昭和四十四年、五年生になる時にクラス替えがあり、夢のクラスの担任は、
男の先生になりました。クラス・先生が替わり、悪夢のようだった一年間から
抜け出すことができ、夢はほっとしていました。クラス替えのおかげで、四年の時は
別のクラスだった子たちと友だちになり、大の仲よしになりました。先生も、とても
いい先生で、夢は大好きでした。先生は四年の時の夢の事情を知り、五年になった
最初の学級会の時、いじめはしないように、いじめられる子の気持ちを考えて、
友だちとして仲よく接するように、とクラス全員に向かって話してくれたのです。その
おかげで、小さなチクチクいじめはまだ続いていたものの、四年の時のような
はっきりとわかるいじめ・仲間はずれはなくなりました。そして何より、仲よしの
友だちが二人できたことが、夢にとって大きな喜びとなっていました。大きな喜びの
なか、夢は思います。つらい目にあった一年間、出口がないとも思われた暗闇の
中、それでも、確かにひとすじの光は射していたのだ、と。それは・・・・・ 六小。
あの時、いつも六小が側にいたことは、夢にとって大きな支えとなっていたのだ、
と。五年になってすぐ、夢は六小に言いました。
「六小さん、五年生になって友だちもできたよ。うれしい!去年は心配かけて
ごめんね。そして、いろいろありがとう。もう大丈夫だから安心してね。」
「夢ちゃん、ほんと、よかったね。」
六小は、ほっとしました。そして、ようやく安心したのです。どうやったら夢を
なぐさめることができるのかわからなかった一年間、きゃぴきゃぴといつも騒々しい
六小も、さすがにこの一年間は沈んでいました。そんな六小の気持ちを思い、夢は
もう一度、お礼を言いました。
「わたし、六小さんにどれだけ励まされたかわからない。本当にありがとう。」
六小は、にこっと笑って答えました。
「ううん、いいよ別に。それより、今年からまた、二人で言いあいながら笑えるね。
よかった、楽しくなりそう!」
「うん。六小さん、またキャーキャーうるさくしないでよ。」
「あら、それはわたしの地だもの、しょうがないわ。いやだったら、別につきあって
くれなくてもいいのよ。」
「また、そんなこと言う!」
「うふふふ、あははは。」
六小は大きく光りながら、夢は顔をくしゃくしゃにして、久しぶりに声をあげて
大笑いしたのでした。