風の向こうに  

前半・子供時代を思い出して、ファンタジィー童話を書いています。
後半・日本が危ないと知り、やれることがあればと・・・。

風の向こうに(第二部) 其の拾三

2010-03-02 23:11:05 | 大人の童話

夢へのいじめは、まだあります。夢のクラスでは、毎朝先生が教室に来るまでの

時間、班ごとにまとまり、各人がお互いに忘れ物していないかなど、いろいろ

チェックしあい、チェックの結果、一つでも評価の悪かった人は、罰として校庭を

走って三周しなければならない、という決まりがありました。各班には、先生から

班ノートが渡されていて、班長が、各人の評価を記入したノートを、毎日先生に

見せることになっていました。先生は各班のノートを見て、子どもたちの様子を

判断していたようです。夢は、必ずといっていいほど悪く評価され、毎日のように

校庭を走っていたから大変です。先生は、夢の班のノートを見て、更に、夢のことを

よく思わなくなったのでした。夢の母親に、「夢はわがままで、みんなとの協調性が

ない。性格もきつい。家庭で、もう少しきちっと教育・躾してほしい云々。」という

手紙を出しました。しかし、手紙に書かれた夢の性格は、事実とは違って

いたのです。夢の母親はすぐに、手紙に書かれていることは事実とは違う、と手紙で

先生に反論しました。それ以降、先生は夢に何も言わなくなりました。が、やはり、

夢のことはよく思っていませんでした。夢は校庭を走ることはなくなりましたが、

仲間はずれにされる日々は続きました。班替えの時はどこの班も入れてくれず、

一人所在なくぼーっと立っていました。やがて、夢が一人ぼーっと立っていることに

気づいた先生が、「あら、まだ班が決まってない子がいるじゃないの。

仕方ないわね。あなたたち、かわいそうだから入れてあげなさい。」と、一つの班に

言いました。名指しされた班の子たちは、先生に言われたので、ほんとは

いやなのに、「は~い。」と返事して、しぶしぶ夢を入れたのでした。校外学習の

社会科見学の時も、夢はお昼を一人で食べました。夢は、本当に一人ぼっち

だったのです。