に改まっちゃって。」

「うふふふ・・・・・」

六小はカァーッとなってしまいました。

「もういい、わたしもどる。」

「あ、そう。じゃ、またね。」

「もう!」

六小は照れかくしに、半ば怒ったような感じでもどっていきました。


風の向こうに(第二部) 其の参拾

2010-03-23 21:30:03 | 大人の童話

十一月、夢は四小を会場として行われる、市内ドッジボール大会に出ることに

なりました。夢は、四年ぶりに四小に会えると思うと、うれしくて落ち着いて

いられません。すると六小が、そんな夢の様子を見て、声をかけてきました。

「夢ちゃん、四小さんに会えるんでうれしいんでしょ。」

夢は、本当に心の底からうれしくてたまらない、という感じで答えました。

「うん。だって、久しぶりに会えるんだもの。もう、うれしくてうれしくて。」

六小は、夢があんまりうれしそうに言うので、ちょっといじわるを言ってみたく

なりました。

「ふ~ん、でもさ、もし四小さんが、夢ちゃんのことを忘れちゃってたらどうするの?」

夢は、一瞬ドキッとしましたが、わざと平気なふうをして言いました。

「何よ。四小さんは、わたしのこと忘れるなんてことないもの。絶対。」

六小は夢の言葉を聞いて、ますます調子にのって言います。

「わかんないよ~。」

夢は、半分泣きそうになりながら、大きな声で六小に言いました。

「絶対ないったら!六小さんのいじわる!」

「うふふ、夢ちゃん泣きそう。」

六小は、夢のあわてている様子を見て、おもしろそうにしています。

「もー、六小さんはー。」

夢は手をふりあげて、いまにも六小につっかかっていきそうです。最も、夢が

いくら手をあげてつっかかっていこうとしても、六小には届かないんですが。

「うふふ、夢ちゃんっておもしろい。」

六小はそう言うと、楽しくてしようがないという感じで、笑いながら消えていきました。