杉並シリーズ 今日からこの人をとりあげる
寺山修司 1935(昭和10)-1983年(昭和58) 歌人・劇作家
私は珈琲好きで 20代初めの頃はよく珈琲店に行っていた
或る日 行きつけの珈琲店に一冊の雑誌が置いてあった
モカのストレートを飲みながら捲っていると 一首の短歌に出会った
"ふるさとの訛りなくせし友といてモカ珈琲はかくまでにがし 寺山修司"
彼の名前は知っていたが 短歌を読んだのは初めて
特集記事だったのだろうか 次の一首も載っていた記憶がある
"マッチ擦るつかのま海に霧深し身捨つるほどの祖国はありや"
短歌としてはこちらの印象のほうが強烈!
マッチを擦る 海と霧 身を捨てる 祖国への懐疑・・・
繋がりの無い言葉の組み合わせが なぜこれほどの哀愁・哀感を漂わせるか?
この歌は 剽窃・盗作と騒がれた 既存の俳句を組合わせただけというのだ
例えば既存の句には次のようなものがある
"一本のマツチをすれば湖は霧"
"めつむれば祖國は蒼き海の上"
"夜の湖あゝ白い手に燐寸の火 "
しかし 同じ言葉が使われているから剽窃・盗作というのは早計だ
組合わせただけ・・・というのも論外だろう
寺山修司は つかのま・身捨つる・祖国・あり(や) を加えて別の世界を創った
・・・と青二才の私は考えて彼に関心を持つようになった
とはいえ寺山ワールドは果てしなく広い 彼にはこんな歌もある
”麻薬中毒重婚浮浪不法所持サイコロ賭博われのブルース”
他にもボクシング・競馬(馬主にもなった)など多々あるが 今日は序奏
寺山修司作詞 田中未知作曲 唄カルメン・マキ「時には母のない子のように」
を聴いてお別れする
それでは明日またお会いしましょう
[rosey]