心の山を歩いていこう!

単に山頂を目指すより、山歩きそのものを楽しみたい。
そんな思いを備忘録として綴ります。

秋の三斗小屋温泉煙草屋旅館。

2019-11-03 18:00:00 | 山の宿
今年の山の温泉、第二回目は那須の三斗小屋温泉。
初めての三斗小屋温泉は大黒屋か煙草屋かと迷ったが、露天風呂のある煙草屋旅館に予約を入れる。

那須岳を歩いて来るとまだ11時半前。あまりにも早い時間なので行きたいと思っていた、三斗小屋宿跡へ向かう。


途中、台風大雨のせいか道がかなり荒れていたが、三斗小屋宿跡はそんな出来事を感じさせず、長閑な秋の中に佇んでいた。



まるで時の止まった空間に迷い込んだ様に感じる。



三斗小屋温泉に入ると、大黒屋の建物がひょっこりと顔を出す。

  

大黒屋の歴史をにじませる建物。こちらも時間の流れを止めたかの様な雰囲気を感じさせる。



上がって行けば、煙草屋旅館が見えて来る。


 
秋の陽気の中、洗濯物が気持ちを和ませる。



入り口は建物と建物の間。いわゆる旅館としての正面玄関ではなく、少し迷う。



入口を入る。山小屋らしい飾り気の無い造り。



部屋に案内される。早い時間なのでまだ誰もいないが、相部屋と言われるが、まさか四人部屋になるとは。
奥に空いている部屋もあったし、二人組の方々は一部屋対応だったし、無理に押し込まなくてもいいのに。



日当たりの良い縁側通路。
ここが荷物置き場となる。



早速まだ誰もいない露天風呂へ行く。ここから眺められるのは大倉山、流石山の稜線。これらの山を歩いて来て、露天風呂に入りながら山歩きを振り返るなんて事が出来れば最高、なんて事を思い描く。



内風呂。これと別に女性内湯がある。夜八時半までなのが、物足りない。とは言え夕方三時半からと夕食後の二回、ゆったりと堪能させてもらった。



夕方、風呂上りに見た外の景色。
時は長閑に夕方に向かって流れる。



夕食は17時15分から大広間にて。太鼓の音が告げる。
山小屋だからとやかく言えないが、温かいものが一品あるのが望ましい。味噌汁もぬるかったのが残念。



夕食後、同室の方々と話の場を求めて談話室へ。
火鉢があるが、火が入っていないので薄ら寒く、すぐ部屋へ戻る。



翌日の天気。
予報通り曇り。でも、露天風呂から眺めた、霧深い漆黒の闇が少しずつ明けていく景色は印象深く刻まれた。


朝食は6時半から。朝も太鼓の音が告げる。
正直、淋しいメニュー。朝も味噌汁がぬるいのにガッカリした。
 

雨が降らないうちに早々と出発。



感想は、星☆☆。 
宿泊者他の人達にも聞けば、ここに泊まるのは初めてという方々ばかりで、逆に言えばリピーターの方はいなかった。(今回限りなので宿泊者全員がそうという訳ではない。)

次に三斗小屋温泉に来るのなら、大黒屋に泊まろうと思う。三斗小屋温泉は雰囲気の良い場所なのでまたいつの日か訪れてみたい。

    (2019年10月28·29日)

(終わり)

秋と温泉を満喫、日光澤温泉。

2019-10-13 18:00:00 | 山の宿
山の温泉宿に行きたくなった。
歩いてでしか行けない、山の宿、日光澤温泉へと向う。


大清水から鬼怒沼を越えて、降りてくると、赤い屋根が見えて来た。日光澤温泉の建物のようだ。



建物正面から。
まだ日は高いが、一時半から入れるのが有り難い。



玄関の引き戸を開けると、上がり框の先にもう一枚引き戸がある。昔の家を訪ねた気になる。 


入ってすぐの売店には古い振り子の時計が掛かっている。ノスタルジックな雰囲気が漂う。



案内された部屋。狭いけれど、縁側もある。



まだ誰もいない一番風呂へ向かう。
四つある風呂のうちの男性用内風呂。



露天風呂は上と下の二箇所。
こちらは上の露天風呂。お湯の温度が熱いのと、日差しが眩しいので早々に切り上げる。



こちらは下の露天風呂。
仕切りがあって、手前が熱め、奥が温め。この時間は手前に入ったが、奥の温い方がお気に入りで、夕暮れ時浸かり過ぎてのぼせてしまった。


湯上がり後、廊下の窓からの景色。
ゆったりと静かに時間が流れていくのがとても良い。



夕暮れ時の玄関。
灯りが看板の文字を浮かび上がらせる。



玄関を入ってすぐの休憩場所。
まだ十月半ばなのにストーブに火が入っていた。



食堂前の廊下。
そろそろ夕食が待ち遠しくなってきた。



夕食メニュー。
食事だけでなく、濁り酒が美味しくお代わりしてしまった。



食事処には囲炉裏端もある。


翌朝のメニュー。
漬け物が四種類あるのが嬉しい。甘味も付いている。



また鬼怒沼を越えて行くので早めに出発。立ち昇る煙を見ていると名残り惜しく感じる。



振り返り、建物にもお別れを告げる。



古い建物をくぐって、昨日来た道を戻る。今日は天気がはっきりしないので鬼怒沼に向かう人はいない様だ。



初めて訪れた日光澤温泉。初めてとは思えない懐かしさに溢れていた。
この佇まいは何時までも残して欲しい。
またいつの日かこの懐かしさが恋しくなったら、訪ねよう。

      (2019年10月8·9日)
(終わり)











赤湯温泉、山口館。

2018-07-26 21:00:00 | 山の宿
赤湯温泉に初めて泊まったのはかれこれ十五年以上も前の秋深まる十月末。
苗場山に登る事を告げると、「冬の用意でいらっしゃい。」と言われたが、やはり秋の気温だったため冬支度では暑く、汗だくで降りてきたことを今でも憶えている。

露天風呂もさることながら、薄暗い囲炉裏を囲んでのお婆ちゃんの心尽くしの夕餉、御主人の朴訥の語りが記憶の端々に刻まれている。

あれからすっかり月日が経ち、何処かしら変わっているかと思うが、断片を繋ぎ合わせた記憶が蘇ってきた今、もう一度行きたいと強く感じていた。

そして、今回夏の苗場山にも行きたく、念願の再訪を果たした。


林道の入り口に迷いながらも小日橋にまでクルマを入れる。
過去の自分は迷わずここまでスンナリ来れた事を思うと、カンが鈍くなったのかと呆れる。

橋を渡ると眼下に清津川が緩やかに流れる。ここから歩いて宿に向かう。



林道は緑眩しい木陰のおかげで涼しい。



林道終点付近の休憩場所。
ここでひと息ついてこの先の登山道歩きに備えたい。



木漏れ陽もれる棒沢の流れ。



この先は釜段ノ滝。残念ながら橋からは滝壺が見えない。



これから先は本格的な登山道。なかなかの登りとなる。



木々が開けると、近くの山が見える。秋木々が色づく頃、どんな様子なのだろうか。


やがて緩やかな下りとなる。身体のほてりが少しずつ引いていく。



羊歯の茂る森となる。この先には九十九折の急坂が待っている。



清津川に掛かる鉄橋を二つ渡ると宿はすぐそこ。橋の真ん中から野天風呂の建物が見える。



念願の宿に到着。昔と何ら変わらない建物。



玄関付近も全く変わっていない。過去にタイムスリップしたかの様。



二階の渡り廊下から一階の居間を見下ろす。ここもほぼ変わらず、懐かしさがこみ上げる。



「青湯」
本来日中は女性専用だが、この日は女性客がいなかったので、断って入れさせてもらった。汗で冷えた身体には少し熱いくらいだが、寛げる。



「薬師湯」
こちらも回りを囲っているが、日中は男性専用。なので気兼ねなく入る。こちらもやや熱めのお湯。



「玉子の湯」
温泉にばかり浸かっているとのぼせそうだが、こちらは温めでしかも囲いの無い、露天風呂。ゆったりと青空を見あげながら、身体も心も解れていく気持ち良さを実感。



この日の夕餉。
山の恵みの優しい味わい。ここでしか味わえない山菜料理に感謝。



暗くなるとランプの灯りが部屋にともる。
電気の明るさに慣れていると薄暗く感じるが、ランプの揺らめきに何処か懐かしさを覚える。



夜は川の流れの音しか聞こえない。川べりのせいか涼しく、明け方は寒いくらいだった。
お陰でぐっすりと休め、翌日の苗場山登山に向けての英気を養う事が出来た。

次訪れるのはいつ、という風に気軽に行ける所ではない。
でも、いつの日か思い出したら、また是非とも行きたくなる宿だろうから、その日が来るまでそっと胸に閉まっておこう。

(終わり)







浅草岳の宿泊、「やまかのうや」。

2018-06-27 21:00:00 | 山の宿
今回の浅草岳への山旅。
浅草岳自体は日帰り登山が充分
可能な山だが、なにせ長距離遠征の山に加えて、いくつもの登山ルートをまとめて踏破してしまおうと考えた今回の山旅。

登山口でのテント泊も考えたが、登山口の状況がよく分からないので、登山口に近いところに宿泊しよう、と選んだのは民宿「やまかのうや」。

只見という所に行くのはもちろん初めて。というより、福島県の地を踏むのは人生初という事にはたと気付く。

こちらの宿を選んだ理由はというと、登山口に近いのが第一。
そしてどぶろくを作っているというのが第二の理由。普段お酒は全然飲まないけれど、色々な民宿がある中でどぶろくを作っている宿なんて聞いた事がないから興味津々。
果たしてどんな宿なのだろうか。


約6時間のロングドライブを経てこちらの宿に到着。
静かな集落に佇む建物。



玄関をくぐるとまるで遠い親戚の家に来たかの様な親近感を覚える。



窓からの眺めは初めての景色なのに何処か記憶の片隅にあったようだけどと思える。
流れる地域放送も、水の流れの音も心地良いBGM。



部屋はシンプル。窓から入る風が気持ち良い。



「お風呂入れますよ。」と言われ、一番風呂に入らせてもらう。一人サイズのお風呂なので気兼ねなくノンビリと湯船につかれる。
窓からは裏山の景色が見える。



食事の広間。飾らない、どっしりとした造り。人様の家とは思えずすっかりと寛いでしまった。



一泊目の夕餉。山の幸の恵みを味わえる。派手さは無いものの、山菜、きのこの山の幸が美味しく、この宿を選んで良かったとしみじみ感じながら、箸を運ぶ。



二泊目の夕食。どの品ももちろん美味しいが、特にお薦めなのは鹿肉の肉ジャガ。鹿肉はクセがなく、ゴボウが入っていて、ゴボウがいい味を出している。家庭料理なのに新鮮な驚きだった。



そして、ドブロク。酒の良し悪しは分からないが、甘めで口当たりがよく、飲み終えた後余韻が残る。暑い季節にピッタリかも。



三日目の朝、行き違いからかおにぎり弁当が用意されてなかったが、昨晩お腹いっぱい食べたせいでお腹が空いてなかったし、宿の方を起こすのも忍びないのでそのまま出発すると、わざわざ届けてくれ、登山口まで送ってくれた。
客商売の対応というより、家族の応対のような気遣いにジーンときた。
こういう宿は愛着が湧き、記憶に深く残る。
故郷に帰るようにまたいつか泊まりに行くことだろう。いや、またいつかと言わず、秋ブナの色付く頃に是非再訪したい。

(終わり)