これで、私と夢ちゃんの物語はおしまいです。はぁ~、長かったぁー。え、そうでも
ない?それはうれしいです。でも、なんでちょこちょこ、四小の姉さんが出て
くるんだろう。これは、私と夢ちゃんのお話のはずなのに。う~ん、わからない。
今度、夢ちゃんに聞いてみよっと。
さあ次は、夢ちゃんが大人になってから、四小の姉さんと私に会った時の物語です。
でもその前に、ちょっとしたコラムのようなものを書くそうです。〔夢ちゃんからの伝言〕
コラムって、何書くんだろ。わくわく。
これで、私と夢ちゃんの物語はおしまいです。はぁ~、長かったぁー。え、そうでも
ない?それはうれしいです。でも、なんでちょこちょこ、四小の姉さんが出て
くるんだろう。これは、私と夢ちゃんのお話のはずなのに。う~ん、わからない。
今度、夢ちゃんに聞いてみよっと。
さあ次は、夢ちゃんが大人になってから、四小の姉さんと私に会った時の物語です。
でもその前に、ちょっとしたコラムのようなものを書くそうです。〔夢ちゃんからの伝言〕
コラムって、何書くんだろ。わくわく。
夢は、別れる前に六小に言っておかなければならないこと、があったのを思い出し
言いました。
「六小さん、卒業文集に六小さんのこと書けなくてごめんね。でも、あなたとの
思い出は、いっぱいわたしのなかにあるよ。わたし、六小さんとお話することが
できて、本当によかった。五年間も・・・・・本当にありがとう。」
夢の声は、最後は半分涙声になっていました。六小は言いました。
「ううん、文集のことなんてもういいよ。夢ちゃんが、わたしを好きでいて
くれたってことはよくわかっているし、たぶん、これからも好きでいてくれるだろうし。
それより、わたしの方こそありがとう。五年間、夢ちゃんとお話することができて、
本当楽しかった。これも、四小さんのおかげかな。四小さんが、夢ちゃんと
心通わしてくれていたから、それで、わたしもできたのかな。だとしたら、四小さんに
感謝しなくちゃ、ね。夢ちゃん、いつか・・・また・・・会いに来てね。待ってる・・・・から。
きっと・・・・待ってるから・・・・・来てね・・・・・・。」
声はだんだん細く小さくなっていき、光とともに消えようとしています。夢は消えていく
光に向かって、大きな声で叫びました。
「五年間、本当にありがとう!必ず、また、会いに来るからね!」
その声に、今まさに消えようとしていた光が、一瞬大きく輝きます。最後の輝きが
消え、すべてが元にもどると、夢は、六小に向かって大きく手を振り、前を向いて
歩き出しました。
完
夢は、六小のあまりに大きな声と、予想もしなかった言葉にびっくりして、
「な、何よ、急に。せっかく人が、六小さん立派になったなあ、これなら、もう
大丈夫だな、と思って安心できたから行こうと思ったのに。」
と、歩き始めようとしてた足をひっこめて言いました。
「だって・・・ヒック・・・・まだ・・・ヒック・・・・わたし、お礼も言ってないのに・・・ヒック。」
六小は、まだ泣いています。六小を励まそうと、夢は明るく話しかけました。
「もう、六小さんたら何泣いてんのよ。いつもの元気はどうしたの。お礼なんていいよ。
お礼言わなきゃいけないのは、むしろわたしの方でしょ。お世話になったんだから。」
「だって・・・・・だって・・・・・」
「涙を拭いて六小さん、わかったから。何も言わないで行こうとしてごめんね。今朝
話したから、いいかなと思って声かけなかったの。声かけたら、別れられなく
なりそうで。」
夢の言うのを聞いて、六小はやっと泣きやみました。六小は、自分の存在に
気づいてくれ、五年間をともに過ごしてきた夢が、いくら、朝に少し話したからって、
今、別れるというこの時に何も言ってくれないなんて、と淋しかったのです。少し
たつと、六小は笑顔を見せて言いました。
「夢ちゃん、卒業式良かったよ。わたし、感動して泣いちゃった。」
「式、見ててくれたんだ。それにしても、六小さん、今日は泣き虫だね。」
「あたり前でしょ。夢ちゃんの卒業式だもの。泣き虫ったって、泣かせたのは
誰よ。」
「うん、そうだね。」
六小の言葉に、夢も明るく笑顔で答えました。
「わたしからの卒業証書、大事に持っていてね。」
「うん、もちろん。ずっと大事に持ってるから。」
「ありがとう。」
写真撮影のあと、いったん教室へもどってクラスで別れを惜しんだあと、夢たち
卒業生は在校生に見送られ、校門の所まで行きました。二年生二学期始業式の日、
始めて見る六小の立派さに目をみはり、中に入るのも忘れて、しばらく校門の脇に
佇んでいた夢、あの時と同じ大きな校門を、今、夢は出て行きます。校門を出た所で
立ち止まり、振り返って校舎を仰ぎ見ると、そこには、凛として建つ第六小学校の
姿がありました。夢は、しばらくじっと六小を仰ぎ見ていましたが、やがて、
決心したようにうなずいて、また歩き始めようとしました。と、なんと今までにない
大きな輝きの光が夢を包み込み、これまた今までに聞いたこともない、地を
震わすような大きな声があたり一面に響き渡りました。
「ちょっ、ちょっと待ってよ、夢ちゃん!もう行っちゃうの。そんなのって・・・ないよ・・・・
エッ・・・・エッ・・・・・」
六小は泣いていました。
式が終わると、夢たちは卒業記念写真を撮るために、屋上に上がりました。
屋上からは、地域の町が見渡せます。六小の周りは、六小ができた五年前に
比べると、だいぶ家が増えてきていました。それでも、まだまだ畑や林が多く自然に
恵まれています。屋上を吹き渡る風を頬にうけ、遠くに見える町並みを眺めながら、
夢は、
『これから、この辺はどんなふうになってゆくんだろう。その時、わたしはどこに
いるんだろう。まだ、ここに居るんだろうか、それとも、どこか他の所に往って
居るんだろうか。』
などと、とめどなく思っていました。いよいよ写真を撮るというその時、式の間は
泣かなかった夢も、さすがに感きわまり涙が出そうになって、あわてて手で眼を
こすりました。涙をこらえて撮った卒業写真、でき上がってきたその写真の後ろには、
下部半分だけ、夢の大好きな、六小が”これもわたしの一部よ”と言った、あの
時計台が写っています。