カタチあるもの

宇宙、自然の写真をメインに撮っていますが、時々、読書、日常出来事について書きます。

【三浦 しをん】 舟を編む

2018-07-11 19:59:10 | 読書_感想

 

【作品概要】

 作 者 : 三浦 しをん

 発 表 : 2011年

 出版社 : 光文社

 

【物語の始まり】

 荒木 公平は大手総合出版 玄武書房に勤務して37年、今年、定年を迎える。入社して一貫して辞書編集に携わってきた。今、編集部では辞書「大渡海」の編纂に取り掛かってる。そんな中で辞書編集部を去るのは心苦しいのだが、荒木をずっと支えてきてくれた妻の体調が思わしくないこともあり、定年後は妻の介抱をしようと心に決めていた。だから、なんとしても「大渡海」編纂の後継者を見つけなければならない。

 各編集部に辞書編纂に向いている人材はいないかと声を掛け、第1営業部に辞書編纂に向いている人材がいるらしいとの情報を仕入れた。早速、第1営業部へ行き、一番近くにいた女性に声をかけようとして、はたと気づいた。

 「しまった、肝心の名前を聞いてなかった。男か女なのかもわからない。期待しすぎて焦ってしまった。」  その時、部屋の隅にいる男に視線が吸い寄せられる。痩せて背が高く、営業部員としていかがなものかと思われるほど、髪の毛がぼさついている。あの男だ、あの男こそ次代の辞書編集部の主にふさわしい。男は、馬締 光也と名乗った。

 

【感 想】

 この物語の主人公は、常人とはテンポが合わない風変わりな真面目さを持っていて、端的に言うとうだつが上がらず結婚など一生できないだろうと思わせてしまうような男です。しかし、言葉が好きだという天性の才能を与えられていたんですね。

 うだつが上がらない男でも天性の才能を生かす仕事に就いた時、短所と思われていたところが長所となり、不器用だけど一本筋の通った魅力的な男に変身し素敵な女性と結婚してしまう。そして、好きなことを淡々とじっくり時間をかけて行うから、10年、20年経ったときに大きな成果として現れる。そんなサクセスストーリーです。

 物語は静かに淡々と進行していく感じで、冒険やアクション、大きな感動もないのですが、馬締 光也と周りの人達が丁寧に描かれていて、物語の場面がイメージとして浮かんできます。だから、映画になり、アニメになったんでしょうね。良作だと思いました。

 この物語のテーマとなっている言葉、もし言葉がなかったらと考えると大変なことです。人と人とのコミュニケーションはボディーランゲージ、記憶も映像でしか思い出すことができない。思考もあやふやで論理的な組立ができない。やっぱり動物レベルまで退化してしまいますね。言葉を大事にしなきゃと思いました。

 



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