あめふり猫のつん読書日記

本と、猫と、ときどき料理。日々の楽しみ、のほほん日記

5歳になろう。

2010-12-04 00:17:20 | 本(児童書・絵本)

だってだってのおばあさん だってだってのおばあさん
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:2009-01
これは、図書館で借りた本です。

さきごろ亡くなった佐野洋子さんのコーナーが子ども室にできていて、その棚で借りました。

佐野さんの絵本といえば『100万回生きたねこ』。でもちょっとビターな部分もありますよね。

この絵本は可愛らしい、ホッとできる本でありました。

あるところにおばあさんとげんきな男の子の猫が住んでいて、おばあさんは98歳。

猫は毎日魚つりに出かけて、「おばあさんも さかなつりに おいでよ」と誘いますが、おばあさんは、「だって わたしは98だもの、98のおばあさんがさかなつりをしたら にあわないわ」とことわります。

「だって わたしは98だもの。だからできない」というのがおばあさんの口癖なのです。

ところがおばあさんの99歳の誕生日の日、ちょっとした事件が起こります。

ケーキを焼くのが得意なおばあさんは、手作りケーキを焼いた後、ケーキに立てる99本のろうそくを買ってくるように、猫に頼みます。

ところが、猫は泣きながら帰ってくる。ろうそくを川に流してしまい、残ったのは5本だけだったから。

おばあさんは、「5ほんだって、ないよりましさ」といい、ろうそくをケーキに立ててもらいます。

そうして、ろうそくが5本だから、「5さいのたんじょうびおめでとう」と言って祝います。

そうして、次の朝猫におばあちゃんもつりにいこう、と言われて、いつもの口癖を言いかけて「だって わたしは 5さいだもの……」と口に出たので、そうね、5歳なんだから行ってみよう、と心も変わるのです。

おばあさんはその日、本当に久しぶりに遠くへ行って、いちにち猫と遊ぶのです。5歳の幼い女の子のように。

ああ、たまには5歳の女の子になるのもいいな、と素直に思える本でした。

あとがきに、“たくさんのたくさんのおばあさんに、この絵本を贈りたいのです。でもこれ子供の絵本でしょうって?だって、おばあさんは一番たくさん子どもの心を持っているんですもの”とありました。

でもおばあさんだけにではなく、人生の折り返し地点に立つ私のような年代の女にも、この本は心に響きました。

実際の年齢も、まわりからみる年齢も、変えることはできない。

でも、こころは、ときには自分で年齢を決めてもいいのじゃないかな、と思えたのでした。

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つくり話と、物語のあいだ。

2010-10-12 18:28:59 | 本(児童書・絵本)

うそつきの天才 (ショート・ストーリーズ) うそつきの天才 (ショート・ストーリーズ)
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:1996-11
数日前のシンさんのコメントに、“何も無い所から、自分に関係ない人間を創りだすことはできない”という文章があって、物語もそうかもなぁ、と思いました。

物語を創りだすためには、自分の血の通った経験に裏打ちされた、物語のタネ、が必要なのではないかと。

それで、連想したのがこの本です。

ウルフ・スタルク『うそつきの天才』。児童文学です。

この作家に興味を持ったのは、『シロクマたちのダンス』という本のあらすじを読んだことからでした。

シロクマ、とは主人公の少年のお父さんのあだ名で、あらすじ紹介はこんな文章だったかと思います。“ぼくは、自分の家族はけっこう上手くいってると思ってた。クリスマスの少し前、お母さんがお父さん以外の人の赤ちゃんを妊娠してると分かるまでは……”

ちょっと“え~~~っ!”という感じでした。子ども向きの本です。図書館の子ども室にあるのです。なのにこういうテーマ?

趣味程度ですが自分でも童話を書くので、内外の児童文学を知りたい、読みたいと思っている時期でした。外国作品は日本のものとはテイストが違う、とは思っていましたが、それにしても驚きでした。

けれどその一方で、子どもだましの子どもの話なんて、いやだ、と思っていた時期でもあり、これで良いんだ、そうだよね、書き方には慎重さとデリケートさが必要だけど、子どもの本だって、大人向けと同じテーマを盛り込んだっていいんだ、とも思いました。

けれどいまだにその『シロクマたちのダンス』は読んでいなくて、買ったのは『うそつきの天才』だったという……

たぶんこれは自伝的なエピソードだろうと思い、物語を創りだすひとの最初のきっかけ、みたいなものに興味があったのです。

こんな話です。主人公はうそをつくのが得意で、つくり話も自在に思いつけるのです。小学生である彼は、作文の宿題が結構ありますが、いままで困ったことがなかった。うそばかり書いて、しかもけっこういい点をもらえていたのです。

ところが、彼のうそを見破る先生があらわれて、いっこう良い点がとれなくなる。そして、自分の他愛ないうそからとんでもないトラブルに見舞われて……という話で、結末もなかなか愉快。

軽いタッチの話で、期待したほど物語のタネについて書かれてはいないのですけれど、教訓的なだけではない味わいがあります。

この作家の『おじいさんの口笛』という本も大好きで、こちらはしみじみとした感動のある話ですけれど、やはりいわゆる教科書的“いい子”が主人公でないのがイイのです。

おじいちゃんの口笛 おじいちゃんの口笛
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:1995-02

おじいちゃんにおこずかいをもらった友達がうらやましくて、老人ホームにいって孤独な老人に孫をよそおって近づいて、自分たちもおこずかいをもらおうとするちゃっかりした悪ガキ的少年二人が主人公。

それが思わぬ方向に動いて、少し悲しいけれど、透明で爽やかな結末に辿りつく。

忘れられない印象のある1冊です。

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忘れられない、子どもの頃の本。

2010-07-28 22:49:11 | 本(児童書・絵本)

こちら本の探偵です (ちくま文庫) こちら本の探偵です (ちくま文庫)
価格:¥ 735(税込)
発売日:2005-09-07
こういうことって結構あると思います。

子どもの頃読んだ本で、今も懐かしく再読したいけど、タイトルも作者も思い出せないってことが。

私も折にふれふと心にひっかかるそういう本が何冊かありますが、そのうちの一つを、先日友達と話していて思い出しました。

きっかけは、子どもの頃の交通事故の話をしたことだったのです。

偶然、別の友達にそれぞれ1回ずつ、話のなりゆきからそんな話をしました。

小6のときで、たいして怪我もしなかったのですが、そのことを思い出すと、いつも決まって連想する物語があるのでした。

『二畳間の三人』という話です。

なんだ、タイトルは分かってるんじゃないかと思われるでしょうが、これは短編集に入っていた1編なのです。

小学校の図書館で借りた、ちょっと変わった短編集でした。何巻か、少なくとも2巻は、あったと思います。

そうして、私の記憶だと、それはプロの作家の書いたものではなく、小学校の先生たちが描いた物語を集めたものだったかと思います。

いや、プロもいたのかな?何巻目にか、灰谷健次郎氏が書いてらしたように思うので。

(でも、たしか灰谷氏も教職に就かれていたことがあったような……)

閑話休題(それはさておき)。『二畳間の三人』は、私の記憶によるとこんな話でした。

突然の事故でお父さんを失った親子三人が、それまで住んでいたところにいられなくなって、知り合いの好意で茶室に住まわせてもらうことになるのです。

お母さんと、お姉ちゃんと、弟。お姉ちゃんが、“わたし”。主人公です。

二畳間に三人が寝るのですから、それはもう大変。ハンモックを吊って、弟はそこで眠るのです。ギリギリの暮し。

でも、お母さんはとっても前向きで、不自由も面白がって、それが子どもたちにも伝染してそんな中でも楽しく暮らせるようになってきた頃、もう一つの不幸が襲います。

主人公の女の子が歩けなくなったのです。事故の後遺症でした。

お父さんが亡くなった事故は、二人で遭ったのでした。お父さんは娘をかばって亡くなり、女の子はそのときはかすり傷程度と思われていました。

ところが彼女も傷を負っており、半年もたって、後遺症が出てきたのでした。

私は事故の後、やはりかすり傷程度だったけど、その話のように後遺症がずっと後になって出たらどうしよう、と怖くなったのを覚えています。

でも、それから何十年も過ぎているので記憶もあいまいになり、探し当てるのは難しくなりました。もしかすると、記憶が全然違っているかもしれないのです。

上にあげた本の著者、赤木かん子氏は、本の探偵、と自称しており実際依頼者の記憶の断片から過去に読んだ本を探し当てる名人です。

こんな方に相談出来ればな……と思いながらそう出来るはずもなく、子どもの頃の気になる本は、いまだ幻のままなのでした。

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心のなかのふるさと。

2010-04-15 00:46:38 | 本(児童書・絵本)

おじいさんの旅 おじいさんの旅
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2002-11
来週、両親は母の兄弟たちと、数日旅行に行く予定です。

四国に住む母の姉に久しぶりに会うのが目的の一つ。

余談ですが、母の姉、私にとっての伯母と、3年ほど前に亡くなった伯母の夫である伯父は、クリスチャンでありました。

そのせいでもないでしょうが、私が小学生で、まだ伯母たちが花巻に住んでいた頃、遊びに行って出してもらった軽食がミネストローネスープとピロシキ、という私にとってはハイカラ(死語?)メニューでした。

伯母は息子の家に同居するために四国へ行ったのでしたが、私は寒い東北より、年配になってからは四国の方が温かくていいかも、と思ったのですが、歳をとってから馴れぬ土地に行く、というのは大変なことも多いようです。

そうして、伯母が一番遠いけれど、母の兄弟たちも、実家にいる母の二番目の兄をのぞいては、みな東京に暮らしています。(父の兄弟たちもおおむね同じ)

それにべつだん不便を感じていなかったはずですが、最近、とくに母のすぐ下の弟である叔父を見ると、歳をとってくると、ふるさとというのが若い頃よりずっと懐かしくなるものなのだな、と思います。

叔父は昔語りの会に語り部として出たり、ふるさとの懐かしい言葉を集めて、手作りの小冊子を作ったりしているのでした。

そういう様子を見ていると、上記の絵本『おじいさんの旅』をよく連想します。

この物語は、孫が語り手となって描かれる、彼の祖父の人生を綴った静かな本。

祖父は若い頃、希望とチャレンジ精神を胸に、アメリカへと渡ります。苦労は色々あるけど、新しい世界で生きる刺激も、楽しんできたのです。ところが歳をとってくると、自分が子ども時代を過ごした、日本が懐かしくてたまらなくなる。

望郷の思いに耐えきれず、日本に戻ってきてしまいますが、こんどは、アメリカで生まれ育った娘は、日本になじめない……。

人間にとってふるさととはなんなのか。いや、ふるさとという土地はあっても、結局のところどこにも行き場は無いような気もして、少し切なくなった絵本でした。

まだ、私はこのおじいさんや叔父の気持ちがわかるようになるまでには歳を重ねなければならないでしょうが、若い頃にははるか遠かった道の向こうをうかがう年齢になったのだな、とも思います。

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冬休みにおススメの一冊 『精霊の守り人』

2009-12-30 22:38:58 | 本(児童書・絵本)

精霊の守り人 (新潮文庫) 精霊の守り人 (新潮文庫)
価格:¥ 580(税込)
発売日:2007-03
古典になっていない児童文学の中で、私が最も素晴らしい、と思ったのがこの本です。

もっとも、シリーズが始まったのは10年以上も前のことですが、寡聞にして存知あげなくて、私がこの本を読んだのは最近のことです。(2年前くらい)

でも、図書館の子ども室でこの本を見たとき、きっと面白いはずだと思いました。

それはなぜかというと、本がボロボロだったからです。

たくさんの子どもたちに愛された本なのだと思いました。そして読んでみると、期待を裏切らない内容でした。

“バルサが鳥影橋を渡っていたとき、皇族の行列が、ちょうど一本上流の、山影橋にさしかかっていたことが、バルサの運命を変えた”

という、ドラマチックかつ切れの良い書き出しに、まずやられてしまった。

背景世界の緻密さや、骨太のストーリーにももちろん惹かれ、子ども騙しでない、子どもを馬鹿にしていない児童文学であることも感動したし、こんな児童文学があったのか、と思いました。

キャラクターが生き生きしているのは、いうまでもないことですし、『バルサの食卓』の記事でも書きましたが、出てくる食べ物がおいしそうなのも、世界の実感が響いてきて嬉しいのです。

一冊一冊、大切に読むのもいいのですが、長い休みに一気に読むのもいいのかな、と思って書きました。

大人が読んでももちろん面白いのですが、子どもたちはもっと、異世界にすんなり入っていけるのだろうな、とちょっと羨ましい。

私もシリーズ全部を読み切っていないので、心を研ぎ澄まして、この鮮やかな世界に入っていきたい、と思っています。

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