ゆったりとした下り。
単調な風景に段々と飽きてきた。
今の自分の位置はどの辺だろうか。光の向きが頼り。そして高度計の示す標高が頼みの綱。
森の奥底に沈んでいる気分になる。
いきなり視界が開ける。おそらく「両門の頭」だろう。
目指す国師ヶ岳は遠い、そして高いと感じられる。
木賊山と甲武信ヶ岳。
それぞれの山頂にいた事がもう朧気な記憶となっている。
明るい風景から一転。また森の中を彷徨うかの如く歩く。
所々風倒木が道を塞ぐ荒れた森。
森歩きに相応しい景色がありそうで中々無い。
苔むす森、北八ヶ岳がどこかで恋しい。
明るい景色に向かって行く時、少しの期待が芽生える。
ようやく「東梓」。只今13時10分。次第に時間が気にかかり始める。
木漏れ日が作り出す影を一歩ずつ踏みながら下る。
緩やかなアップダウンを繰り返しながら標高を下げて行く。
岩の割れ目に根を張る木々の逞しさに感心する。
一方で脆弱にしか根が張れないからこそ風に弱いのだと納得する。
「国師のタル」に到着。
これからは登り一辺倒。と同時に日没までに大弛峠につけるかと心配になってきた。
急坂が途切れないのでしんどい。
地表の霜柱が溶けていない。どおりで寒いはずだ。
ようやく国師ヶ岳のアタマが見えた。もう少しの頑張りだと思うと先ほどまでの不安が吹き飛ぶ。
15時45分国師ヶ岳の山頂にやっと到着。
長かった道程がようやく終わりを迎えようとしている。
山頂から見える尾根は明日の道程。
歩行時間約10時間の長かった一日がこうして終わった。
明日は明日で困難が待っているだろうが、まずは今日一日の無事を喜びたい。
(2018年11月2日)
(続く)